#12
ところが、僕の悪い予感はまだまだ先かもしれないが、最悪の場合はすぐに起きてしまうかもしれない。
自分の未来はもちろん、他人の未来はさらに分からないもの――。
僕はそう思っていたのだ。
†
そういえば、何回も同じような場面を見てきたせいか、それからの場面はまだ全然見ていなかった。
その頃の友梨奈さんには「友人」という存在があったような気がする。
彼女は周囲からの厳しい視線を向けられて怖くなり、少し俯いていた。
友梨奈さんをその場でおいて、周囲の生徒達とそそくさと各自の教室に戻ったのだろうと思っていたと思う。
「友梨奈ちゃん」
「友梨奈」
「木野さん」
彼女らは友梨奈さんの名前を呼んだ。
彼女が視線を上げると、友人が教室に戻らずに友梨奈さんのところにいたのだ。
「僕は友梨奈がカンニングしてないと信じてるよ」
「ボクも」
「あたしも」
「わたし達は友梨奈の味方だからね」
「だから、なんでもあたしたちに話してもいいんだからね?」
彼らは彼女に向かってこう話しかけてくる。
おそらく、友梨奈さんは何も告げなかったが、友人の言葉によって、彼女はとても嬉しかっただろう。
校内にチャイムが鳴り響き、彼女らはバタバタと各々の教室に戻った。
しかし、友梨奈さんは周囲からの冷たい視線を気にしながら彼女のクラスメイトとともに、そこに向かった。
†
この場面を見ていた僕はなんて素敵な友人なのだろうと感じられた。
「友梨奈さん、あなたは今、恵まれている方ですよ。何人かの友人がいること、些細なことを話せるということはいいことですから」
彼女の友人の人数は少なくとも、本音を話したりすることは悪くはない。
しかし、彼女らは友梨奈さんに対して気を遣っているのかどうかは僕には分からない。
心理的なものに関してはなんとも言えないものだから――。
2017/01/17 本投稿