1話
産まれた時から、期待されていた。
周りの子よりも魔力が強くて、魔法を使うようになるのが早かったとか。魔法学校に入学する頃には、もう一通りの呪文は唱えずとも扱えた。指を一振りすれば、なんでもできた。着替えも掃除も料理や洗濯だって。身の回りのことはなんでも。だから、仕方ないじゃない。引きこもりになりたいと思ったって。
魔法学校は七年制。七年のうちに幾つもの実技と筆記のテストがあって、六年生から本格的に就職活動が始まる。ある者は病院勤めになるために、薬学に力を入れて勉強をしていた。またある者は、研究者になるために有名な教授の助手になりたいと、教授の元へ通い、自己アピールをし続けた。変わった者は探検家になりたいと、護身に使える魔法やら日常生活に必要な魔法の応用の仕方、そういった専門知識やらの勉強に力を入れていた。
その中で、やっぱり私はずっと期待され続けていた。
「あの子は立派な魔法使いになるよ。」
「魔法の才能がほかの子よりも上だものね。」
「あんなに立派な成績を残し続けるなんて、誰よりも秀でてるよね。」
「あの子は天才だから。」
両親さえも、ずっと期待していた。息の詰まる家や学校。どこに行っても尊敬や妬むような視線ばかり。何も知らないくせに。天才?バカにしないでよ、寝る時間を削って削って削って勉強してるのよ。そりゃあちょっとは才能あるかもしれないけど、誰とも遊ばずに、ハメを外さずに、ずっと努力してるのよ。本も沢山呼んでるのよ。何もわかってないのね。友達もいないのに、立派ですって?喜ぶと思ってるの?
「期待してるからね。」
「君は我が校の誇りだ!」
知ったような口を聞かないで欲しいわ。期待?誇り?そんなもの私は知らない。私の夢は、どこか遠くへ行ってひっそりと暮らすこと。ああ、あと少し頑張ったら卒業して、遠くに行けるんだわ…!
「この国から引っ越す?馬鹿を言っちゃあいけないよ。君はこの国で一番の魔法使いだからね、この国から離れることは許されないよ。」
その、一言で目の前が暗くなった。誰が言ったかは、覚えていないし、もう確かめる術もない。ただ、引き金になったのは覚えている。
その時はあまりの酷さに、激情しかわかなかった。私が何の為に、色々我慢してきたと思ってるのかしら。もしかして、私がなんでも言う通りにしかしないと思っていたのかしら。
激しい憎悪は黒い魔力を生成し、溢れ返った分だけ、爆発した。何を叫んでたのかは聞こえなかった。わかったのは、私が、ひとつの国を跡形もなく消したこと。漸く正気になったのは、両親の首を魔法で絞めあげた時だった。その両親の瞳に映る私は、まるで…いいえ、化け物そのものだった。
だから、死にかけの両親を放置して、そのまま逃げた。
長い時間飛び、着いたのは無人島。私は涙を流した。赤ん坊の頃以外、殆ど流さなかったそれは、地面に、落ちるや否や光を放ち始めた。そして、ひとつの城を作り上げた。私は迷わずその城の中に入った。もう、誰とも会いたくない。
異種間恋愛です、精神的に女攻めです。R18要素は絶対に入れませんが、少し下ネタなど入るかもしれません。あまり得意でない方は閲覧しないことをオススメします。ですが、これから拙いながらも頑張るので、よろしくお願いします。