#42
その時、教室の扉が少し開き、「その話、最後まで聞いてたよ?」とエリカが教室に入ってきた。
「「篠田さん!」」
「エリカ!」
「明日の放課後に話すって言ったのに、ウチがいない間に勝手に話が進んでるってどういうこと?」
「……ごめん……なさい……」
結衣達は彼女が入ってきたことに驚いているが、当のエリカは本人がいない間に話が進んでいることに苛立ちを感じている模様。
早紀は彼女に謝るが、まひろが「工藤さんが悪いわけじゃないよ」と庇うように声をかけた。
「まひろはここ最近、いつもそうだよ……さっきの体育の時もそうだったし……」
「確かに、あたしはいつも中立かもしれない。でも、人との関わりを大切にしたいと考えるようになった」
「それは木野さんが生きてた頃からでしょ!?」
「そうだよ。あの頃からあたしはいじめられていた木野さんがどうしても許せなかったから、荒川さん達と一緒にいた」
まひろは少し寂しそうなエリカに自分の思ったことを口にする。
彼女は言葉を切り、「エリカは最悪だよ」と一瞬、エリカから視線を逸らした。
「ウチが最悪?」
「うん。お昼の時も言ったけど、エリカは木野さんをいじめてそんなに愉しかったの?」
まひろが再度、休憩時間の時に訊いてみた質問を彼女に突きつけるが、エリカは何も答えようとしない。
次の瞬間、結衣は彼女の前に立ち、右手でエリカの左頬を平手打ちする。
おそらく彼女は整然としていられず、この行動に踏み切ったのではないかと僕は勝手に推測した。
「篠田さん、いい加減に答えなさい?」
「………………」
「まだ黙っていらっしゃる……早く答えてくださらないと、友梨奈さんを自殺に追い込んだ張本人としてバラしますわよ? 学年中……いや、学校中に!」
「結衣ちゃん!」
「「結衣!」」
「「野澤さん!」」
「もし、なんでしたら、わたくしから教育委員会に訴えてもよろしくて?」
その場にいた生徒達達は突然結衣がそのような言葉で話しているので、すごく驚いている。
「……愉しかったよ……」
エリカは彼女に脅しかけられながらようやくまひろの問いに答えた。
「えっ!? なんですって? もう1度、言ってごらんなさい?」
「だから、ウチはあの人をいじめて超ー愉しかった」
「それはそれは愉しかったでしょうね? あなたと他の何人かが中心となって友梨奈さんをクラス全員でいじめたのでしょうから。もちろん、あなたの指示で。そうでしょう?」
「……ハイ……」
彼女は結衣の問いに答える。
その答えを聞いたまひろ達の表情が徐々に凍りついていった。
「さて、次の質問。秋桜寺くんと友梨奈さんがつき合い始めた時、あなたは彼女に対して、嫉妬していた。彼女が憎かった。それは本当のことかしら?」
「……半分本当で半分、嘘……」
「曖昧な回答ですわね? どちらか決めてくださらない?」
「………………」
「黙ってますと分かりませんわ! わたくしは曖昧な回答が大嫌いですの。もう1度伺います。それは本当ですか?」
「ハイ、本当です。3年生になって木野さんと同じクラスになったらハメようと言ったのも、白鳥 まひろや荒川さんを含めたクラス全員を巻き込んで愉しんだのも……」
「まだありそうですわね?」
「まぁ……まず最初にまひろと調子に乗りやすい男子グループに話しかけた。そうしたら、彼らは喜んでやってくれた。実際にやっているうちはやられている木野さんを見ていることが愉しかった。そこからどんどんクラス全員にまで広がってエスカレートしていったんだと思う……」
エリカは彼女の問いに自分が思ったことを口にする。
これらの情報だけで友梨奈さんは納得できたのだろうか。
「よって……すべてあなたの責任でよろしいかしら?」
「ハイ」
「ならば、明日の全校集会の時に先生と全校生徒の前で謝りなさい? きちんと土下座をしていただければ、わたくしは教育委員会に訴えずに済みますので」
エリカは「分かった」と言い残し、彼女らを残し、教室から姿を消したのであった。
2017/08/13 本投稿
※ Next 2017/08/13 2時頃予約更新にて更新予定。




