#27
これはこれは愉しい結果になりそうだ。
僕はこの「転生手術」を地味に楽しんでいる。
まるで、人体改造をしているようで――。
†
僕は友梨奈さんが事前に書いておいた要望書の記憶を頼りに迷いなく、テキパキと手を動かしていく。
「先生……」
「す、素早いです……」
「メスさばきが……」
「すざましいです」
「さっきまでと比べて、丁寧さはそのままにハイペースになっているのは気のせいだろうか……?」
それを見た他の医師や看護師はどよめきを起こしながら、少しずつ変わっていく彼女の容姿をただ呆然と見ていた。
「さて、外見はこのくらいにしておきましょう……」
僕は血が付着した部位を消毒した布で綺麗に拭き取る。
唖然としている他の医師や看護師。
ベッド上には見知らぬ美少女が無傷の状態で手術台に横たわっており、我ながら上手くいったと自画自賛してみる。
ふむ。心臓はきちんと動いているし、脈拍の乱れもない。
それはモニタの心電図からも正常さを物語っている。
人工呼吸器を自分で止め、麻酔を止めてもらい、看護師に衣服を着せてもらう。
ようやく、友梨奈さんの転生手術を終えた。
その「手術」の様子を見ていた者達は驚きを隠せないまま、手術をあとにした。
†
ベッドに載せた彼女を診察室に誘導する。
次は「前世に戻す場所」について考えなければならない。
確か友梨奈さんの実家にきた親戚ということにするが、この少女も何かの病気に罹って手術していたところだった。
よって、麻酔から目が覚めた時には病室の方が自然だろう。
当の友梨奈さんは自ら命を絶っているので、その当時の自分の姿を客観的に見ることが可能であるし……。
「もし、前世に戻すならば病院だな……」
残念ながら、1番自然なシチュエーションはそこしか見当たらない。
最初は「自殺を謀った場所で偶然、親御さんが見つけた」というパターンも考えたが、あまりにも残酷すぎだと判断したのだ。
「では、あなたを前世に戻させていただきます。これからは木野家の親戚として、有意義な時間が過ごせることを祈ります」
ここから、僕は再びタブレット端末にての「監視」という名の「見守り」に入ることになる。
しかし、転生した彼女の性格をまだ告げていないことに気がついてしまった僕がいた。
彼女の性格は「悪役令嬢」だということを――――。
2017/03/30 本投稿
※ 来月以降は大幅改稿に伴い、次回の更新の目処が立っておりません。
一応、ゴールデンウイークあたりに更新できればと思っております。




