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#35

「――――では、次回は2週間後はいかがでしょうか?」

「ハイ。大丈夫ですよ」

(かしこ)まりました。2週間後に」

「お世話様でした」

「お大事にー」


 午前中の診察が落ち着き、僕は回転椅子から立ち上がり、すっかり温くなってしまった保冷剤をナースステーションに戻しに行く。


「先生、保冷剤を持って行って何してたんですか?」

「診察開始前に手を叩きつけてしまったもので……」

「よくさっきまで診察することが――」

「診察時間までずっと握っていましたので、なんとかなりました」


 生憎なことにそこには看護師長しかおらず、タイミングがあまりよくなかった。

 男女1人ずつのナースステーションはやはり、どこか居づらさを感じられる。


「ぼ、僕はこれで失礼いたします」


 僕は彼女の話を途中で遮ってしまい申し訳ないと思いながら、速やかに保冷剤(それ)を片付けると、逃げるようにして診察室に戻った。



 †



 ようやく、師長から逃れられた僕は白衣のポケットから懐中時計を取り出す。

 時計の針は12時10分を指していた。

 学生ならば、そろそろ昼休みに入る頃だと思われる。


「友梨奈さんのところに行ってみるとしよう」


 今の時間になると予約患者がいないため、「瞬間移動(テレポート)」と「時間操作」を駆使し、友梨奈さんのところへ駆けつける。


「しまった! 録画モードにしたままにしていたんだった!」


 僕はやらかしてしまったと思った頃にはすでに目的地まで辿り着いていた。

 録画(それ)はまた先延ばしになってしまうが、あとで拝見させていただこう。


「友梨奈さん?」

「ハ、ハイ!」


 僕が彼女を呼ぶと素っ頓狂な返事をしてきた。

 これには僕もなぜ友梨奈さんはヘンテコな返事をしたのか分からない。


「って……ジャスパー先生じゃないですかぁ……」

「お久しぶりですね」

「言われてみれば……久しぶりかもしれないですね」


 僕は軽く頷き、「さて……」と呟く。

 その時、友梨奈さんは少し怯えているような()で僕を見ていた。


「現段階で何か分かったことはありませんか?」

「え、今のところはないですね……」

「そうですか……何か分かるといいですね?」

「……ハイ……」

「では、僕はこれで失礼いたします」


 やはり、彼女は半日で重要な情報を得られていない。

 それを得ることは難しいのだろうか? とぼんやり思いながら、「瞬間移動」で診察室に戻る。


 たとえ、友梨奈さんが重要な情報を得られたとしても僕はヒントを与えるだけしかできない。

 なぜならば、その答えを導き出すのは彼女(・・)なのだから。

2017/08/07 本投稿


※ Next 2017/08/08 0時頃更新予定。

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