自由人ルーク⑨
私でも従魔契約が出来るのではと言われて、マォに教えて貰って魔力をもっふるに渡してみる。
ちゅるんっとゼリーでも食べるかのように魔力を飲み込むともっふるは淡いピンク色の光に包まれた。
これで成立したのであろうか。
『 あるじ~、やっと相思相愛だね? 』
「おぉ、もっふるの声が聞こえる!」
ん?
相思相愛などと言う言葉を何処で覚えたのだ。
いやそうではなくてだな。
確かに両想い?ではあるが相思相愛とは違うのではないかな・・・
『 え~、僕あるじの事大好きなのに 』
ん?・・・
僕? 今僕と言ったか?
『 うん、僕は雄だからね 』
・・・
・・・・
・・・・・・
待て待て待たぬか! 雄ならばなおの事マズイであろうが!
私に同性愛の趣はないぞ!
それ以前に異種恋愛の趣もないぞ!
私にはマォがいるのだからな!
『 僕にももふりんがいるからお揃いだね? 』
いやいやそうではなくて!
駄目だ、話が嚙み合わぬ。
よし、前向きに考えてみよう。
まずは意思の疎通が出来るようになった、このことを素直に喜ぶべきだ。
取り敢えず思う存分撫でておこう。
私がもっふると戯れている間にオーガも辺境の地に同行する事が決まったらしい。
一度危険な目にあったのだから移動を考えるのも解る、特に今は子育て中だし警戒心も強くなっているだろうからな。
「オーガと一緒に旅をして一緒に住むとか想像もしなかったな」
「ええまったくです。これまた前代未聞・・・
今後幾つ増えますかね、前代未聞な案件・・・」ボソッ
そして崖崩れに関してもマォが町の住人が困るのではないかと心配するのでマォとダルクの2人が魔法で処理をする事となった。
手伝えないのが残念である。
日暮れ前にアルノーが町から戻って来た。
あの阿呆貴族は重篤な状態らしく城下へと搬送される事になったらしい。
一応は報告をした方がよいだろうと思い、陛下に手紙を送った。
手紙と言っても伝言鳥なのですぐに届くであろう。
後は閣下が上手く処理してくれると思いたい。
翌日は朝食後すぐに出発したので昼前には辺境の地、アルノーが子供の頃住んでいた場所に辿り着いた。
勿論オーガと一緒にだ。
しかし、いくら20年近く人が住んでいなかったとはいえ完全に荒れ地だな。
これではスタンピードに立ち向かった英雄達をマトモに弔っているとも思えない。
領主が居ないとは言え、住人達は過去の事と忘れてしまっているのだろうかと少しばかりムカついた。
「親父殿!マォ殿!早かったな」
奥からリオルが走って来た。
「拠点場所はもう少し奥に設けてある。
俺達も昨日着いたばかりでな、まだ整い切ってないんだ。すまんな」
こちらも予定外に早く着いたのでそれは仕方の無い事だと思う。
が、案内された先にはすでに仮住まいとなるテントも張られていて十分な状態にはなっていた。
テントに荷を降ろし外に集まる。そこには先発した獣騎士達も揃っていた。
「さて諸君、これからの事を相談する前に私から話しておきたい事がある。
この辺境の地についてだ。
諸君も知っての通り、この地は別名:見捨てられた地とも言われている。
故に領主や代官なども存在せず、王家直轄の土地となっていた訳だが。
私自身が一応は王族なのでこの地を退職金代わりに貰い受けた」
「おぉー!」とどよめきが起こる。
「私が侯爵でもあり、この地を収める辺境伯ともなる。
まぁあくまでの書面上の事で普段は気にする必要もない。
なにせ見捨てられた地だからな、税も免除されておるし。
古狸共も何も言えんだろうよ。
私がこの地の領主になる事で、無暗にこの地で悪さをする者を裁く権利も得た。
つまりは? ニヤリ」
「親父殿、悪人顔になってるぞ・・・」
「気のせいだ」
「なるほど、陛下も考えたなぁ。
あの阿呆みたいなのを勝手に裁いてもいいんだな? ふへへへへ」
「ぶっ、マォ ふへへへへって・・・」
「おかん、その ふへへへへ は止めろよ。おかんが悪者みたいだ」
「あれ?そんな声出てた?・・・」
どうやら2人していい笑顔になっていたようだ。
「細々した事は後々決めるとしてだ。
居住区を整えつつ冬籠りの準備となるので2手に分けようと思う」
「ちなみに冬、と言うか寒さがきつくなるまで後どんくらい?」
「1か月あるかないかくらいか」
「はやっ! んじゃ急がないとだな。
家とか小屋とか作った事ある人はおる?」
「「「「・・・」」」」
「ですよねぇー。どうすっかな。
まぁまずは整地からか」
井戸を中心として東西南北に十字型の道を作ると言うので其々に作業に入った。
私は風を起こして伸び切った雑草を除去していく。
その後をオルガが子供を転がして・・・
は?! 子を転がすんじゃない!と思ったが子は子で喜んでいるようだった。遊び感覚なのだろうか、豪快な遊びだな・・・
マォとダルクは魔法を駆使し獣人達は力でゴリ押しし・・・日暮れ前に道は完成した。
道とはたった半日で完成する代物だっただろうか。
明日は森の中で倒木収集班と狩猟班に分かれるのだが私とダルクは薪拾い。
「ずっと内勤だったから体力が無いだろうし」と言われてしまった。
確かに体力は無い。騎士や獣人と比べられても困るのだがな。
マォは・・・ 別格だと思う。あの年齢であの体力、うらやましい。
「薪集めたら鉈で長さ揃えてね」
鉈?・・・
ダルクと見つめ合う。
「ダルク、扱った事はあるか?」
「ある訳ないでしょう・・・」
だよなぁ・・・
アルノーとリオルに扱い方を教えてもらうも
「うぉぉぉあぶねぇな親父!」
「ダルクもあぶねぇよ!」
どうやら握力が弱いらしく鉈がすっぽ抜けてしまうので扱うのは却下されてしまった。
「これは・・・少し鍛える必要がありますね」
「んむ、このままでは役立たずに・・・」
この日から私とダルクは少しづつ体を鍛える事にしたのだった。
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