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自由人ルーク①

「では後は頼んだ」

「はい、兄上。

 上の兄上と姉上から手紙をあずかっております。

 落ち着いてから読んで欲しいとの事です。

 こちらの事はご心配なく。

 のらりくらりと時間を掛けさせていただきますよ」

「んむ、ではな」


弟に引継ぎ挨拶を終え帰路につく。

これで俺は自由の身となる。

(さらばだ阿呆共!)

と叫びたかったが我慢した。


帰宅し出入り口に立っていた護衛に今日はもういいぞと言って追い返す。

もっとも今後ここを警護する事は無いのだが。

中に入ればマォ殿に「お疲れ」と声を掛けられる。

ここ数日は自分の部屋よりもこちらに真っ直ぐ来てしまっている。


手際よくテーブルに料理が並べられ夕食を取り始める。

マォ殿とアルノーが今日の出来事を話して聞かせてくれるのだが


「ぶふぉっ」


吹いてしまったではないか!

なんだそのコントとやらは。

ふむ、喜劇のような物か。


「私もその場で見てみたかったな」

「いやルーク。あれは駄目だ。笑いを堪えるのに腹筋がつるかと」

「えー、そこまでじゃないだろ」

「いやいやおかん。あれ狙ってやってただろ」

「あぁ~?あんだってぇ?オラ耳が遠いだでよぉ」

「「 ぶふぅー! 」」


これからこのような愉快な日々が始まるのかと思うと楽しみだ。

ちょうど食事が終わった頃、ダルクがやって来た。

小振りのリュック1つと荷物は本当に最小限にしたようだ。


「ああそうだ。陛下からの言伝が。

 『もお面倒だからお前等全員家族になっちまえ。

  そうすれば俺とも親族になる訳だから何かと都合がよいし

  文句も言えないだろう。よしこれ決定ね!』

 だそうです。あ、これ戸籍の一覧の写しです。

 って、えええええ。

 私いつのまにマォ殿の養子になってるんですか!」


「「「 ぶっ 」」」


ダルク以外の3人共が吹いた。

何してくれてんだエルフィン。

ダルクもダルクで来る前に確認してこいよ、え?陛下が確認させてくれなかった?

あの野郎確信犯だな、今毎ニヤニヤしているのだろうな・・・


「は?!待って? えぇ。儂ルークといつの間にか夫婦になっとるがな!」

「ぶふぅーっ」

「ちょ、閣下!かかったじゃないですか!」

「す、すまぬ・・・」


戸籍の写しを見たマォ殿の言葉に思い切り茶を吹いた。

思わず私も確認してみれば


「息子が3人に・・・ん? この娘になってるコレットて誰!」


そう、配偶者にマォ殿の名前が載っておりその下にリオル・アルノー・ダルクが養子として載っている。

そこに養女としてコレットの名前が載っているのだが。誰だ・・・

いやその前にだ、私とダルクの年齢差は5だ。いやまてよ?マォ殿との年齢差ならば親子としてもありなのか。いやでも・・・なんだか複雑な気分だ。


「て事はルークが・・・なんて呼べばいいんだ」

「母がおかん、父はおとん。おとんでいいんじゃね?」

「おかんはそれでいいのか、ルークを夫と認めてるが」

「はっ・・・」

「駄目か? 嫌か? と言うよりも陛下も強引だなおい! でコレットて誰!」


「私です」

「「「 は?! 」」」


ガタッと椅子からアルノーが落ちた。

私とダルクは驚きのあまり身動きが取れなくなった。


「コルディ? え?? コルディってコレットなの?女性なの?!」

「コレット・コルディ。これでも女ですよ。隠してましたけどね」


コレットの正体は王城総料理長のコルディだった。

お前知ってたかと目で問えば、ブンブンと首を横に振るダルク。

だよなぁ、私も知らなかった。


「自室に暗部の奴が急に現れて10分で荷物を纏めろ最小限で!て。

 何事かと思ったら陛下の前に連れていかれて

 行き成りマォの子になれ、なんだから腰が抜けるかと思ったぞ」


これはまた随分と説明を略したな陛下も・・・。


「それで、何故に俺・・・コホン。私が連れて来られたんだ」


それも説明してないのか、何してんだ陛下ー!

「詳しくは落ち着いてから話す。手短に言うとだな」

と簡略化して説明した。

んむ、これだと私も陛下の事は言えないな、まぁ要点は伝わったはずだ。

ぶぅぅっ コルディはスープを吹いて咽た。まぁそうなるだろうな。


「理由は解ったし納得もした。したけどもっ!

 そんな大事な事すっ飛ばさないで説明して欲しかったー!!」


もっともな意見である。

そしてコルディから渡された陛下からの手紙にはコルディ側の事情が書かれていた。

なるほど、副料理長がコルディを陥れようとあれこれ画策していたと。

たいして料理の腕もよくないくせに創意工夫というものをしない愚か者。

まぁこれでコルディに危害を加える事は不可能となす訳だが


「コルディは納得しているのか?

 せっかく積み上げて来た功績が」

「あー、まぁそれはもういいんだ。

 マォと一緒の方が絶対楽しいだろ?それに新たな料理も学べる。

 しかも皆なら性別なんぞ気にせずに旨いと言ってくれるだろ?」

「「「 当たり前だろう!! 」」」

「ほらな? これからよろしく頼む」


こうして私の家族が一気に増えた。

書面上とは言え新婚(たぶん新婚でいいはず)なのにすでに6人家族。

嬉しいような残念なような。


と言うか陛下はいつこれを思いついたのか。

先に行ってくれれば指輪の準備が出来たのに!!


そして1時間ほど仮眠を取りそのまま出発する事にした。

人数が増えた為深夜の移動の方が城下を抜けやすいだろうと判断したのだ。

まぁ結局は皆眠れなかったのだがな。

読んで下さりありがとうございます。

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