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無人島

作者: あんたのわたし

 無人島。


 そこには、『ラビリンス』、だれも抜け出ることの出来ないといわれる巨大な迷路が存在していた。そして、『ラビリンス』の向こうには、シャングリラつまり、桃源郷の異世界が広がっているという話である。


 その島を訪れるものは、必ずしも迷路に引きつけられ、迷路に引き込まれ、迷路の虜になり、いまだにこれを抜け出したものは、ひとりとして存在しない。


 この迷路を恐れるが故に、だれも、その島には近づこうとはしなかった。この迷路のために、この島は、無人島でありつづけた。


 いや、ひとりの例外を除いては……


 *       *      


 <早智子は思う>


 私は、迷路話を持ち出されてなにか特別な人間のようにいわれるのは、ほんとうに迷惑!!


 ひとは、私が、なにかの魔女のように言うわ。


 でも、そんなんじゃないって、初めからわかっていること。私って、普通の人間よ。


 たしかに、誰もそこから抜け出たものはいないといわれていた迷路、『ラビリンス』を私は抜け出した。



 でも、私は、夢中で、抜け出そうとして、道を選んでいっただけ。なにか確信があったわけではない。そしたら、偶然で抜け出せたのだ。


『ラビリンス』を抜け出した私は、特別な人間にみられた。それが、私にはいやだった。私は、自分が特別な能力を持ってはいないのだとなんとか証明をして普通の人間の生活に戻りたかった。それを証明するために、何枚か宝くじを買った。そして、株をやってみた。失敗したら、わたしの魔女としての化けの皮がはがれる。私は、それを期待した。残念なことに、宝くじは大当たりで、株ではガッポリ儲かってしまった。国際的にみても有数の資産家になってしまった。


 私の超能力は、ますます有名になった。


 私は、意地になって私がやってきた『すごいこと』を『偶然』として否定したかった。私は、災害を予言した。そしたら、それが当たってしまった。多くの人間の命が私の予言のために救われ、私は、大いに感謝された。


 私は、巨大な敷地の家を手に入れ、そこに引きこもることにした。もう、何をやっても無駄に思えたからだ。



 それでも、予言や占いをやってくれるように、たくさんの依頼が舞い込んできた。それらには、巨額な報酬がついていたが、私は、すべてを断った。そして、ただただ、引きこもった。


 私は、世間様が忘れてくれるに違いない。私はそれに期待をかけていた。


 しかし、1年たっても、2年たっても私のことを忘れてくれる様子はなかった。私の家のまわりには、たくさんの観光客がやってきた。そして、家の中をのぞき込んでは、帰って行った。その観光客の数は、時間とともに減ると思っていたが、減るどころか、ますます増えていったのだ。うちの家をのぞき込んだ観光客の多くの人の病気が治ったとかいう噂が広まっているようでもあった。この家は、まわりの一体は、国際的な観光名所に変貌したという話も聞く。


 しかし、そんなことは私の知ったことではない! 私は、とにかくほとぼりが冷めるまで、ここのうちに引きこもっていることをつづけよう。


 しかし、そんな中、ある重大な決断を下すべき時が、間近に迫っていることを私は感じている。



 *       *      


 <早智子は思う>


 全体的に言えばバカっぽいのに、ときどきとんでもない鋭いツッコミをしてくる奴っているよね。


 それがあいつ! それが、私の母親である。


 私に訪れていた運命の変化は、私の母親に及んでいた。それまでは、不幸とはいえないものの、彼女の人生も私の人生も金銭的に恵まれたものではなかった。しかし、私が、無人島から戻ってからは、彼女が、欲しいと思っていたもののほとんどを買い揃えることができた。もちろん、私のお金で!


 私の母は、それまで夢見ていたという『きままな生活』を送り始めた。そして、私の監督係の役を放棄してしまった。つまり、自分の『きままな生活』を守るために、そのときを境に、気の短い私を怒らせるようなことを避け、母親は、愚か者というか、バカを演じることを心に決めたらしい。


 娘に起こったなにか重大な変化があったにしても、私の行動が彼女にとって、不可解で、不愉快なものに思えても、彼女は、愚か者になり、ただただ『見ざる、聞かざる』を押し通していた。


 私はいつしかそんな母を軽くみていたのかもしれない。母親から思わぬ反撃をくらい痛い目を見ることになってそれに気づいた。


 実際には、彼女は見ていたのだし、聞いてもいたのだ。



 母親が、なにげにつぶやいた。


「新聞、見た?」


 ささやかな母親のコトバに私の心は、かき乱された。母親が、話題に取り上げようとしていた記事が、どれだかはっきりと分かった。


「あれは、本当の話に思えないね。人類が、長い間、ドラキュラ族と戦っていただなんて……今朝、新聞見て初めて知ったわ。とんでもない重要な情報が、われわれ善良な市民から隠されていたんだね」


 思った通りだ。母親は、最悪の話題を取り上げた。私は、聞こえぬふりをした。


「……」


「ドラキュラ族といえば、この頃、あいつから連絡がなかったかい? たしか、小包が……きていたような」


「……」


「返事がないね。ということは、図星の大当たりということだね。まあいいや、ところで、叩いても、潰しても、絶対死なないものって知っている?」


 母親は私に聞いた。これは、一種の当てこすりか、謎かけかと、私は思った。


「うーん。アレかなぁ?」と、私はとぼけてみた。


「そうよ! それ!ゴキブリってほんと怖いし、憎たらしいわね!」


「えっ?」


「あんたは、違う答えを期待していたね。たとえば、ドラキュラ男爵とかを……」


 私が、予想外の母親の答えに戸惑っているのをみると、母親は言った。


「早智子、もちろん、私は、ふざけているだけさ。でも、私がいいたいのも、ドラキュラさんの話だよ。あんた、ドラキュラ族に肩入れしたあの男のことをまだ未練に思っているんじゃないだろうね。あいつのこと、いまだに、ダンナ呼ばわりしているそうだね」


「実は、人類のため、ドラキュラと戦っていたのよ、彼!」


 早智子は、少しばかり、母に反撃したくなった。



「何言っているんだい! あの男は、ドラキュラ族の研究を続けているうちに、ドラキュラ族の娘とできてしまい、駆け落ちしてしまった! 早智子、妻のおまえはそれを忘れてしまったのかい?」


 母は、やめなかった。


「あの男から、小包が届いたことは分かっているんだよ。でも、母さんは、『見ざる、聞かざる』になることに決めたから、これ以上のことは聞かないけどね。ただ、……。私が言いたいのは、早智子、お前を長い間ほっぼらかしておいて、あの男はいまさら、お前に対してものを頼める義理ではないということなんだよ。それは、お前も子供じゃないんだからじゅうじゅうわかっているのだろうどね」


「……」


 私が何とも返事しなかったことが、母親をさらに熱くさせたようだった。


「お前、お前は、あの男に対してもどれだけ甘くすれば気が済むんだい?世間の皆さんは、お前のことをなんといってバカにしているのか、お前の耳には聞こえてこないとは言わせないよ」


「もちろん、知っているわ。私を捨てて、ドラキュラ族の女の元に走ったダンナのこと」


「そんな不実なダンナだというのに、ダンナがいるという噂の無人島にまで追いかけていったよね。『ラビリンス』にまで踏み込み、異世界のシャングリラの入り口まで行き、そして、追い返されて帰ってきた愚か者……ダンナのいそうなところに向かって、何度も呼びかけてみたこと。帰りに、三度ばかり振りかえって、ダンナの名前を呼んみたお前。それで、ダンナから何の返事もなかっtんだから、お前は棄てられたも同然だよ。それを忘れてはいけないよ」


「……」


 私は、返事しなかった。すると、母はダメを押してきた。


「奇跡が起きなきゃ、お前は、あの無人島の『ラビリンス』で死んでいたに違いないのさ」


 母親は、言いたいことをいってしまうと、いつもの『きままな生活』に戻っていった。



 *       *      


 早智子になにかが迫りつつある。それは彼女の数日の心理を見れば明らかなことであった。


 彼女は、庭いじりをしているときに、誰かに観察されているような、見張られているような気持ちになった。


 彼女は、お茶の時間、なにか、お茶の味がいつものとは違って感じられた。


 そして、彼女がいる家さえもが、いつもの住心地のよい家とは違ったよそよそしさが感じられた。


 彼女の動きを追う少年のまなざしがある。それが、不安に揺れているのが彼女には感じ取れた。その少年は、彼女が面倒を見ることになった恵まれない子供たちの一人であった。



「ついにくるべき時が、やってきたのかもしれないわ」


 彼女は、母親に電話して、そう言った。


「そんなバカなこと……お前が昔のくだらないことをいつまでも覚えているから、小さなことでいつまでもビクビクしなければならないのだよ」


 彼女は覚悟を決めた。


 彼女は、深夜、不意に起き出すと行動に打って出た。手には小さな鍵を握りしめていた。


 その鍵を使って、部屋に入ってみる決心をついに固めたのだ。


「そんな時間じゃないのに! 何が私を動かしているの?」


 彼女の心にはいぶかしい気持ちがわき起こる。


 母が話してた小包というのは、実は今朝、郵便受けに届けられていた。


 ダンナからの小包であった。その中に、荷物と一緒に手紙が添えられていた。


 手紙には、ドラキュラ族の娘と偽りの結婚をして、ドラキュラ族と無人島の『ラビリンス』の先の異世界、シャングリラで暮らしているダンナで早智子への頼み事が書かれていた。小包に入っていた手紙も中身の荷物もおびただしい量の血糊で汚れていた。荷物には、ダンナの部屋の金庫の鍵が入っており、ダンナは、金庫に保管してある薬品を持って、無人島の『ラビリンス』に届けて欲しいというまったく、虫のいい内容の手紙であった。ダンナは、太古の時代から戦われてきた人類とドラキュラ族の戦いに、勝利する方法を見つけたというのである。このおびただしい血は、試しに殺したドラキュラのものであるという。そして、早智子への詫びが書かれていた。ドラキュラ族の娘と駆け落ちしたのもこの方法を見つけるための手段にすぎなかったことが述べられ、私への愛は今も変わらないと誓っていた。


 しかし、早智子は、ダンナの言うことを聞くわけにはいかなかった。というのも、ダンナも私のことを自由に『ラビリンス』を行き来できる超能力者と勘違いしているが、私は、単なる普通の人間で、『ラビリンス』に入ったらもう二度と戻ってはこれないことは、はっきりしている。


 手紙には、早智子が、本当に選ばれた人間であるならば、ダンナとの連絡方法は自ずと見つかるはずだと書かれていた。


――ダンナに言われたことは、終わらせておこう。そして、ダンナと連絡が取れたら、私がまた『ラビリンス』を訪れることについてはきっぱりと断ることにしよう。私は、人類の救世主である特殊な人間ではなく、普通の人間であることもきちんと一度説明しておかなくちゃ。



 早智子は、夫の部屋の前に立ち、鍵を開け、中に入ろうとしていた。



 *       *      



 ちょうどその時に、台所で物音が聞こえた。闇を通して、早智子は、なにかの生き物を見た。



 台所にいたのは、犬ともネコとも見分けがつかない生き物だった。

 暗がりなので、実は、猿だったとしても不思議ではない。


 早智子は、真っ暗な台所の明かりをつけると、マントを着て、大の字になって横になっている男を発見した。


「なにかがここにいませんでしたか」と、マントの男に、早智子は尋ねてみた。


 早智子は、そこで、予想していた化け物とは違って普通の人間に出会えて安心していた。


「一種の魔獣が、たしかに、窓ガラスを割って、なにかがすごい勢いで外に飛び出していきましたね。もうここには、いないから一安心ですよ」と、マントの男は言った。


「それは、一安心です。ご親切にありがとうございました」そういうと、早智子は、台所の電気を消して、立ち去ろうとした。


「ちょっと、ちょっと待ってください。あなたは、私の正体が誰だか知ろうとはしないのですか。私に不安を感じないのですか」


 早智子は、マントの男をみた。


 男は、マント姿であった。真っ黒なマント。そして、それは、なめらかな生地。手触りがよさそうに見えた。合繊ではない。いくらくらいかしら?それは、とても高そうに見えた。表地も、裏地も普通では見かけないようななにやら、老舗の高級品に見えた。


 マントの下には、正装の上着と、ズボンを着ていた。


 金髪の髪を、大量のポマードで、セットしていた。


 男の、唇の深紅の液体と風変わりのポマードの匂いで、彼女は、のぼせるような気持ちになった。


 男は、懐から、名刺を取り出した。


 名刺には、居酒屋『無人島』主人と書かれていた。



「私の名前は、カーマイケルといいます。この無人島という名前の居酒屋を新宿でやっています」


「……」


「店には、水晶をのぞき込んで、未来を言い当てる職業の老人が商売をしています」


――この人って本当にお金持ちかしら? 持ち物や、仕草は、とても変わっているけど、持ち物は上等のものばかりで、どれにも凝った細工が施されている。


「はじめにはっきり言っておきますが、私はあなたが思っている人間ではありませんよ」


 義歯の犬歯を外しながら、男は、説明した。早智子は、了解した。


「そうですね。あんたはドラキュラ族になりすまして、ドラキュラ族の情報を集めていらっしゃるのですね」


「そうです。まさに、その考え、あなたが思っていたとおりです。人類がドラキュラ族に勝利する時がやってきたのです。それには、あなたの力が不可欠です。私たちの活動の真意をあなたは理解していらっしゃる。私は、一安心です」


「でも……」彼女は、はっきり言うべきか、この期に及んでもはっきりできないところがあった。また、質問してみたいこともあった。


「でも?」


 マントの男は、不審な顔をして聞き返してきた。


 早智子は、前回客船『白樺』号に乗って無謀にも無人島の『ラビリンス』を訪問したときのことが長く頭にあった。あの時には、『白樺』号の緊急用のボートを盗んで、遠くに見えてきた無人島へこぎ出したのだ。いまでも、無人島には、定期便など通ってはいないのだ。


「あなたが、ダンナの言う連絡係だと言うことは分かりました。あなたのお店の水晶を使って、あなたはダンナと連絡を取っているのですね。あの荷物のあの島を通り過ぎる渡り鳥が客船『白樺』まで運んできたのでしょう。ところで、あの一枚の客船『白樺』号の切符についてあなたはどうしようとお考えなのですか?」


 ダンナも無人島にたどり着くために、客船『白樺』号をシージャックした。そして、客船『白樺』号の遭難騒ぎを引き起こした。こんどは、無人島にたどり着くために、シージャックか、ボート泥棒か、あるいは他の方法使うのか興味があった。もちろん早智子は、行く気などさらさらなかったのだが、細かいところが名に気にかかるたちなので、説明を求めることにした。


「もちろん、あの客船『白樺』号の切符だけでは例の無人島に行くことはできませんよ。それは、私たちにもよーく理解できている。ということで、無人島の近くの切符の目的地から、無人島にたどり着けるようにチャーター船を一隻用意しておいます。お金をかけてるのです。そのほかの点でも、すべて万端整っています。ということで、手間がかかるようなことは、一切存在しないのです」


 早智子は準備が整っていることは理解できた。しかし、彼女は、その計画に乗る気は全くなかった。彼女は、思った。今が、自分の態度をはっきりさせるための最高のタイミングだと!! というか……


――このマントの男のペースにのせられてはいけない!


「いや、みんな一生懸命なのは、わかります。でも、なんか私にはもう無理なような気がするのです」


 早智子は、反論する隙を与えないように話を続けた。


「ダンナが、ドラキュラ族になりきって、ドラキュラ族の懐深く入り込んで、スパイとして、たくさんの人間が、人類の未来のために頑張っているのはよくわかります。私は、だからといって『ラビリンス』に行くわけにはいかないのです。それは、どうしても無理なんです」


 彼女がそう言うと、苦々しい沈黙が始まった。彼女の決意は固く、意見を変える気はさらさらなかった。


 そのドラキュラ風のマントのオヤジが沈黙を破って、寂しげに言った。


「分かった。俺の負けじゃ。あんたには、無理には頼めんよ。 俺が行く。これは、無人島なんて名前の居酒屋やらしてもらっているのも何かのご縁だろう。いつだったかあの島から、あんたが戻ってきたニュースを見て店の名前を無人島に変えたんだよ。いざという時、あんたに代わって、俺が任務を果たせるように、こうやって練習してきたんだ。あんたの代わりは、俺で十分だよ。俺が『ラビリンス』の中でくたばっても、人類を救うことが出来れば、俺は十分満足だ」


 そう言ってドラキュラ風の衣装のオヤジが、取り出したのは、メモ帳。あみだくじがたくさん書かれたメモ帳。正しい分岐を選ぶ能力を身につけようと訓練していたようだ。実際、それを使って、『ラビリンス』、つまり、迷路でも、正しい道を選べるよう精神修養を日頃から欠かしていないことを自慢した。早智子は、使い古したあみだくじのメモ帳をチェックした。しかし、あみだくじの戦果は、当たりやハズレが中途半端に入り混じっていて、彼が迷路適性がないのを如実に示していた。


「そんなんじゃ、絶対に無理!」と、早智子は、あみだくじがいっぱいかかれたメモ帳をドラキュラ風の衣装のオヤジに突っ返して、反対した。


 すると、いたいけな少年が彼女の前に飛び出してきた。その少年が、その迷路にチャレンジするというのだ。少年は、彼女が里子として育てている少年であった。そのこには、確かに、何か不思議な力が備わっていた。それは、彼女が一緒に暮らしていてよくわかることである。彼の天気予報は、ほぼ完璧だし、今日誰々さんがやってくるよと言うと、絶対にその人物が訪問してきた。ひょっとしたら、この少年には、できるかもしれない。しかし、この子だけには、それをさせてはならないのだ。実は、いろんな複雑な事情を説明する必要があるのだが、それをやると、話が、複雑になってしまうので、読者諸氏の居眠り防止の観点から、結論を先に言うと、実は、この子は、彼女の子であったのだ。父親は、世界の果ての山奥の小さな国の王子様。ダンナに出会う前、この王子様に見初められ、山奥のむらでの第三夫人としての生活が始まったのだ。ある晩のこと、宮殿の近くの家々から、火の手が上がり、それが革命だとわかった。王子は処刑された。そして、生まれたばかりの私の子どもとも、離ればなれになった。彼女は、仕方なくこの国にひとりで帰ってきた。彼女が、無人島から帰ってきて、経済的には恵まれた生活をおくれるようになったが、ダンナに見放され、心は満たされていなかった。彼女は、ボランティアとして孤児院のお手伝いをする事を思い立った。そこで、この子と再会した。しかし、再婚して失踪中とはいえ、新しいダンナのいる身の上。そして、世間からはやたらと注目を浴びている身の上。親として名乗る勇気はなかった。


「絶対にダメ!」


 早智子は、この子に命じた。


「わかったわ。これが出来るのは、私をおいてほかには、いないのです」


「えっ!! 本当に大丈夫?」マントのオヤジと少年は声を合わせて聞いた。


「大丈夫よ! 心配しないで!」


「それは、残念! どうしても行きたかったのに!」マントのおやじと少年は、再び声を合わせていった。


 ドラキュラ風のマントのオヤジが、シメシメという顔をしたようにも思えた。少年もクスッとしたような気がしたが、それは自分の気のせいに違いないと、人を疑うことを知らない早智子は思った。

これを読んで、なぜか『だ◯ちょう倶楽部』が頭に浮かんだあなた!あなたが予知能力などの超能力の持ち主であろかもしれないことを誰が否定できるでしょうか。


2ちゃんねる創作発表板「『小説家になろう』で企画競作するスレでも、皆さんのお越しをお待ちしています。

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[良い点] 文面の中に 視覚的明暗が 感じられる [気になる点] 私だけ・・少しだけ  状況の説明が・・境目が ラスト前あたり・・ [一言] かなり おもしろい! これはNHK~FM ラジオドラマに…
[一言] はじめまして(・∀・)♪ 読ませていただきました* とても面白かったです\(^O^)/ これからも頑張ってください(*^-^*)
2012/08/20 12:42 退会済み
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