#40
「これはややこしくなりそうだ」
結衣はどれが正しいのかどうか頭を悩ませながら、親子丼を食べているのだろう。
あのあと、彼女はずっと悶絶しているような表情をしているため、さらに混乱させてしまったのではないかと密かに思っている僕がいた。
「今日は……友梨奈さん達が5限目に入るまではおそらく大丈夫だと……」
僕は診察室にある時計を見る。
今日の勤務は外来が中心ではあるが、ごく稀に先ほどみたいな緊急手術が入ることが――。
一応14時までは猶予があるため、そのあとでも昼食を摘む程度の時間はある。
「ん?」
机に置いてあるタブレット端末をチラッと見た。
「もしかしたら、僕はタブレットをそのままにして友梨奈さんのところへ行っていたということか…!」
画面はずっと動画が流れていたため、音声もだだ漏れになっている。
もしかしたら僕が留守にしている間、誰かに見られた可能性があるかもしれないが、その時は仕方がない。
「…………今は周りに人がいっぱいいるから言えない!」
「なんで!?」
「篠田さんに白鳥さん?」
「「の、野澤さん」」
「周りをご覧になって? みなさま、驚いたりくすくす笑ったりしてますわよ?」
「そ、そうだね」
「そう言われると、さっきからウチらは恥ずかしいことをしてたよね。ごめん……」
彼女が親子丼を食べ終え、エリカとまひろに注意する。
彼女らも周囲の学生達に笑われていることにようやく気がついたようだ。
「もし、そのことについて話されるのでしたら、わたくしも聞かせていただこうかしら?」
「……僕も」
「……あたしも」
「……ボクもー」
「……わたしも」
「……僕も知りたい」
結衣がこう話すと他の友人達は急いで飲み込み、各々の反応を示す。
「……野澤さんや委員長まで……今日はいろいろと忙しいと思うから、明日の放課後に話すから! それでいいでしょ?」
彼女がそのように話すと、彼女らは速やかに同意した。
エリカは「じゃあ、ウチらは先に行くから」と言い残し、そそくさと食堂をあとにする。
それから数分経ったあと、彼女らは食堂から出、それぞれの5限目の授業の場所へ散った。
「これでようやく昼食に行ける……」
僕はタブレット端末を録画モードに設定し、机の中にしまい、椅子の背もたれに身を委ね、少し腰を伸ばす。
椅子から立ち上がり、診察室の電気を消し、戸締まりをし、医師や看護師が集う社員食堂へ向かった。
修羅場は一旦落ち着いたが、その日の放課後に誰もが思ってもいなかった第2の修羅場が起こるということを――――。
2017/08/12 本投稿
※ Next 2017/08/12 1時頃予約更新にて更新予定。




