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一応領主なルーク⑧

ドドドドッ


城内をもふりんが突っ走る。

あー、うん。確かに陛下の所までとは言った。

だがしかし・・・

堂々と城の中庭に穴を開けて城内に土を撒き散らかして走るなどと誰が想像出来ようか。

すれ違う文官や警備の視線が痛い・・・

まぁ引き止められてもめんどうなのでこのまま突っ走って貰う方が良いかもしれぬな。

・・・

いや待て。このまま突っ込むと扉がマズくないか?


「もふりん、少し速度をおと・・・」


遅かった。 ベリッと鈍い音がして扉は破壊されてしまった・・・

陛下や弟と目が合う。


「兄上・・・」「ルーク・・・」

「すまぬ・・・止めるのが間に合わなかった」


もふりんから降りて軽く土埃を払う。


「してルーク。何故此処に来た」

「あー。それなんだがな」


私はマォから聞いた事を話すと同時にマォだけではなくその家族、特にゆっちゃんに影響が出た事も話した。


「と言う訳なので禁術に関わる書物はすべて破棄してしまおう」

「そうは言うが貴重な文献でもあるしなぁ」

「エルフィン!まだ解らないのか!

 何故そのように悠長に構えるのだ。

 人1人の・・・いやマォの家族の人生を変えてしまっているのだぞ!

 ましてやゆっちゃんは命を奪われているのだ。

 禁術が何故禁術であるのかをもっと真剣に受け止めてくれ!」

(おかしいエルフィンはこのように楽観的だったか?)

「厳重に保管もしてあるし大丈夫だと思うがな。

 ルーク、お前こそ事を重く考えすぎなのではないか?」

「厳重に保管?ならば何故召喚が行われた。

 まさかエルフィン、お前があの阿呆に禁術の書を渡したのか?」

「そんな訳ないだろう!」

「ならばお前が言う所の厳重に保管されていた禁術書が何故使用された。

 安全だと言い切れないではないか!

 お前・・・あの阿呆に対する怒りはただのパフォーマンスか?

 マォの・・・ゆっちゃんの・・・人の命をなんだと思っている!」

「兄上、落ち着いてください。陛下もです、もう少し事の重大さを理解してください!」

「落ち着いていられるか!

 こうやって話している瞬間にでもあの阿呆が禁術書を手に・・・

 まさかな・・・

 エルフィン!保管場所に案内しろ!!今すぐにだ!!」

「あ、ああ。確かに召喚の事を考えれば・・・

 楽観視し過ぎていたようだ、すまない」

「話は後だ!急げ」


エルフィンに案内させて禁術書の保管場所に向かえば

今まさにあの阿呆が取り出そうとしている瞬間だった。

なるほど、あれが落ち武者禿というものか・・・

うかつにも一瞬そう思ってしまった。


「僕は・・・僕はこの国の王となるべく生まれたんだ。

 誰にも邪魔はさせない・・・何度でもやり直せばいいんだ。

 そうさ、僕が王になるまでやり直せば・・・」


それを聞いた瞬間怒りが爆発し私の口からは普段使わない言葉が出ていた。


「このクソガキがぁぁぁ!貴様のせいで、貴様のせいで・・・

 罪もない子供の未来が何故奪われねばならんのだ!」


気が付けば掴みかかって殴っていた。


「兄上!落ち着いて・・・」

「落ち着けるか!あの時のゆっちゃんを・・・

 マォの様子を・・・見てないからわからぬのだ・・・」

「・・・ 兄上・・・」


この阿呆に構っている場合では無かった。

エルフィンの護衛に阿呆の捕縛を任せ、禁術書を手にする。


「エルフィン、これは処分するぞ」

「ああ、そうだな」


「や、やめろ!それは僕の物だ!

 僕にはそれが必要なんだ!」

「うるさい!」


マォの言ったように灰すら残らぬよう燃やし尽くした。

他の禁術書も燃やし尽くしたが勢い余って隠し棚も少し焦げてしまった。

部屋が焦げ臭くなってしまったので換気のために窓を掛けようとして違和感を覚えた。

先程までは気付かなかったが、これは・・・


「兄上?」

「政務室とエルフィンの私室へ向かう」

「え? 兄上?」

「ルーク?」


嫌な予感しかせずに速足でエルフィンの私室に向かえば

(やはりここもか)

窓を開け換気をし、そのまま政務室へと戻る。

(ここもか・・・)

政務室も窓を開けて換気をする。


「あの兄上、いったい何を・・・」

「気付かなかったか、この匂い。思考能力を低下させるクラリだ」

(どうりでエルフィンの反応がおかしかった訳だ)

「「 !! 」」

「保管場所や私室、ここにも匂いが籠っていた。恐らくは他の場所にもだろうな。

 誰かが意図的にクラリを置いたのだろう」

「気付かなかった・・・」

「私の判断力を鈍らせて傀儡にするつもりか・・・」

「もしくはあの阿呆を解放しようとしたのか」

「あの古狸共の仕業でしょうか」

「無関係ではあるまいな」

「しばらくは窓を開けての換気とハーブティーで対応しておけ」

「そうだな」

「そろそろアレの準備を始めてしまいますか?」

「そのほうがいいかもしれぬな、あくまでこっそりやれよ」

「はい、兄上」

「ルークが気付いてくれて助かった・・・

 駄目だな私は。危機管理能力が薄れている気がする」

「飲食にも気を付けていてくれ」

「ああ」

「まずはアレの処置をしましょう、陛下」

「そうだな」


いっそ極刑にしてしまうかとエルフィンが言うので、それは止めておいた。

そうしたいのは私とて同じだが、マォが耐えているのだ。


「そうか・・・

 マォがあんなのでも一応は私の子だからと・・・

 ならば生涯塔から出れぬように、他者との接触も出来ぬようにしてしまおう」


敷地内の南にある塔へと幽閉する事になった。

妃殿下に報告を一応は入れた。


「なんてことなの!マォ殿のお孫さんが!あの馬鹿のせいで!

 ええ、ええ、わかったわ。

 その幽閉作業、私がやるわ!古狸の息がかかった者になんて任せられないわ」


と妃殿下がタップリと魔力を流し込んで塔の出入り口や窓を塞いでいった。

あるのは食事の受け渡し用の小さな穴だけである。

しかも妃殿下の魔力が流れているので妃殿下より上位の魔力でなければ崩す事も解放する事も出来ない。


「ふっ、防音対策も完璧よ!

 こんな事で償いになるとは思ってないけど・・・」

「そう思うのならば、同じ過ちを繰り返さぬようにしっかりと生きろ。

 マォならそう言うでしょうね」

「ええ、そうね。私に出来る事をやっていくしかないわ」

「私もだな、今回の事は心に刻んで置く」

「では私はこれにて帰るとします」


挨拶を終え再びもふりんに乗って帰る。

言い忘れてしまいまた地中だったのだが、多少慣れて来た気がした。


読んで下さりありがとうございます

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