頑張るルーク⑥
「「 叔父上?! 」」
面談最終日にして私は仰け反り弟は机に突っ伏した。
まさか移動式商団が叔父上だなんて思ってもいなかったのだ。
この叔父は遅くに出来た父の末弟で齢は私達とそう変わらない。
祖父の代わりに父が叔父を育てたようなものだったし。
幼い頃は兄弟の様に遊んでいたものだ、懐かしいな。
「知っての通り僕の商隊は周辺諸国も回っているからね。
物資の調達や情報・人材の確保。
なにかと君達の力になれるんじゃないかと思ってね。
ほら、私は放浪しているから貴族連中にも顔を知られていないしね。
ちなみにスェイキョウ商会とも懇意にさせてもらってるから安心してね。
僕と商会のルートを利用すれば確実に安全に手早く届けられるよ」
確かに叔父は社交をあまり好まずにいたな。
そのぶん周辺諸国でも渡り歩き人脈は幅広いし、ウォーカー家が情報を迅速に入手出来るのも叔父のお陰だったりする。
この叔父がうちを拠点としてくれるのであればありがたい。
「叔父上が居てくれれば心強いですね」
「そう言ってくれると嬉しいね、ルークは余り僕を頼ってくれないからね」
「今までは城内の事に携わってましたからね。
でもこれからは頼らせていただきますよ」
「ああ、そうしてくれ。兄上にはお世話になりっぱなしだったからね」
この叔父の登場で私はもう最後の一組は面談しなくていいんじゃないかと言う気になってしまっていた。
「兄上、一応はやらないとですよ・・・」
「だよなぁ・・・」
そして迎えた最後の一組。
なんと言うか、有体に言えばどこにでもいそうな平凡な貴族。
言っている事も当たり障りがないと言うかいかにも領民の事を考えているような話しぶりだ。
だが何かが引っかかるというか、張りぼての偽善に聞こえてしまうのは何故だろう。
ちらりと弟やエルフィンを見れば同じように微妙な表情となっていた。
廊下に控えているアルノーを見れば首を横に振っているのでマォは会う気も無いようだ。
ならば彼は却下でいいだろうか。
会話の中に妻子の事は出て来るのに連れて来て居ない。
面談には必ず家族全員でと伝えたハズなのだがな。
余り深く話必要もないと感じたので早々に切り上げる事にした。
ダラダラと話を聞くのも面倒なのでな。
この日の夜の愚痴大会は妃殿下と侍女長も参加していた。
「マォ殿、もう帰ってしまうの?寂しいわぁ~」
「妃殿下、すぐにまた会えますからほら泣き止んでください」
泣き上戸だったのかシクシクと泣く妃殿下となだめる侍女長。
「マォ殿が居ないと癒しの時間がないのよぉ~。
ルークが居なくなってから
あの狸ジジィがアレコレと好き勝手に余計な仕事増やすしぃ~」
「妃殿下言葉使いがおかしくなっておりますよ・・・」
「いいじゃないのよぉ、どうせ身内しかいないんだものぉ~」
妃殿下は完全に酔っているようだった。
まだグラス半分も飲んでないと思うのだが。
まぁ楽しそうではあるが・・・
マォとアルノーは明日帰って行くので、今のうちに簡単な打ち合わせをしておく。
ルー「侍女長に頼んで王族以外の再調査をしたほうがよいだろうな」
エル「んむ、残念ながら今の王城で使える者は居ないと思う方がよかろう」
ルー「明日からは新領地について色々と考えていかねばならんな」
マォ「政務はいいのか?」
エル「今更だと思うが?」
マォ「それもそうか」
弟 「マォ殿は新領地での条例に組み込んで欲しい物はありますかな?」
マォ「そうだなぁ。
無暗に畑や住宅地を開拓拡張しない事。
自然保護って意味合いで
各家庭で庭に1人1本の樹を植えるようにして欲しい事くらいかな。
森林が減ると生態系のバランス崩れるしそれが進んで行くとね、
気候変動ってものが起きて大変な事態を招くんだよね。
だから無暗に伐採とかしてほしくないんだよね。
やるなら計画的に、伐採後はちゃんと植林も考えないとね」
弟 「なるほど、だから人数を余り増やしたくない訳ですな」
マォ「んだ」
エル「条例はウォーカー領やウォール領を参考にすればよかろう」
ルー「そうだな、それを基本として考えるか」
マォ「あ、税率とかも獣人達も住む事を踏まえて考えて欲しいかな」
ルー「そうだな、そこらはダルクが得意だから任せよう」
マォ「あー、なんかそんな気がする。小難しい計算とか得意そう」
ルー「んむ」
エル「まぁ明日から本格的に話を詰めていくとして。
近隣諸国への根回しも必要だな」
ルー「そこは伯父が手を貸してくれるだろう」
エル「ああ、あの変わり者のウォーカー侯爵か。
彼は顔が広いというか人脈が素晴らしいからな」
弟 「後は引継ぎや私達の隠居理由ですかね」
マォ「引継ぎとか居る?どうせ沈みゆく泥船だろ?」ニヤッ
エル「引き継いだところで無駄だろうしな、狸の頭じゃ・・・」
ルー「自分達の都合の良いように好き勝手やるだろうからな。
引き継ぐだけ無駄無駄、放っておこう」
弟 「まぁそうですね」
その後は再び愚痴大会となった。
エルフィンにしろ弟にしろ、どれだけ愚痴が出て来るのやら・・・
必要事項を纏めて早々に抜け出す準備を進める方がいいかもしれぬな。
『 国王が城を見捨てるなど前代未聞・・・』
ダルクがこの場に居たらそう言うだろうな・・・(苦笑)
読んで下さりありがとうございます。