私、飼われました
「刑部様にいっぱい可愛がられるんじゃぞ」
わしゃわしゃと無骨な手で和尚さんは私を撫でるとかごにすっぽりと入れた。
かごが丁度いい大きさで妙に安心する。……じゃなくて、どうしてこうなった。
お礼のつもりで私がすりすりと刑部様に身を寄せたのを和尚さんは私がなついたと思ったらしい。
――和尚さん。すごい顔をしてたな。娘を嫁に出す勢いってあんな感じなのかしら。
なんて考えていたら目的地に着いたみたい。
……お屋敷じゃなくてお城よね。刑部様ってお城の人なのかしら?
「殿、そのかごは……?」
殿?!って刑部様、お殿様なの?
呆気にとられていると男の人が近寄ってきた。
「五助、良いところに……これを小石に渡してくれぬか?」
五助と呼ばれた男にかごごと私を渡す。
「殿、たまにはご自分でお渡しください。お方様が寂しがってます」
男二人が私の押し付け合いをしている。
「しかしだな……どんな顔で会えばわからん」
「どんな顔でもお方様が喜びますから、殿が行くべきです」
そう言った五助さんの顔はとってもいい笑顔でした。
――とりあえず、寝床とご飯が確保できたみたいです。
補足説明
主人公の毛色や長さは皆様のご想像にお任せします。