宰相ルーク②
あの後政務室に戻って来られた陛下は少々疲れた様子だった。
侍従長が陛下にハーブティを煎れ差し出すと退室していった。
「ルーク、今は我々3人だけだ。久々に素で話そう」
「ならば一応は防音魔法を張っておきますか」
国王であるエルフィンと私は再従兄弟でダルクを加えた3人は年の差はあれど幼馴染とも言える。
今でも時折砕けた、素で語り合う事もあるのだ。
エ「しかしまいったな。あそこまで愚かだとは」
ル「すでに成人済みだからな。今までの様に目を覚ますはず
考えを改めるはずなどと言う甘えは捨てて貰おうか」
エ「解っておる。妃にも散々言われたからな」
王妃殿下は王子達を分け隔てなく平等に厳しく教育してきた。
王側とは貴族とはどうあるべきか自分にも厳しく他人にも厳しい。
が、たまに突拍子もない事を言い始めるし何も無いような場所で躓いたりもするちょっと可愛い方でもある。
ダ「第二王子の事もですけどね、招き人様の処遇をまずは考えないとですよ」
エ「そうだな、なるべく外部に漏れぬように」
ダ「無理ですね、第二王子がわめき散らしたのですでに噂が広まってますよ」
エ「なんだと? ならば招き人殿が落ち着くまではせめて静観するよう通達を」
ダ「それが無難でしょうね、むやみに接触するのも禁じた方がよいでしょうね」
ル「取り込もうとする者が出て来そうだしな。落ち着く事も出来ぬだろうし
良からぬ事に巻き込まれでもしたら招き人が気の毒だ」
ダ「まぁあの招き人殿でしたら多少の事はご自分で対処できそうですが」
エ「確かに。・・・いやいや招き人殿は女性だしな?」
ダ「随分と迫力のあるお声でしたよね」
ル「確かに迫力はあったな。
それよりもだ、まずは招き人殿の衣食住の環境を整えねば」
エ「貴賓室か後宮、もしくは離宮あたりだろうな」
ダ「貴賓室辺りが無難でしょうね。後宮や離宮だと勘繰るやからで出てきますよ」
ル「ああ、確かに。そうなると面倒だ。ひとまず貴賓室と言う事にして
ご本人の希望も聞いてみた方がよかろうな」
エ「確かにそうだな。可能な限りは本人の希望を叶えてやってくれ。
異世界から来たのならばなにもかもが違うだろうからな」
ル「こちらに馴染んでくれればよいのだがな」
ダ「大丈夫じゃないですかね、肝が据わっていそうですし」
エ「ダルク、お前まだ会っても居ないのによく解るな」
ダ「あの状態で取り乱していないのですから肝は据わっているでしょうよ」
「「 確かに 」」
ル「警備や警護については騎士団長と話を詰めておく。
エルフィンは禁書庫の対応を。
今までの警備兵は解雇だな。
重要性を理解できぬ者など他部署でも使えんだろう」
ダ「では指針が決まったところで今日は休みましょう。
一度寝て頭を休めないと煮詰まってしまいますよ。
そうでなくとも我々3人、まともに休みが取れていないのに」
気が付けば外はすっかり日が暮れていた。
エ「いつのまにか日が暮れておるな」
ル「夕食を取り逃したか」
ダ「我々の分は夜食として用意するように申し付けてあります」
エ「え、俺のは?」
ダ「厨房が違いますのでね」
エ「えぇ・・・そこはせめて伝達でも出しておいてくれよ」
ダ「それくらいご自分でなさってください」
エ「ルーク。どういう躾してんだよダルクの俺への扱い酷くないか」
ル「陛下、常に周囲が先手を打って動いてくれる訳ではないのですよ。
だから陛下もまだまだあまちゃんだと・・・」
エ「う・・ぐぅ・・・」
ダ「さぁさぁ喋るのは終わりにして戻りましょう」
ル「ああ、ではまたなエルフィン」
エ「またな」
こうして政務室を後にし官僚専用の食堂へ向かう。
用意されていたのはハムと野菜のサンドウィッチだった。寝る前なのでこのくらいが丁度良い。
疲れた時は甘いものも良いのですよと一口サイズのチーズケーキも添えられていた。
確かに甘い物も欲しかったので気遣いがありがたい。
城下に屋敷を持つ私とダルクではあるが多忙過ぎてあまり戻る事はなく、2人共城の一室を借り受けている。執務室の片隅で寝ていたのだが国王であるエルフィンが体調を崩すとあてがってきたのだ。
洗濯等もやって貰えるのでありがたくはあるが、未だに不慣れで落ち着かない。
(豪華すぎるんだよ!)
そう思いながらもベットに横たわればすぐに瞼は閉じ眠りに就いた。
あれから警備体制の見直しや人員の再編成、招き人殿に付ける護衛や侍女の選定などをおこなって行った。邪な考えを持つ者や古狸の影響下にある侍女や騎士は論外として除外していく。招き人の護衛ともなれば騎士としての腕前もだが度胸と柔軟性も必要となってくる。
そうなってくると、限られた者しか居なくなってくるのでそれはそれで困る。
が、騎士に関しては一人だけ心当たりがある。
陛下と交渉するしかないか。陛下の今日の予定は・・・
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