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一応領主なルーク⑨

「今戻った・・・」

「お、おう。おかえり?」

「随分とその・・・」

「んむ、往復地中だったのでな・・・」

「そ、そうか」

「まず風呂にいってくる・・・」

「お、おう」


ゆっくり座りたかったがまずは汚れを落とさねば・・・

そして風呂に浸かりながら考えた。

マォには結果だけを伝えるのでよいだろうか。

詳しく話しても思い出させるだろう。


風呂から出てくると軽食が用意されていたのでそれを摘まみながら結果だけを報告した。

マォは「そうか」と呟いただけだった。

これまでの色々な感情を抑え込んでいるのだろう。

時間が癒してくれるのを待つしかないのかもしれぬ。


疲れ切っていた私はその夜はゆっくりと眠る事が出来た。



それ以降は比較的穏やかな日々を過ごすことが出来ていた。

木彫りは着々と増えていき、春先に町で売るにはよいだろうと思う。

思うがこの庭に鎮座する数々の木彫りはこれ以上増えて欲しくはない。

リアルすぎて・・・



雪解けが始まる頃獣人達は恋の季節を迎える。

マォの一言で獣人達と騎獣達の帰省が決まった。

手土産に持たせると言ってマォは狩りをして来て何やら作っているのだが。


「ほれ、試食だ。食ってみ」


と言われて目の前に置かれたのは真っ黒なソーセージだった。

食べれるのだろうが、少々抵抗がある見た目だ。


「なんだこれ! うめぇぇぇぇぇぇ」

「見た目はあれだが旨いな!」

「何本でも食える!」


獣人達は絶賛している。

そうだな、マォがおかしな物を作るはずがないではないか。

一口食べてみると、確かにこれは旨かった。


「これ思いついた人すげぇ」

「「「「 おかわり! 」」」」

「無い!土産が無くなるだろうが!!」


獣人達がシュンとしている。


「親父殿、苦手なら俺が食ってやる」

「は?別に苦手ではない! あ、こら!リオル!返せ私のだ!」


リオルは私の皿からソーゼージを摘まむとヒョイと口に入れてしまった。

ああぁぁ・・・私のソーセージ・・・


落ち込んでいるとマォが違う物を持ってきた。

なんだこれは?・・・ ボアの足か?


「豚足ならぬボア足だな」

「食えるのか?」


コレットが不思議がるのも無理はない。


「まぁ肉ってよりも筋や皮を食う感じかなぁ。

 実はこれってコラーゲンタップリでね。

 足腰の痛みや関節痛の予防、皺改善に美肌の効果もあるんだぜ?」ニヤリ

 

「美肌・・・」

「腰痛・・・」

「足の痛み・・・」


私とダルクは興味津々になってしまった。最近足腰が辛いのだよ・・・

コレットはすでに食い付いていた。


「喰うんじゃねぇぇぇぇぇ!それまだ下茹だ!味付けしとらん!」

「どうりで・・・美肌と聞いたものでつい・・・」

「つい、じゃないわぁ! 完成まで待たんかぃ!」


よかった、まだ手を出さずにいて・・・

コレットも今まで気にしていないように思っていたがどうやら美容関係にも興味を持ち始めたようだった。

はっ、まさかコレットも恋をしているのか。うむ、それはそれでよい事だと思う。


翌日、獣人達は山積みの手土産を持たされ帰省していった。

勿論リオルもだ。


「姉上に宜しく伝えてくれ」

「解っている。きっと驚くだろうなぁ」

「反応が楽しみだな。気を付けて行ってこい」



居残り組となったのは私とマォ・アルノー・ダルク・コレットの5人となった。


「んじゃいい機会だしさ。

 アルのお母さんやお仲間の慰霊碑でも作ろうか」


墓だと人数も不明だし遺骨も見つかってないので、それよりは慰霊碑の方がよいだろうと言う事になった。

なにかシンボル的な物があった方が良いとの事でマォの世界の地蔵尊菩薩と言う仏をアルが彫ると言い出した。やはりこの地で生まれ育った仲間たちの弔いだからであろうな。

ならばと私達はその地蔵尊を祀る建物を作る事にした。

マォがこんな感じだと絵を描いてくれたのでそれを参考にする。

最近では少しばかり体力も付いて来たし、鉈や斧などの扱いも慣れて来たと思う。

私やダルクでも手伝う事は可能だと思いたい。

あの時のスタンピードはオルガも覚えているようで自分も何かしたいと石碑を作るらしい。

オーガとは器用なものだなと思う。少し羨ましい。


1週間後には完成した。

設置場所は居住区の北側。

土を盛り上げて居住区全体が見渡せるようにした。


「ここからなら亡くなった人々も安心して見守ってくれるんじゃなかろうか」


マォの言葉に同意する。


お堂と呼ばれる小さな建物の中にアルが彫り上げた地蔵尊が置かれ、その横にはオルガの作った石碑が・・・


『 金色(こんじき)(ひぐま)と優しきハンター達 ここに眠る 』


「ぶっ」


アルノーが吹いた。


「何故金色の羆にした!」

「なんかダルクに教えて貰ったってオルガが」

「お前の仕業かダルク!!」

「良い名ではないか! 後世まで語り継がれるべき英雄だろう!」

「そうかもしれんが、せめて名前も入れてくれ!」

「「「・・・」」」

「名前知らんもん・・・」


そう、皆通り名は知っていても名前は知らなかった。

もっとも今更変更は出来ぬしな、諦めろアルノー・・・

スタンピードに立ち向かい人々を守り抜いた心優しき勇者たちよ、貴方達に代わり私達がこの地を守っていくと誓おう、どうかこの地を見守っていて欲しい。

黙とうをささげた後 家に戻り休憩をとる。


「そう言えば、凄く今更なんだが・・・」

「どうしたルーク」

「いつまでも辺境の地のままでは困るので名前を付けろと陛下が・・・」


そう、エルフィンにさっさと名前を決めろと言われたのだ。

書類を作るにしろ不便でならぬと・・・

確かにそうなのだが、名づけのセンスがだな・・・


「何かいい案がある人は?・・・」

「「「「 ・・・ 」」」」


だよなぁ・・・

読んで下さりありがとうございます。

誤字報告もいつもありがとうございます、非常に助かっております。

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