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宰相ルーク⑪

あの若い阿呆な騎士はそのまま牢へと放り込んだ。

その足でダルクは事務次官へ報告に向かった。

陛下への報告は夜にアルノーとリオルの3人で行う事になっているのでそれまでに報告書をまとめておかなければならない。

獣舎の飼育環境の改善については良いとしても、あの阿呆騎士の事は書くのですら面倒だと思う。

だが書かねばならんのだろうなぁ。

この際だ、ついでに古狸達やアレの一派のリストも書き出してみようか。


書類を纏め始めた所で事務次官が血相を変えて飛び込んで来た。

入室の際のノックはどうした、マナーはどうした・・・

息子の不祥事を聞けばマナーも吹っ飛ぶのかもしれぬがな、私が驚くではないか。

ああ、インクが滲んでしまった。


「事務次官殿、入る際はノックをだな」

「申し訳ありません閣下。ですがその。

 我が愚息が仕出かしたとの事は誠にございますか!

 以前よりそのような思考は止めよと申しておりましたが、あの愚か者めが」

「落ち着きたまえ」


聞けば奥方の選民思考が強く、息子を甘やかし貴族の特権だとかなんだとかぬかしているようで事務次官が何度諫めても聞く耳を持たずらしい。


「奥方の出はどこだったかな」

「タヌークィ男爵家でございます」

「ああ、あの古狸の・・・ごほんっ」

「このさいです、私はもう疲れてウンザリしておりますので

 離縁して息子共々実家に戻らせようかと思っております」

「ふむ、ならばどうだろう。子息の不始末で鉱山送りとなる所を

 離縁と王都への立ち入り禁止で勘弁してやると言えばよかろう。

 息子を溺愛しておれば文句を言うどころか喜んで離縁に応じるのではないかね?」

「鉱山送りでは重たすぎるとゴネませんかね」

「火をつけて招き人を殺そうとした、これは重罪に当たる。

 ゴネるようなら選択肢は与えず極刑と処す。と私に言われたと言えばよかろうよ」

フフフと口角があがってしまった。

決してマォ殿やサブレに危害を加えようとした個人的な怒りが込められているわけでは無いぞ。

可哀そうにサブレ、尻尾に少し火傷を負っていたな。

やはり極刑にすべきか。


「あの、宰相閣下?」

「なんだね事務次官殿」

「いえ、そのお顔が・・・怪しい笑顔になっておられますが」

「ああ、それは失敬。で、どうするかね」

「すんなりと離縁する為にも閣下のお力をお借りしたく」

「承知した。すぐに書簡をしたためる故しばし待たれよ」


罪状と刑罰を書き、至急でと陛下に決裁を仰げば

「随分と優しい刑罰だな」

と言われたので事務次官の事も付け加えて話す。

「ならばその奥方の方にも王都への立ち入り禁止を加えよ」

言われずともそのつもりでしたよと微笑めば陛下もニヤリと笑っていた。

王都への立ち入り禁止、すなわちそれは茶会や夜会など王都で開かれるものにも参加は不可能で事実上の社交からの締め出しである。古狸一派にしてみれば多少のダメージにはなるであろう。

ざまぁみろ、である。


「そろそろ古狸達もどうにかしたいものだな」

「そうですねぇ、どうにかしてマォ殿と接触しようとする輩も未だにおりますしね」


取り敢えずは古狸達の動向を監視しつつ、事務次官の件のように何かにこじつけて少しづつ勢力を削るしか今の所はないのが残念だ。なんせまともな貴族の方が少ないのが現状である、情けない。



翌日、夜の間にマォ殿の身に降りかかった事を聞いて私は激怒した。職権乱用と言われようがその3人を追放しようと考えたのだ。自分でも何故に此処まで怒りが湧いてくるのかは解らぬ。


「閣下、落ち着いて下さいね。

 あのマォ殿ですよ。獣人達の方が返り討ちに会ったらしく猛省しているとの事ですし

 マォ殿自信が気にしていないとおっしゃるのですから」

「そうは言ってもだな。獣人3人に囲まれて恐ろしかったであろうに」

「いえ、逆ですね。獣人達の方が震えていましたよ。

 怒らせてはいけない種だそうですよ・・・」

「ああ、それはなんとなく解るが」


取り敢えず心配ではあるので通信魔道具を渡しておこうと思った。

常に身につけれる物がよいだろう、そうなると指輪か。


「閣下、通信魔道具は名案だと思いますがね。指輪は駄目ですよ」

「む? まだ何も言っておらぬと思うが」

「心の声が駄々洩れになってますよ・・・」

「・・・」


おかしいな、言葉になっていたか。気を付けねばな。

そう言えば、指輪だと夫婦や婚約者同士でとなるな。何故に私は真っ先に指輪を思い浮かべたのやら・・・


「マォ殿はピアスを付けていたはずですからピアスでよろしいのでは?」


なるほど、ピアスなら私も付けていておかしくはないな。よしデザインを考えよう。


「閣下・・・マォ殿は凝った物よりもシンプルなものがお好きかと。

 そして金よりも銀の方がお好きですね」

「・・・」


何故にダルクがマォ殿の好みを把握しておるのだ、解せぬ。

何故だか負けたような気持になったので通信魔道具は市販の物ではなく自分で作る事にした。

銀を加工しながら通信魔方式を練り込みつつ私の魔力を流し込めば完成である。

気が付けば熱中していたせいでダルクが居なくなっていたことに気付かなかった。

と言う事は、今がチャンス! 仕事は既に終わらせてある。

よし、今から届けに行こう。 気に入ってくれればよいのだが。

読んで下さりありがとうございます。

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