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#20

【作者より】


今回は医療シーンです。

作者は医療従事者ではございませんので、あらかじめご了承くださいませ。

 僕が診察室に到着した時には院内で看護師達が慌ただしく何かを探している。


「先生、今までどこへ……?」

「ずっと探していたんですよ?」

「すみません」


 えっ、ぼ、僕!?

 僕は何も知らなかった。

 どうやら彼女らは僕を探していたらしい。

 眉間にしわを寄せた僕は急患がいるかどうかを訊いてみた。


「いえ……」

「ところで、そちらの方は?」

「こちらの方は急患であります。手術(オペ)室の空きは?」

「ちょっと調べてきます!」


 看護師が手術室の空き状態を調べさせている時、僕は友梨奈さんを診察室のベッドに横にさせる。


「先生! あと1時間くらい待たないと空かないみたいです」

「……仕方ない……ならば、診察室(ここ)で行いましょう。処置の準備を速やかに願います」

「「ハ、ハイ!」」


 全く空かない手術室。

 そこが不可能ならば診察室などの限られたところを最大限に活用すればいい。

 まずはいろいろと準備をしなければ――。



 †



 どこかの手術室を待っている間に看護師達の準備を終えたようだ。


「先生、準備が整いました!」

「「お願いします!」」

「よろしくお願いいたします」


 僕達は友梨奈さんの心肺や血圧が表示されるモニタを設置し、彼女に蘇生してもらいたい、その一心で「心臓マッサージ」を交代しながらやっていく。


 今回行わせていただく蘇生法は「心肺蘇生法(しんぱいそせいほう)」。

 簡単に言うと、「心臓マッサージ」や「気道確保」、「人工呼吸」が主だ。

 「心臓マッサージ」はいざという時には大変便利なので、覚えておくといいと思う。

 しかし、「気道確保」と「人工呼吸」は訓練を受け、自信がある者は可能。


 そのやり方は胸の中央に手の付け根を置き、両手を重ねるようにする。

 肘を真っ直ぐ伸ばし、継続出来る範囲で強く圧迫を繰り返すようにしなければならないので、体力はかなり消耗するので、交代できる人がいたらベストだ。

 今回は幸いにも医者と看護師の3人。

 交代は可能であり、医療器具もあるので、気道確保や人工呼吸なども容易である。


「…………1、2、3…………」


 僕は看護師にカウントしてもらいながら、心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す。

 人工呼吸は男性である僕にとっては少し抵抗があった。


 僕は「こればかりは仕事だから仕方ない」と思いながら、やっていく。


「はぁはぁ……交代、しましょう……」

「ハイ、私が代わります」


 僕は看護師に心臓マッサージと人工呼吸を交代した。



 †



 何回か交代しながらやっていき、彼女が「ん?」と軽く首を傾げている。

 僕はそれに気づき、「どうされました?」と看護師に問いかけた。


「せ、先生!」

「モニタを見てください!」


 彼女らに言われ、僕はタオルで額から流れてきた汗を拭きながら、モニタ画面を見てみる。

 その画面に表示されている心拍数の波が一定から少しずつではあるが波打ち始めていたのだ。


「よかった……心拍数が戻ってきていますね」

「先生、よかったですね!」

「ええ。2人とも、とてもお忙しい中、ご協力していただきありがとうございました」

「いえいえ」

「とんでもないですよ」


 看護師達は各々の業務に戻っていく。

 さて、第1段階を突破したので、次の段階に挑まなければ……。


「友梨奈さん、僕のところにいらしたのですね?」


 僕はふと微笑を浮かべ、友梨奈さんの耳元で囁いた。

 おそらく彼女はその時の僕の表情は見えていないのだから――。

2017/02/28 本投稿

2017/03/06 加筆

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