一応領主なルーク⑦
「 潰れてしまえ! 」 ブシュゥッ
マォの叫びと共に林檎が砕け散り、その後一瞬で元に戻った。
次に呪いの様な叫びが聞こえた・・・
「フハハハッ 落ち武者禿になってしまえ!
ついでに耳毛は癇癪起こす度に伸びてしまえー!
オマケに1日3回机の角に足の小指ぶつけてしまえ!
も1つオマケに痔にもなっちまえー! フハハッ フハハハハハ!」
ある意味物凄く良い笑顔のマォである。
内容はと言えば、自分の身には起きて欲しくないようなものだった。
「「「「 ぶっ 」」」」
アル「落ち武者禿とは何だ?」
ダル「解らないが余り良くない禿だと思われる」
リオ「地味だけど確実に痛い。身も心も・・・」
ルー「マォは怒らせたら駄目だな・・・」
「「「「うんうん」」」」
マォ「いやいや、儂から大事な物奪わなきゃいいだけだろ?」
コレ「確かにそうだけど」
グゥゥ・・・
誰かの腹が鳴ったらしい。
そう言えば私も空腹のような気がする。
「すまん、儂の腹だ・・・」(苦笑)
「何か食うか」
「だな」
コレットが簡単な物を用意してくれたので、皆で腹を満たす。
そして腹が満たされれば皆疑問を口にする。
「四神獣ってなんだ?!」
「守護仏ってなんだ?!」
「落ち武者ってなんだ?」
マォの説明によれば四神獣とはそのままの意味で東西南北を守護する4体の神獣だそうだ。
東の青龍 西の白虎 南の朱雀 北の玄武、今回関りがあったのが玄武と青龍らしい。
ゆっちゃん曰く、亀と鯉・・・
守護仏と言うのは生まれた年によって決められている自分を見守っていてくれる仏様が居るとの事で、私達で言う所の神々のようなものらしい。
落ち武者と言うのは惨敗兵の事でマォの国の古い時代では独特の髪型をしていたらしく、武士いわゆる騎士の誇りとも言えるその髪型の主要部分を敗者が切り取られなんとも残念な髪になるのだそうで・・・
マォが解りやすく絵を書いてくれたのだが・・・うむ、なんとも言い難い髪型・・・禿だった。
その日の夜は変な夢を見た。
あの阿呆が例の落ち武者禿になっていて血眼になって追いかけて来る夢だ。
嫌な気分で目が覚めてしまった。
何故私が追いかけまわされなければならぬのか、納得いかないのでそっと家を抜け出し少し離れた所から城に向かって叫んだ。
「自業自得だろうが!」
少しばかりスッキリした。
マォは体調がすっかり戻ると四神獣を彫るのだと張り切っていた。
少しは気が紛れてくれるとよいのだが。
それと同時に部屋の隅に増えていく木彫りの熊達・・・
そして庭にも・・・
等身大の木彫り熊にコカトリスにバジリスク・・・
一帯この庭は何を目指しているのだろう・・・
ある日の夕食後、私は気になって居た事をマォに聞いてみた。
「あの子達以外にも子や孫は居るのか?」
「ん?おるよ。
子は3人、あの子の姉と弟がいて
孫は上の子んとこに2人末っ子んとこに1人とゆっちゃんの4人。」
「なるほど。
では何故にあの子とゆっちゃんだけが影響を受けてしまったのだろうか」
「まぁ解らん。
だってさ、神仏まで出て来てどうこうとか言われても理解できる訳ないし?
ましてやあの阿呆の召喚魔法?で何で儂が選ばれたのかも解らんじゃん?
世の中考えたって解らん事もあるんだからさ。
もぉ神秘な力とか神仏の力とか
人の目に見えざる力が働いたって思うしかないんじゃないかなと」
「確かにな。見えざる力か。
んむ、考えてもどうしようも無い事もあるが受け入れるしかない・・・か」
「時間が巻き戻ってすべてが無かった事に~とかさ。出来ないと思うし?」
「 ・・・ 」
「え?・・・ まさか・・・」
「禁術として書物には残っていたような・・・」
「あるんかーいっ! あかん、それさくっと破棄しよう!さくっと!」
「いやだが・・・」
マォはどうやら小説や映画と言う劇のような物で逆行魔法に近いような話を見聞きしているようで、その危険性を語った。
「その禁術が記載された書物って何処にあるん?城内?」
「ああ、確か城内だな」
「・・・
やっぱ即燃やそう。破棄しよう」
「早々簡単に見れるような場所に・・・あ!忘れていたな」
「城内って今危険じゃね? あの阿呆がもし使ったら・・・」
「さすがに大丈夫と思いたいが断言出来ないな。
陛下にすぐ報告をして破棄してもらおう。いや私が行ってこよう、その方が早い」
「確実に破棄してね?灰も残らぬように抹消してきてね?」
禁術が載っている書物はいずれも王族が保管管理をしているし、召喚も逆行も多大な魔力を必要とし危険なものでもある。なのでまずめったに術をおこなおうと思う輩は居ないのだが・・・
召喚を行った阿呆が居るからな・・・
「もふりん、急いで陛下の元まで頼む!」
『任せて!』
そう言ってもふりんはズボッと地中に潜った。
待て待て待て、それならそうと先に行ってくれ。
慌てて風のシールドを身に纏った。
暗闇に目が慣れてくると・・・怖かった。
木の根や岩がぶつかりはしなくてもぶつかりそうな感覚に陥って怖いのだ。
帰りはぜひとも地上でお願いしたい・・・
読んで下さりありがとうございます。