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二十五話 スズカ視点

 話せるようになった私が最初に言ったのは「ニニラ、スターシア、ありがとう」だった。

 返事はなかった、まだ誰も話せないんだろう。喉が痛くて、その後は話そうという意欲は出なかった。

 自然回復を待つしかない……私たちは三時間痺れ続け、手の痺れが消えたところで魔法薬ポーションを飲み、回復を速めた。

 けれどエミリオだけは三時間経っても意識が戻らず、薬は限界まで飲ませ、魔法もかけ続けたけど全くと言っていいほど効果がなかった。薬も少ししか効果がなく、普段のエミリオだったらすぐに治ってるのに……これは。


「やっぱり、アンヌのかけた死の魔法のせいかな?」

「そうとしか考えられないわね。女神様の加護が殆ど無効化されてるんじゃないかしら?」

「……自業自得だよ」


 呟いたのはニニラだった。


「私たちが考えないといけないのは、エミリオを責めることじゃないよ。もう今日は放置するしかないけど……死の魔法を解かないと」

「考えつく限りの回復や解呪を試したけど、まるで効いてない。なんというか、手応えがないのよね……燃やさないと倒せない魔物を、無駄に切りつけてるみたいな感じで。アルピーの毒ともまた違うのよ」

「やっぱり、魔界の魔法だからなのかな?」

「そうでしょうね、だからメイドの魔法が私の抵抗レジストをすり抜けた……」


 攻撃や総合力ではかなわないけれど、スターシアの防御、補助系魔法のクラスはアンヌにも匹敵していた。麻痺を回復させた時にもしっかり効果があったから、それは間違いない。


「みんな……」

「エミリオっ」


 呼んで、何も言えなくなる。

 スターシアもニニラも黙っている……エミリオがしたことを思い出してるんだ。

 アンヌの信頼を求める行動を無視して、髪をまとめ上げるネットを贈った……無神経にもほどがある。エミリオはこんな奴じゃなかった……。


「エム。言い訳だけはしないでね? じゃなきゃ……本当に嫌いになっちゃうから」


 ニニラの言ったことは、私の気持ちでもある。アンヌが作ってくれた謝罪の機会を台無しにした……私たち三人とも、アンヌが怒ったのは当然だと考えている……何も言わなくても通じ合っていた。


「スズカ、スターシア、ニニラ……命を救ってくれて、ありがとうございました……」


 エミリオは力なく泣いていた。あんたが、あんたが泣いたって赦されない……! なのに、まだ嫌いになれない自分がいて、愕然とする。

 どうして?! アンヌ――あんなの、アンヌじゃないよ。絶対におかしい。きっと……考えなきゃいけないことがたくさんある。

 こんなことになってしまった原因を突き止めなきゃ――。私は縋る思いで他に原因を求めようとした。

 このままで、二度と和解できない……なんて、絶対に嫌だよ――。やっぱり、あの告白に答えるべきじゃなかったんだ。

 ……様々な考えが混ざっては出てこようとして、私の胸の中は落ち着いていないんだ、と気づく。


「エミリオ……私、もうあんたの恋人じゃないから。そんな風に扱わないでね? 理由、言わなくてもわかるよね?」


 告白を受けてから、一度もそんな風に扱われたことはことはなかった。でも……アンヌが出て行ってしまったのは、どう言い繕っても私のせいでもあって……無理だ、と思った。私の気持ちはエミリオと結ばれてる状態に納得出来なかった。


「ああ……」


 虚ろな瞳で天井を見ていて、眦からは涙が零れて――床に伝っていく。体にまだ麻痺が残ってるんだろう……エミリオを哀れんでいる私が居た。そんな資格はないのに……ほんと、最低だ。

 沈黙の時が過ぎた。スターシアの深いため息が、それを破る。


「よし、ニニラ。ここはどこなの?」

「あ、私の故郷近くの避難小屋だよ。具体的に言うと~フォレスティアンのど真ん中だよっ」

「えっ?! ど、どうやってそんな距離移動したの? そうだ。あれって、何がどうなって脱出できたの?」


 フォレスティアンは森の民が守り続ける大森林地帯の国。そのど真ん中となれば、移動手段が徒歩で対策もなしで森を抜けるのに……下手したら一ヶ月くらいかかるかもしれない。

 国境線を二つ跨いでる、っていうか転移できるマジックアイテムなんて聞いたことないよ?


「簡単に言うなら、脱出アイテムを使っただけよ。経緯をちょっと解説しようかしら。招待状に捺されてた魔法印のことがあったから、なるべく魔法じゃない方法で命綱を用意して置きたい、とニニラに相談したの。そしたらね、脱出用のアイテムがあるけど、結構な魔力を込めないと発動しないって言われて……行き先も選べないし、使い勝手が悪いらしいんだけど、それでもあるだけ良いわ、と思って一応私が預かって置いたって訳」

脱出エスケープはお姉ちゃんたちが旅の始めに持たせてくれたの。一人用とパーティ用と一個ずつ。里帰り用のというか、まあ……なんだけど、一回も帰ってないからそのまんまだったんだよ」

「そっか……私からは見えなかったんだけど、ニニラがスターシアに何かしたの? どうやって麻痺を解いたの?」


 その後にスターシアが脱出アイテムを使ったんだよね。二人の連携プレーがなければ、私はエミリオとアンヌの二人を失っていた……。


「あれは、スターシアに最初の麻痺を解除してもらった時に構えてた魔力無効化フィールドって言うの。時間制限がめっちゃ短いんだけど、敵はいっぱいいるし、スターシアを封じられたら逃げられなくなるから、これも隠し球だね。……筋肉ぶち切れるの痛かった~。補助魔法がなかったら、意思だけでなんとかなる麻痺具合じゃなかったね!」


 うんうんと頷くニニラ。そうだよね、私も自分でよく叫べたと思う。アンヌがエミリオを殺してしまうだなんて、そんなの現実になって欲しくなかったから……。


「スズカのおかげでもあるわね。もう少し早くアンヌが勇者様を追い詰めてたら……間に合わなかったはずよ」


 魔法薬ポーションのおかげで喉はすっかり完治している。事態も把握できたし……、これからのことを考えないと。


「みんなのおかげってことだね。じゃあニニラ、転移ゲートのある場所まではこの小屋からどのくらい?」

「いつも通りのペースなら三日かな~? 森には色々仕掛けてあるから、もうちょっとかかるかも」

「結構遠いのね。この小屋にはどんなものが置いてあるの?」

「あ、ここは遭難者用だから置いてある物なんでも使っていいんだよ。とりあえず、何があるか確認しよっか!」


 食料が四人なら切りつめて五日分、水分が持ち歩ける量で四日分……私が飲み水は出せるから、持ち物は少なくて済む。そもそも私たちも、日持ちする食料はちゃんと一人ずつ持ってるし。火を起こせるのやロープがあるのが嬉しいよね。


「転移ゲートまでは問題なさそうだし、エミリオが歩けるようになったら出発でいいかな?」

「うーん、大丈夫だとは思うんだけど、この森ってところどころ魔法が使えない場所があるんだよね……初心を思い出して、めちゃくちゃがっちり準備した方がいいよ。毒蛇も、変な植物も幻獣もいるから」

「いつもなんとかして来たニニラがそんなに言うなんて……スズカ、水も持って行きましょう。重くなっても構わないわ」


 ニニラにそう脅されると、私も不安になるな。もう少し見直して、出発前にも確認しないと。

 エミリオは何も言わなかった。眠るように目を閉じて、時折涙が滲んでいたから寝てはいないみたいで……。何を考えているんだろう?


「ゲートまで行けたら、聖女様に会いに行こうよ。呪いを解いてもらわないといけないし」

「そうね。死なれるのは流石に……嫌だし」

「やだな……なんでこうなっちゃったんだろ? ちょっと前まで、あんなに楽しかったのになぁ……」


 静まり返ってしまった。ニニラはどうしても思うところがあるみたいで、いつもは空気を明るく変えてくれるのに、今は暗い方を見ていた。

 本当に……どうしてこうなっちゃったんだろ……アンヌ――。


勇者一行 は廃城に招かれた。

勇者エミリオ の【謝罪】!

魔法使いアンヌ は激怒した! 謝罪は失敗に終わった…。

アンヌ の好感度に100ダメージ! アンヌ の【復讐】!

僧侶スターシア は【脱出】を使った! 復讐は失敗に終わった…。

魔法剣士スズカ の好感度に141ダメージ!

弓使いニニラ の好感度に120ダメージ!

スターシア の好感度に80ダメージ!

エミリオ は[特定条件]を満たした…。スズカ と別れた…。


魔王ヴァーミナス の【抱擁】【なでなで】【キス】三連コンボ!

魔法使いアンヌ の【ファザコン】が発動! 魔王の暴走を封じた!

アンヌ の好感度に+50! ヴァーミナス は[父親を超える]を目標にした。


アンヌ→ヴァーミナス

関係:婚約者 好感度:+100 状態:好き 男性を意識している


アンヌ→エミリオ

関係:復讐の標的 好感度:-200 状態:憎悪 苦痛を望んでいる


スズカ→エミリオ

関係:恋人→仲間 好感度:+50 状態:好き 全員の関係の修復を望んでいる


ニニラ→エミリオ

関係:仲間 好感度:-50 状態:軽蔑 不信感


スターシア→エミリオ

関係:仲間 好感度:+10 状態:軽蔑 距離を置きたがっている


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