#36
診察室に戻ってきた僕は机からタブレット端末を取り出し、録画をしていた午前中の授業の様子を早送りで見ていた。
「休み時間は質疑応答の時間だったのか……」
結衣の周りにはクラスメイトが集まっていたため、質疑応答は仕方ないところだと思う。
やはり、このような時期に転校生がきたということは極めて珍しく、周囲は彼女に興味を示していた。
授業は友梨奈さんで見てきた時と同様にこれまで通り、真面目に受けている。
「彼女は頑張っているではないか」
肝心の「授業はサボっちゃダメだしねー」と話していた少女はペンを持ったまま、眠りについていた時間もあったが、彼女も授業を受けている。
「さて……」
早送りで見てきた授業風景も一旦終わり、友梨奈さんとのやり取りのあとの場面に追いついた。
「はぁはぁ……」
「野澤さん?」
「どうしたの?」
「大丈夫?」
彼女は息を整えている時、クラスメイトが心配して、声をかけている。
「こ、これは間違いなく僕が原因ではないか!?」
この時、僕は友梨奈さんが素っ頓狂な返事をしてきた原因がようやく分かったような気がした。
おそらく、彼女はいきなり僕が姿を現したため、それで驚いたのかもしれない。
「友梨奈さん、申し訳ない。心臓によろしくないことをしてしまって……おや?」
教室には友梨奈さん達の姿が見当たらなくなってしまったかと思っていたが、彼女らは教室の前に集っていた。
これから、昼食を兼ねた「学校案内ツアー」を始めようとしているらしい。
「彼女らを追おうかどうしようか……」
僕が悩んでいる時に診察室の扉を叩く音がした。
その向こう側で看護師が少し慌てて「急患ですー!」と言ってくる。
「どうされました?」
「先生、今から手術に入れますか?」
「他の医師は?」
「実は……ほとんど診察や手術なので……」
「なるほど……承知しました。すぐに駆けつけます。ところで、場所は?」
「ありがとうございます! 第2手術室です! 失礼しました!」
そういう時に限って緊急手術が入ったりするのだ。
一応、仕事中なので、早急に仕事をこなさなければならないため、友梨奈さん達の「学校案内ツアー」は楽しそうだけど、今はそれどころではない。
「仕方ない。緊急手術に入ってしまうから、すぐに駆けつけなければ……」
僕はタブレット端末の電源を切り、机にしまう。
診察室の戸締まりをし、第2手術室へ向かった。
2017/08/08 本投稿
※ Next 2017/08/09 0時頃更新予定。




