頑張るルーク⑨
読んで下さりありがとうございます。
つんつんっ クォクォーケゥケッ!
「ルーク、はよ手紙書けとさ・・・モモが届けてくれるって」
「お、おぅ」
マォとモモに急かされて慌てて手紙を書く。
【古狸の小細工で邪魔が入るかもしれぬので早々に城を出る様に。
ウォーカー一族も王族も一斉に日を合わせて出る方が良いと思われ】
これでいいだろう。
「あ、ルーク。
蜘蛛を見かけても手出しせずにそのままにしておくように書いておいて。
カカオ達の仲間が王城内に居るから影から警護してくれるってさ」
なるほど、それは助かるな。ではその事も追加で書いておこう。
書き上げた物をモモの足に結び付けるとモモは地中に潜って行った。
「・・・・
なぁダルク。バジリスクとは地中を移動するのであったかな?」
「いえ、聞いた事がありませんね・・・」
「でも今潜ったよな?」
「潜っていきましたね・・・」
いや、気にしたら駄目だ。
そう、マォと一緒にいるのだから何が有ろうと気にしてはならんのだ・・・
私は自分にそう言い聞かせた。
「では明日から作業に入りますかね。
いずれ小国となるのであれば、道の整備は必要でしょう」
「ならさ、道の整備は儂とオルガでやるからダルクは各町の防壁頼める?」
「防壁ですか?」
「そそ、壁作って通用門を作っとけば変な侵入者防げるじゃん」
「なるほど、承知しました」
「では自分達は婚約者や家族を迎えに行ってまいります。
陛下達の移動が終わるまでにこちらも移動を済ませた方が
人の流れを把握しやすくなりますし」
「確かにそうだな、ではそのようにそれぞれ動くとしよう」
私はと言えば、移住してくる者達の身分証の準備をする事になっている。
私が不在中にケイルを始めとする各町で半数近くの住民が消えたので、そちらに住む者と此処に住む者の振り分けもせねばならぬ。
そう言えばマォが各職人がばらけるように配置を頼むと言っていたな。
どの町にも過不足の無いようにせねばならぬな。
メイド達にしても各町で宿屋を運営すると言っていたので雇用には困ら無さそうだな。
コレットの元部下達も宿屋で腕を振るうのか。
なるほど、ダルクとマォである程度の案は出していてくれたようで助かる。
薬師や医師、治癒師も城勤務の者達から希望が出ていたな。侍女長のお墨付きの者達が来てくれるようだ。
・・・
私、何気に忙しくないかこれ・・・
身分証もいったい何名分用意しておけばいいのだ・・・
せめて名前と総数を聞いておくべきだったと今更思っても仕方が無いので適当に用意しておく。
後から名前だけ記入すればよいだろう・・・
翌日獣人達は家族や婚約者を迎えに出掛けた。
その後すぐにエウリケ殿下が到着したのだが・・・
「あのね?ササミ。
彼は王太子なんだよ。それを咥えて運ぶってどうなのさ」
「あ、いえあのマォ殿。
最初は背中に乗せてくれていたのですが
私が転寝をして落ちそうになったのでこうなりまして・・・」
「は?! 殿下!コカトリスの背で転寝とか危ないではないですか!」
「いやあまりに風が気持ち良くてね・・・
後私はもう王太子でも王子でもないので
エウリケと呼んでいただければ・・・
宰相・・・ルーク殿も頼むよ」
「わかりました。ではエウリケ様と・・・」
「え、やだ。」
「ぶっ、やだ。じゃなくてですね?」
「いいじゃないかルーク。本人が望むように呼んでやれよ」
「さすがマォ殿。ではエウリケと呼び捨てで」
エウリケ殿下は早くも馴染み始めていた。
元々人懐っこい人柄ではあったが、若さゆえだろうか。順応性が高いな。
何か手伝うと言われたのだが、殿下も私と同じで体力が無かった(苦笑)
なので獣人達と共に体力作りからと思ったのだが
「エウリケ殿そうではなく、ここをこう!」
「エウリケ殿しっかりと握っておかないと・・・うわぁぁぁ」
「エウリケーーー!! あぶねぇだろう!
だめだ、素振りは危なくてやらせられぬ!」
「基礎からだな、走り込みからにしよう!」
私やダルクよりも酷かった・・・
うむ、これはもう運動不足などと言うレベルではない。
運動させたら駄目なのではないだろうか。
走るくらいなら・・・大丈夫か?
まぁ本人は楽しそうなので怪我さえしなければ良しとしよう。
数日後にはエルフィン達もやって来た。
屋敷の準備が整うまでの数日間はここで過ごすつもりらしい。
何故かアムリタと侍女長がオルガと仲良くなっている。
仲が良いのはいい事だが打ち解けるのが早くないか。
「えー、だってオルガちゃんこんなに可愛いのにー」
「そうですとも、仲良くなるのに時間は関係ないのですわよルーク殿」
そういうものなのか?・・・
「ほらほら、これから時間はたっぷりとあるんだぜ?
まずは腹ごしらえだ!ピザが焼き上がったぞー!喰え喰え!」
マォが次々とピザを焼いていく。
エルフィンはどこからかワインを取り出した。
アルノーは酒の樽を持ち出してき・・・樽?!
そんなに飲むつもりか!
「いいじゃないか今日くらい。新たなる門出の祝いだ!」
「いやそれはいいんだが。
ダルクにはあまり飲ませるな・・・よ・・・遅かったか」
言い終わる前にダルクは一気に酒を煽っていた。
「あの古狸共は何も解っていない!
民あっての貴族であり王族なんですよ!
予算組だって好き勝手言ってこっちの身にもなっていただきたい!
我々が頂いていた給与も彼らが要求する予算も
ぜーーーーーーんぶ民からの税なんですよ!
それをうまく活用していかに民の生活を良くしていくかを考えないと!
部下も部下でなんでもかんでもはいはい安請け合いばかりで!
適当な空返事ばかりで役にたたないし、向上心なんてどこへやら。
あれは給与泥棒です!
あんなのに給与を払うくらいなら薬師の研究費に回して養毛剤の開発をですね!
ああ、そうですね。マォ殿。マォ殿の知識でどうにかなりませんかね養毛剤!」
始まった・・・
「うわ、もしかしてダルクって・・・」
「ああ、絡み酒だ・・・」
「めんどくせぇ・・・」
「だから飲ませたくなかったんだ・・・」
こうなったダルクは面倒くさい、延々と同じ愚痴を繰り返すのだ。
なので私は早々に部屋へと戻った。
翌日エルフィンがうらめしそうな眼をしていたが気にしないでおく。