#17
ガタガタと音を立てながら崩れ始めていく「人間関係の崩壊」――。
それは彼女からすべてを奪っていく道標。
本来の脚本から完全に逸れた彼女の人生に終止符を打たざるをえなかった。
†
友梨奈さんのクラスの女子生徒達がトイレから出たあと、別の女子生徒達のどちらかが何かを言ったと同時に彼女はくしゃみをした。
「大丈夫? 友梨奈、そのままだと風邪引いちゃうよ?」
「そうだよ。体操着は持ってる?」
「うん」
「一応、念のために先生に相談した方がいいんじゃないの? ポケットに入ってるハンカチ、濡れてるかもしれないから、ボクのハンカチを貸してあげる」
友梨奈さんは別の友人からハンカチを受け取り、頭についた水滴を拭き取る。
やはり、その友人は心配して先生に相談することを勧めてきたが、彼女は首を横に振った。
「ありがとう。そう思ってるけど……。今日、早川先生は出張だからね……」
「別に今日じゃなくても明日とか、言えばいいじゃん?」
「そうだね。凪と早紀、ありがとう」
友梨奈さんは彼女にハンカチを返そうとしたが、「あとで返していいからね」と言われたため、お言葉に甘えて借り、そのハンカチをきれいに畳み、左ポケットにしまい、彼女らはトイレから出て行った。
その時は彼女のココロの中に一筋の光が射し込んだが、その光がなくなるまでの時間はあっという間に過ぎなかった。
†
あのあと、友梨奈さんは彼氏(?)が1人で歩いているところを見つけた。
彼は理科の教科書とノート、筆記用具を持って歩いていたため、これから理科室へ移動するところであると推測できる。
今の彼女らは決して穏やかな雰囲気ではなさそうだ。
まず、友梨奈さんの制服が濡れている件は誰でも触れてくるのは仕方がない点である。
しかし、彼女が触れようとしているのはそのことではなかった。
「あ、あのね……わ、私は聡と別れたい……」
友梨奈さんは勇気を振り絞って彼にこう告げると、男子生徒は疑問に思い、首を傾げている。
「私がこの状況なのを知ってるでしょ!? ずっと、私達がつき合ってたら、聡までいじめられちゃうかもしれないんだよ!?」
彼女が勢いに乗ってこう言うと、周囲からの冷たい視線とくすくすと笑い声が彼女らの耳に入ってきた。
この他にも彼女のクラスメイトである友人達の裏切り行為や最悪の場合も告げてくる。
「いくらなんでも、最悪すぎるだろ……」
「私からはそれだけだから。返事はメールを送って。さようなら」
彼氏であった男子生徒に冷たい態度で接してしまった友梨奈さん。
彼女は今の状況を考えたらそれしかないと判断したのだ。
友梨奈さんは彼をおいて走って教室へ戻っていく。
一方の男子生徒は状況が分からず、その場に佇んでいた。
†
彼女が家に着いたあと、携帯電話のメールを確認してみると、彼から届いていた。
その内容は一言で、『別れよう』の4文字だった――。
2017/02/11 本投稿