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モンキーパンチ

作者: 大阪BEN

お前のパンチは腰が入ってない

まるで、お猿がじゃれてるみたいだぜ

かかってこい、かかってこい

その、モンキーパンチで 俺をぶちのめしてみろ


殴られ屋のおじさんから罵声を浴びながら

僕は勝負を挑んだ              

完敗だ、 手も足もでないまま

1分の時間が過ぎてしまった


あんちゃん、お前のパンチは へなちょこで

てんで話にならないけど 気迫は感じたぜ

何か、訳ありかい? よければ、話に乗るぜ


僕は、殴られ屋のおじさんに

洗いざらい話してみた

学校で虐めにあってる事

父の浮気が発覚し 家庭内がぎくしゃくしてる事

色んなストレスを発散する為 勝負に挑んだ事、

話終わるやいなや、 今日は殴られ屋を店じまいして

今からトレーニングしてやる

サンドバック代わりに おっちゃんの顔を打ってみろと、

訳の分からない事を言い出した


何故か、その日から 元ボクサーである 殴られ屋のおっちゃんとの

1対1のトレーニングが始まった

おっちゃんの顔を サンドバック代わりに

打っても打っても 僕の猿パンチじゃ微動だにしない

脇をこう、もっと締めて 絞り込むように打ってみろ

おっちゃんのアドバイスにしたがい

ひたすらおっちゃんの顔面を 打つべし、打つべし、打つべし


夏休みの間中 おっちゃんとのトレーニングが続いた

繁華街の中なので 人目も気になるし

中には、僕とおっちゃんに 罵声を浴びせる奴らもいたけど

気にしない事にした。

おっちゃんをもし倒す事が出来たら

何か変化がおきるかも

強くなって 必ず、いじめっ子をぶちのめしてやる


夏休みも終わりに差し掛かろうとする頃

今日で殴られ屋も終わり

明日には田舎に帰ると告げられた

おっちゃんの強靭だった肉体も

殴られ続ける事で ボロボロになり

殴られる事で貯金したお金で 故郷で療養するという


最後の試合だ。 1分で俺の体に触れる事が出来たらお前の勝ちだ

僕は、渾身の力を振り絞って おっちゃんに挑みかかった

ジャブもフックも おっちゃんの弱々しいステップに交わされる

残り時間がわずかな所で 奇跡が起きた

僕の猿パンチが 綺麗におっちゃんの顔面にヒットした


おっちゃんは もう思い残す事はない

お前は十分成長した

パンチも猿からゴリラに進化したぜ

小さく呟きながら 僕の前から去っていった


僕は変わる事が出来たのかな?

夏休みが終わったらいじめっ子に 勝負を挑んでみようと思う

喧嘩じゃなくボクシングで

真剣勝負をした後は

何か分かり合える気がする

最近、両親も仲直りして とりあえずは僕の悩み事はクリアした


殴られ屋のおっちゃんは

夏の日の幻というか

夏の日のボクシングの神様だったのかもしれない。


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