#21
「……ん……?」
友梨奈さんがゆっくりと瞳を覚ました。
彼女は目覚めたばかりなので、視界が少し変な感覚と今の状況が理解できないということがあったのかもしれない。
「友梨奈さん、やっとお目覚めですね?」
「……あっ……ジャスパー先生……」
「友梨奈さん?」
僕は思わず、ピンセットに摘まんだ脱脂綿を持ったまま呆然とする。
なぜならば、僕は彼女の左側に立っているのに対し、右側を向いていたからだ。
まだ意識がまだはっきりしないしていないため、どちらに僕がいたか分からなかったと思う。
しかし、右側に僕がいなかったことに気づいたのか、左側に向き直す。
「う、嘘……」
「どうされました?」
「嘘!? なんで私は生きてるんですか!?」
「僕が蘇生させました」
「えぇーっ!」
友梨奈さんははじめて僕と出会った時、異世界に転移したのかと思われたかもしれないが、きちんと戻った記憶がある。
ちなみに今回はその時と異なり、彼女はすでに死んでいるため、そのままの姿できちんと戻るという選択肢はないのだ。
「友梨奈さん、今は傷だらけなので、動かないでください。これから、手当てをしますので」
「すみません。手鏡って……こちらにはないですよね……?」
「ありますよ。もしよかったらどうぞ」
僕は友梨奈さんに手鏡を渡すと自分の顔や身体をじっと見ている。
その様子を見ていると、彼女は本当にごく普通の女子中学生だ。
「……あの……」
「ハイ?」
「変なことを言ってもいいですか?」
「どうぞ」
「ここにいるということは本当にパパやママに会えないんですよね?」
彼女は寂しそうな表情を浮かべながら上目づかいで僕に問いかける。
「ええ。その通りです。友梨奈さんは現世では自ら命を絶たれていますので……」
「……そうですか……」
僕がこう答えると、少し時間を置いて、友梨奈さんは「もう少し生きたかったなぁ……できれば、おばあちゃんになるまで生きたかったな」と呟いた。
おそらく彼女の両親も同じことを思ったと思う。
今まで一緒にいた人と突然にして会えなくなるということは事実なのだから――。
2017/03/07 本投稿




