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幸せをかみしめるルーク

「ばぁばおかえりー! なにしちょんそれ、たのしそうじゃね。

 ゆっちゃんもそれやるー!」

「ゆっちゃん、ばぁば腰が痛いんて」


暫くして戻って来たマォは・・・

ササミに咥えられてブラブラと揺れながら戻って来た。

何故そうなった・・・


「いやぁちょっと張り切り過ぎてね?

 腰がこう、グキッとね?・・・」

「ほらねおとん。ゆうた通りじゃったろ?」(笑)


さすが親子、マォの事をよく解っている。


「だが、その恰好はいかがなものかと・・・

 ササミ、もう少しマシな運び方は無かったのか」

「一番楽な体勢がこれじゃったん・・・」

「そ、そうか・・・」


ササミからマォを受け取り横抱きでベットにまで運ぶ。


「さすがにこの齢でお姫様抱っことか恥ずかしいんじゃけど・・・」


言うでない、私とて恥ずかしいのだから。

2人で赤面してしまった。

言うと変に意識してしまうではないか!


そっとベットに降ろした後、痛めた腰に薬を塗っていく。

よく見れば小さな切り傷や擦り傷も無数についている。


「傷薬も持って来るから大人しく待って居ろ」

「ん?このくらい放っておいても・・・」

「駄目だ、化膿したりしたらどうする」


まったく自分の事となると無頓着な・・・

私も人の事は言えぬか・・・(苦笑)


マォの手当を終え、すっかり眠ってしまったのを確認すると皆の居るリビングへと戻った。

アルノーやダルクから話を聞けば


「アンデッド系がいて臭かったんだよ・・・」

「マォが苦手とするヌメヌメ系もいて大変だったんだよ」

「おかんが げっ とか うえぇぇぇ とか叫びながら魔法を連発してだな」

「予告なしの無詠唱だから俺達にまで当たるかと冷や汗をかいたんだ」

「お、おぉぅ。それはご苦労だったな・・・」

「まったくですよ、いつ禿るのかと冷や冷やものでしたよ」

「「「 そこ?! 」」」

「髪の毛は大事でしょう!」


色々な意味で大変そうだったのは理解出来た。

疲れが出たのかマォは発熱しそのまま3日間寝込んだ。

その間に私は千秋やダルク、アルノー、リオルに背中を押され、プロポーズの準備をした。


千秋「どうせじゃったらサプライズがええんじゃないん?」

ダル「そうですね。祝勝会と一緒に簡単な結婚式をするのもいいかもしれませんね」

コレ「では料理は私が担当しよう。

   千秋が言っていたウエディングケーキとやらも作ってみよう」

カカ『はーいはい!ベールは僕とチョコで作るね!』

モル『ではブーケを作ろうかな』

アル「ルーク、指輪は?」

ダル「はい、用意しておきましたよ。私の最高傑作です!」

ルー「準備がよいな・・・」

ダル「こうでもしないと閣下は煮え切りませんからね!」

ルー「お、おぅ・・・」

リオ「親父殿、言葉はもう決まったのか」

ルー「一応はな・・・」

リオ「一回言ってみれば?」

ルー「は? そんな恥ずかしい事できるかー!」


逃げるようにその場を去りマォの元へ行く。

額に手を当ててみれば幾分か熱も下がり呼吸も落ち着いてきたようだった。


「ん・・・  ルーク?」

「気分はどうだ? まだ熱が下がり切っていないからもう少し寝ておけ」

「あれ、儂熱出したのか。 喉乾いた・・・」

「ああ。ほら水だ。飲めるか?」


背を支えて体を少し起こし水を渡す。


「情けねぇ、あれしきで寝込むとか」

「そうは言うがな、かなり暴れたと聞いたぞ?」

「暴れ・・・いやそうか。暴れたのかもしれん」

「明日には回復するだろう。ほら、もう少し横に成れ」

「ん、ありがと」


しおらしいマォと言うのも珍しい。不謹慎な気もするが可愛いとおもった。


次の日にはすっかり元気になっていた。


「午後からは祝勝会と慰労会をやるらしいからそれまでのんびりしてろよ?」

「わかってるって」(苦笑)


そう言いながらマォは寝ている間に凝り固まった体をほぐしていた。

目を話すと畑にでも行きそうなので、書類を持って来てこの部屋でやることにした。

もっとも皆がリビングの飾りつけなどをしているので、マォに気付かれぬよう見張るという事もあるのだが。




「ルーク、おかん。そろそろ始めようぜ」

「ん、もうそんな時間か」

「旗減った、行こうルーク」


マォとリビングに向かうとカカオが待ちかねている。


「あれ?なんでカカオ此処におるん?

 てかよく家の中に入れたね?」

『ふふふ、ちょっとだけ小さくなる魔法使った!』


ぶっ、そんな魔法があるのか!初耳なのだが!


『 ふふふ マォ おめでとう 』


カカオがふわっとマォにべールを掛ける。


『 はいこれ持って 』


ホップがマォにブーケを渡す。

戸惑いながらも何かに気付いたようにマォは目を見開いた。

私はその場で膝をつき、指輪の入った小箱を開き差し出す。


「え? ちょ。 ルーク?」

「マォ 残りの人生を共に歩ませて欲しい。

 君の笑顔も泣き顔もずっと側で見つめていたい。

 無鉄砲で破天荒な所も含めて、君を愛しているよ」


そう言えば、愛してるなどと初めて言ったかもしれない。

マォは固まってしまっていた。


「おかん、あっちでも結婚式とかしてなかったんじゃろ?

 人生初じゃん!ルークさんええ人じゃし良かったじゃん」

「ばぁば? ゆっちゃんじぃじも大好きよ?」

「マォ?・・・」


不安になり名を呼べば、マォは熟れたベリーの様に真っ赤になっていた。


「ぶっ、おかん何今更赤面しよん?」笑

「ばぁば まっかっかぁ~~」

「うっさいよ!」

「そもそもおかんは恋愛にニブイ」

「いやルークがちゃんと言わなかったのも悪い」

「今まで機会はあっただろうにな」

「まぁいいじゃないか、やっと言えたんだから」笑


なんだかいたたまれなくなり始めた頃、マォは無言のまま私に抱き着き顔を埋めてしまった。

そしてかろうじて聞き取れるくらいの小さな声で


「儂もルーク大好きだったらしい」


と答えてくれた。

なんともマォらしい返事だなと思う。


「指輪を受け取って貰えるだろうか」


こくんと頷くマォは可愛かった。


「おぉぉ、おかんが乙女に見える」

「アルノー、黙りなさい。思っても口にしてはいけませんよ」

「ダルクだって思ってたんじゃないか」

「2人共、黙れ。後が怖いぞ・・・」

「「 げっ 」」

「ホラホラ、冷やかすのはそこまでにして料理が出来上がったぞ!」


「「「「 おかん、ルーク。おめでとう!!!」」」」


「まったくあいつらときたら・・・」

「まぁまぁ、今日は大目に見てやってくれ。

 皆この日の為に色々と準備してくれたんだ。

 そのベールはカカオとチョコがひっそりと編み上げたらしい。

 そしてブーケはモルトとホップが用意した。

 コレットは千秋に教わってウエディングケーキまで作ってくれた。

 今日の料理の素材はすべてクッキー・ビスキュイ・サブレが用意した。

 もっふるにもさっさと、きちんと伝えろと言われたよ。

 エルフィンの思惑もあったのだろうが

 先にプロポーズが出来なくて済まなかった」

「まったく想像もしてなかったよ、書面上だと思っていたから。

 きっとこれからも何がどう変わるとかないと思う。

 今まで通りだと思うけどいいの?」

「最高の家族だろう?俺達は。隣にマォが居る、十分私は幸せだよ。

 お互い若くは無いのだし、今更イチャつくとかはなぁ?

 いやでもたまには手を繋ぐとかしたくはあるな・・・」

「ふふっ。そうだね、皆が居て千秋もゆっちゃんも居て。

 うん幸せだ。

 儂さ、ルークの笑顔も声も 好きだ」


照れ臭そうにマォが笑う。

改めてマォに好きだと言われると、私も照れてしまった。

そうか、言葉でハッキリと伝えられると嬉しいものだな。

そう思えば、エルフィンにも一応は感謝なのだろ・・・う・・・?


「ねぇルーク。今気が付いちゃったんだけどさ・・・」

「私も今気が付いた・・・」


「「 エルフィン達に知らせてない! 」」


しまった、スタンピードについては報告しておいたが・・・

簡易的な結婚式については知らせていなかった!

あー・・・絶対拗ねるのだろうなぁ。


「まぁそれは後で考えよう。

 私達も食事にしないと、無くなってしまいそうだ」

「え?」


視界の隅に見えたのは物凄い勢いで消えていく料理の数々。

「ウエディングケーキは別で後からだす」と言っていたコレットは正しかったのだと思う。


「お前等!儂のを残しとけ!! あああ、それ全部持っていくんじゃねぇぇぇぇ」


そう叫びながら駆け出すマォはしっかりとベールを手で押さえていた。

一応は落とさないように気遣ってくれているようだ。


「ルーク早く!!」


呼ばれて私も料理を取りに向かった。

ある程度腹が満たされた頃にウエディングケーキが運ばれてきて

ダルクが神父の代わりを務め誓いの言葉を交わしたのだが、これまた恥ずかしかった。


「それでは近いの口付けを」

「「 は?! ここで?! 今?! 」」


皆がにこやかに・・・いやにやにやと見つめて来る。

お前等覚えておけよ?・・・

意を決してそっとマォに口付けを落とした。

これが初めての口付けだっただなんて、誰にも言えない言いたくない。

が、マォには解ってしまったようで・・・

ぐいっと引き寄せられて口付けを返された。

その瞬間私の視界は傾いていき・・・


「ぅわぁ!閣下!!」

「ちょ、ルーク!鼻血!」

「えぇぇ、おとーん」

「親父殿?! 駄目だ意識が飛んでる!」

「嘘じゃろぉー!」


この出来事は後々エルフィンに弄られる事となったのであった。


それでもやっと手に入れた平穏な生活に愛しい家族達。

この場所を、この時間をずっと守っていきたいと思った。


「マォ、末永くよろしく頼む」

「お互い長生きせんとじゃね」


そっとマォの肩を引き寄せて庭で騒ぐ皆を見つめる。

遠くからエルフィンの叫び声が聞こえる気がするが、気のせいだと思っておこう。

今はまだこの幸せを嚙みしめて居たかった。

これにて終話となります。

お付き合いいただきましてありがとうございました。

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