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頑張るルーク⑧

数日掛けて書類の選別をし、持って行くもの以外はすべて暖炉で燃やし尽くした。

執務室が蒸し風呂状態になってしまったが、それは仕方が無いと諦めた。

後から思えば窓を開け放てば少しはマシだったのではなかっただろうか。

ようやくそれも終わったので領地に戻ろうと思ったのだが侍女長に呼び止められてしまった。


ああ、なるほど。クルシカ殿を一緒に連れて行って欲しいと。

いくら妃殿下の下で保護されているとは言え今後の事を考えれば早めにクルシカ殿は城から出ておいたほうがいいだろう。

クルシカ殿はすでに準備も終わっているようだった。

リュック1つに鍬・・・


「何故に鍬・・・」

「愛用の農具なのですよ」


なるほど、愛用ならば仕方があるまい。

もふりんに鍬を預ける。

騎乗前に注意点を説明しておく。

おそらく地中を走る事になるであろうからな。


「なんと!地中の様子を見れるのですか!それは楽しみです」

「・・・」


発想がと言うか着眼点がと言うか、うむ。彼も変人な気がする。

弟と別れの挨拶をしてもふりんに乗り城を後にする。

二度と足を踏み入れる事はないと思いたい。


「おぉー、見て下さい閣下!あのように檜の逞しい根が!

 あぁ、あちらは葛の根でしょうか!

 閣下閣下!ほらあそこ!あれは希少な虹蚯蚓ですよ!」


クルシカ殿は少年のようにはしゃいでいた。

だが私に説明されてもな? 私は詳しくはないのだよ・・・


半日ほど走れば領地に着いた。

地上に出て一瞬場所を間違えたのではと思ってしまった。

庭木の種類が増えている・・・

巨大木彫り人形も増えている・・・

これはいったい何を目指している庭なのだろう・・・

などと考えていたらマォが駆け寄って来た。


「お帰りルーク、お疲れ様。シカさんもいらっしゃーい!」

「今戻った、マォ」

「マォ殿お久しぶりですね。再びご一緒出来て嬉しい限りです。

 ここでもまた菜園を担当させていただけるとか。

 いやぁ王城内では栽培出来なかった野菜や果樹も植えていいですかね?

 獣人国ではポピュラーな物なんですが見た目がちょっとな物で・・・

 人族の方々は苦手みたいでして・・・」

「見た目がちょっと、とは?」

「見て見ます?一応見本として持ってきてはいるのですが」


と見せられたのは・・・

まるっとしたフォルムの四肢にみえるような姿のマンドラゴラ?

はて、マンドラゴラとはこのような姿だったであろうか・・・


「え?これのどこが問題なん?可愛いじゃん」


マォは気に入ったようだ。

私も1つ手に取ってマジマジと見て見る。


「ぶっ」


思わず吹いた。よくよく見れば・・・足らしき部分の間に小さな()()()()が付いているではないか!いや、たまたまこれだけがそう言った形になったのか。まさか他のも?・・・

いくつか手に取って確認してみれば、ぷるんとした尻・・・


「なるほど、そういう事か!」

「え?ルーク。どういう事さ」

「マォ、よーく見て見るといい」

「ん?・・・    ぶっ!いっちょまえにタマ付いとる!」

「言わなくていい!!」


せっかく私が言葉を濁したのにしれっと言うでない。


「栄養価も高いなら植えようよ、見た目もそんな気にならないし」


このマンドラゴラは色によって味も変わるらしく、試食してみれば意外にも旨かったので栽培するのはいいと思った。

が、まさか収穫時に騒ぎになるとはこの時思ってもみなかった。


クルシカ殿の家は用意してあったので案内して休んでもらう事にした。


「このような立派な家まで用意して頂きありがとうございます」

「マォが温室も作ったそうだ。

 無理のない範囲で自由に作物を育ててくれ」

「獣人の方々もいらっしゃるようですし、思う存分農作業が楽しめそうです」

「まずはゆっくりと休んでくれ。夕飯時にでも皆に紹介しよう」

「ありがとうございます、これからどうぞ宜しくお願いいたしますね」

「ああ、ようこそウォーカー自然保護領へ」


クルシカ殿と別れ私も自室に向かい休む事にした。

持ってきた資料などを適当に片付けソファに腰を下ろす。

ベットに転がり込みたいが、それをすると朝まで寝てしまいそうだった。

夕食後には城で決めた事の報告をして、こちらでも受け入れ準備の相談もしなければ。


「ルーク、起きて。夕飯の時間だよ」


どうやら考えながら寝てしまったらしくマォに起こされた。

むぅ、どうせ寝てしまうのであればベットにすればよかったか・・・

食堂に向かい、皆が揃っているのを確認してクルシカ殿を紹介した。

どうやら獣人の間では有名らしく、彼の作る野菜は高値で取引されていたのだとか。

皆口々に喜んでいた。


夕食後は城で決まった事の報告をし、今後についても相談した。


「そう言う事でだ、エウリケ殿下が来週にはここに来るので宜しく頼む。

 と言うかだな、夏が終わるまでに全員の移動を終えるつもりだ」

「うぉっ、早いな」

「余り時間をかけると小細工をしてきそうな古狸がいるからな」

「城に残って陛下がまだやらないと駄目な事って何が残ってるん?

 周辺国への報告と独立区の承認は取れたんだよね?」

「いや来年の予算編成や今後の政策等の話し合いを・・・する必要がもうないな」

「だよね? だったらさっさと必要最低限の物持ってきた方がよくね?

 これで暗殺者が現れたり監禁されて実務全部やらされたりとかになったら

 やばくね?」

「確かにそうだな、弟も陛下達に逢わせて一斉に消える方がいいか。

 そこらも陛下と弟で話し合ってもらう必要があるな。

 仕方が無い。もう1度行ってくる・・・」

「いや行かずとも伝言鳥でよくね?」

クォクォッケコッ

「ぬぁっ、何処から現れたのかササミ!」

「え?任せろ? ついでにエウリケ連れて来る?」

クォケッ!  バビューン

「え、いや待て。待たぬかササミーーーー!まだ手紙を書いておらぬ!」

「「「 あぁぁ・・・ 」」」


自信満々なキメ顔でササミは走り去ってしまった・・・

読んで下さりありがとうございます。

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