#29
僕はタブレット端末を見ながら、友梨奈さんが1人になるタイミングを見計らっていたが、なかなか時は動いてくれない――。
彼女の母親は彼女に果物ナイフでうさぎカットのリンゴを剥いていた。
「――――友梨香と友梨奈はうさぎカットのリンゴが大好きだったから、久しぶりにやってみたの。もしよかったらどうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
友梨奈さんには友梨香と呼ばれた姉か妹がいたのだろうか?
名前が友梨香と友梨奈と似ているため、双子であることも推測が可能だ。
僕自身はそのような情報を得ていないが、ご両親にとっては彼女らが先立たれたことに寂しさを感じながら生活していると思われる。
突然、話が逸れてしまい、申し訳ない。
本題に戻させていただくとしよう。
彼女は母親からそのリンゴを1切れ受け取り、1口食べる。
今更ではあるが、彼女はここまでくるまでに何も食していなかったのだ。
前世に戻って1番最初に食したものが「うさぎカットのリンゴ」というのはちょっと変だと感じたが、そればかりは仕方がない。
「リンゴは消化によろしくないからよく噛んで食べてほしいところだが……」
その件はどうでもいいこと。
ぼやぼやしている間にまた話が進んでいた。
「いつの間にか看護師がいる……」
そうなのだ。
友梨奈さんは間違えてナースコールを押してしまったようで、いつの間にか彼女は看護師の指示に従いながら車椅子にちょこんと座っている。
「……もしかしたら……」
その「もしかしたら」だった。
彼女は母親と看護師に誘導され、身内が集う霊安室で自分の亡骸を見て、最期を見届けていた。
そのあと、彼女らはお手洗いに行く。
数分後には看護師の手に使用済みの尿道カテーテルを持っていた。
友梨奈さんはおそらく今の自分の姿どうなっているのかは知らない。
「さて、そろそろ彼女のところに参りましょうか……」
彼女は今はお手洗いの洗面台のところにいるため、現在の自分の姿を目の当たりになると僕は思った。
その時は友梨奈さんしかいなかったため、必然的に彼女と話をする機会ができると――。
2017/08/01 本投稿
2017/08/01 改稿
※ Next 2017/08/02 0時頃予約更新にて更新予定。




