自由人ルーク③
「「「 なんだなんだ今の声は! 」」」
飛び起きてみればアルノーとダルクも目を覚ました様だ。
あの奇妙な叫び声を聞いて寝ていられる方が問題ではあるが。
マォ殿とコレット(いい慣れないな)も少し呆気にとられた後
「モモちゃん、なんで此処に?」
『 ホゲッ 』
モモちゃん・・・あぁササミが産んだバジリスクか!
足に手紙・・・なるほど伝言鳥か。
手紙を受け取ったマォ殿がこちらにも見せて来る。
【ケイル手前の町道で崖崩れ有り、迂回されたし】
崖崩れ・・・今の時期に何故。
少々気にはなるがここで悩んでも仕方が無い。
ダルクは早速最短距離の迂回ルートを探し始めた。
「キエルでモファームと合流したら、いっその事山脈越えをするのも手か」
「だかこの時期だと山脈は寒いのではないか?」
「さすがに積雪はまだでしょうが、寒いでしょうねぇ」
どうしたものか。
復旧工事の為にケイルに向かうならキエルを通過する者も出てくる。
キエルに行く事にも要注意となる訳だが、モファームを引き取るのでキエルを通過せずにというのは無理だ。
悩んでいるとコレットが提案をして来た。
「俺が女装・・・じゃない。
キエル手前で私が女性服を着てから偵察にいけばいいんじゃないか?」
今女装と言いそうになったな? コレットお前は元々女性だろう。
もう少し自覚を・・・と言いたくなった。
だが偵察に行くのは良い案だと思う。
「ならば私も変装して一緒にいきましょうか。
親子で旅をしているという設定の方がモファームを連れても
不審に思われないかもしれませんしね」
そう言ってダルクがウィッグを取り出した。
用意がいいな、と言うか何故にウィッグを持ってきた。
「いざとなったらマォ殿にと思い用意していたんですよ」
ああ、なるほどな。黒髪から水色に変えてしまえば印象はガラッと変わるしな。
予定通りキエルまでは進み町中には入らず近くの森で待機する事にした。
「見張りは交代するから皆寝直してくれ」
アルノーに任せてもうひと眠りする事にした。
するとマォ殿がタオルをクルクル丸めて何かしている。
聞けば丸めたタオルの上に足を乗せておくと浮腫みが改善されると言う。
ならばと思い私も同じようにしてみたら、他の皆もやっていた。
どうやら私だけではなく皆も足の浮腫みが出ていたようだ。
心なしか足が軽くなったような気がする。
そして再び眠りについた。
少しして目を覚ましたのでアルノーと見張りを交代した。
少し遅れてダルクも目を覚ました。
2人で今後の事を話しつつ火が消えないように眺める。
「陛下は最後まで唸ってましたよ、俺も行きたいと」(苦笑)
「陛下が城を抜け出すなど、それこそ前代未聞となるだろう」
「そうなんですけどね、あの陛下ですから何かやらかしそうで」
「あー・・・」(トオイメ)
確かにあの陛下なら、何かと言い訳をしながら遊びに押し掛けてきそうではある。
ならばさっさと殿下を育てて押し付けて・・・ゲフンゲフン
「ぶふっ、閣下あれ見て下さいよ」
「ダルク、静かにしろ、皆を起こ・・・ぶぅーっ」
ダルクに言われた方を見て見れば、吹いた。
モモがせっせとタオルから落ちた皆の足を元に戻しているのだ。
なんと甲斐甲斐しい。
「モモ、少しは休んだらどうだ」
手にした焼き菓子を差し出せば、嬉しそうについばんでいる。
ヤバイ、これはこれで可愛いではないか!
食べ終わるとまた、せっせと落ちた足を戻し始める。
(お前は母親かっ!)
と思ったが私も世話になったであろうから何も言えない。
もうすぐ夜が明けるという頃にマォが目を覚ました。
マォ殿の殿は家族になった事だし移動中誰かに聞かれても嫌だから外してくれと言われた。
確かに平民からすれば、様 や 殿 が付いていたら身分が高いと解ってしまうな。
マォにモモがせっせと足を元の位置に戻していたと伝えたら大笑いしていた。
モモはドヤ顔になっている気がする。
そして私達を見つめて何かを訴えて来る。
翼を広げて、顔を隠す? 蹴られた。
違うと・・・ ペシペシと横顔を叩かれる。
「ああ、耳を塞げって事か」
マォが正解したらしく、3人で耳を塞ぐ。
ゴッキョグウグウゴーコォォォォ!
3人共ビクッと尻が浮いた。
なるほど、朝の雄叫びか・・・
出来ればもう少し鳥らしい声で・・・無理か、鳥ではなかったな。残念。
モモの雄叫びで皆も目を覚ましてきた。
身支度を整えて荷を纏めた後簡単に朝食を摂る。
このチーズパンも旨い。リンゴジュースは目の前で作られた。
このアケビという果物らしき物も見た目に反して旨かった。
火が完全に消えているのを確認して出発する。
どうやらモモが先導してくれるらしい。
「閣下、モモは凄いですね。我々が進む方向を理解しているみたいです」
「ササミと違って優秀だな」
「しぃー、それは言ったら駄目なやつですよ」
「む、失敬」
森を進みながらマォはあれこれと木の実を見つけては嬉しそうに収穫している。
しばらく歩き続けると河に出た。
少し休憩を挟んで河上を目指す事になる。
パウンドケーキとオレンジジュースが配られた。
パウンドケーキは数回ほどマォから貰って食べた事がある。
ある程度の保存が効き、入れる具材によってアレンジ出来るので種類も豊富に造れるそうだ。
落ち着いたら色々と作って貰えるだろうと期待している。
読んでいただきありがとうございます。




