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Bさんの話

 

 Q.事故物件、ってどう思いますか?


「嫌です。私、超怖がりなんで」


 そういうBさんはAさんの部下である新米納棺師であった。


「でも、私は事故物件って人が作ると思うんですよ。特にここらへんって、田舎じゃないですか。都会みたいに高いマンションから飛び降りたり、孤独死して何日も見つからないって少ないんですよ。……まぁ、そもそも都会とは人口が遥かに違うんで。

 だけど、先祖代々から受け継がれてる家が幸せいっぱいってわけじゃなくて……なんというか、都会のようにマンションの一室で、借り手が見つからず格安で賃貸に出されてるような事故物件と違った怖さがあるんですよね。

 もはや家だけでなく、その一族の血に染み込んだような何かが残ってるんじゃないかと思う時はあります。


 先日、仕事に行った家は大きな古い日本家屋でした。

 その家で故人様の支度を頼まれたんです。

 故人様はまだ若い娘さんだったので緊張して臨んだんですけれど、喪主さんに挨拶に行くとずいぶんアッサリした様子で、勝手に進めてくれということでした。


 故人様のいる仏間に入って、心臓が止まるかと思いましたよ。

 骨壺がね、あるんです。

 仏壇の下に小さい骨壺がたくさん。

 人間のじゃありません。小さい物からちょっと大きめの物までありましたが、一つ残らず動物用の骨壺です。

 二個や三個なんて生易しい数じゃありませんよ。

 ハッキリ数えてませんが、それでも二十は軽く超えてます。それが仏壇の前にずらりと並んでるんです。

 もちろん仏壇の下だけには置ききれないんで、隣の床の間にまでびっしりと置かれてました。

 その前に布団が敷かれて、故人様が寝ているんです。


 私、ご遺体は怖くないんですけど、そこまで大量の骨壺の前でお支度するのは流石に恐怖を感じましたよ。

 骨壺から目を逸らそうとして、ふと目を上げると仏間の上に遺影がいくつも飾られていました。

 先祖代々の遺影です。どこの仏間にもかけられてるような遺影写真でした。

 でも、私は何故かその写真に違和感があって……

 何だろう?何でだろう?って考えながら故人様の化粧を終えた頃にようやくわかったんです。


 何枚も飾られた遺影の中に、老人が一人もいなかったんです。

 若々しいお顔、じゃなくて、明らかに若いんです。

 みんな、若い写真でした。それこそ、小さな子どもも何人か……


 私は、家……建物や土地よりもあの一族にきっと何かあるんだと思います。

 それでも『それじゃあ、あの家族が家を捨てて立ち去ったとして、お前が代わりにあの家に住めるか』と聞かれたら……」


 Bさんは力なく首を横に振った。


「無理だと思います。きっと、あの場所はもう誰も長くは住めない」



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