E先生の話
Q.事故物件ってどう思いますか?
「ああ、近所にあるよ。俺の嫁さんは霊感があるから、外から見ただけでその家に何かがいるってわかるし」
Eさんは学習塾の先生をしている。
私が高校時代にお世話になった学習塾だ。
「うちの生徒も、事故物件に勝手に侵入する馬鹿がいてさ。
不法侵入だからもちろん駄目なんだけど、若い時ってやっちゃいけないことほどやりたがるんだよな。
もう何年も前に、勝手に事故物件に忍び込んだ男子生徒がいたよ。
なんでも、墓場の横にある誰も住んでない民家に、首を吊った男の霊が出るって噂で……そこに仲間とお化け屋敷感覚で夜中に侵入したんだ。
結局何も起こらなかったって、武勇伝みたいに話してたからずいぶん説教したよ。
そしたら後日、その中の一人が真っ青な顔してやって来た。
『腰が重い』って言うんだ。
事故物件に行ってからずっと腰が重いんだと。
疲れてるような怠さとは違って、それこそ昔の……ほら、スポーツ漫画で見たことないか?体力をつけるために、腰にロープ巻いてタイヤを引っ張ってるシーン。あんな感じ。
何か重たいものを腰に巻き付けて、引きずりながら歩いてる感覚がするんだって怯えてた。
その生徒は『首を吊った男が腰に抱きついてるんだ』と思い込んでそりゃあもう怖がって。
でもさぁ、そう言われても、俺は何にも見えないし。
しっかり反省して、お祓いにでも行ったらどうだ?って言うしかなかったよ。
お祓いが効くかはわからないけど、気分が晴れるかもしれないだろ?
こういうのって、気の持ちようじゃん。
結局お祓いに行ったらすっかり元気になってたよ。
だから、俺の嫁さんにその話をしたんだ。
そしたら『その家って、◯◯町の寺の横?』って聞かれた。
俺が、そうだと答えたら不思議そうな顔されてさ。
妻は何回もその家の前を通ったけど、男の霊なんかいなかったって言うんだ。
『あそこには小さい女の子が一人居るだけなんだけどなぁ』って。
あ、もちろん生きてる女の子じゃないよ。
俺は妻の言う事を信じてるから、きっと女の子の霊は居るんだと思う。
でも、それだとおかしいんだよな。
首を吊った男じゃなくて何で小さい女の子の霊がいるのか。
逆に、生徒の腰に抱きついてたものが首を吊った男の霊なら、どうして普段はその民家にいないのか」
E先生はけらけらと笑い、冗談めかした口調でこう言った。
「事故物件って、幽霊が共同で住んでたりするのかな?住む人が死んだ家って、一体誰のものになるんだろうな」




