2
「透真様、ダンジョンが完成しました。」
「ありがとう、ウンディーネ。」
思ったより早く完成したな。
「家具は新しくダンジョンで生成しましたので、引っ越しと言っても運ぶものはそう多くありません。」
家具まで生成してくれたのか。
ウンディーネは、相変わらず気がきくな。
「そういえば父さんは何してるの?」
「父さんは、今は仕事に行ってるわね。」
「では、先に透真さまと奏紗さまをご案内させていただきます。」
奏紗は、母さんの名前。
父さんの名前は、悠真という。
「あぁ、よろしくな。」
「ウンディーネちゃん、よろしくね!」
一通りダンジョンの中を見ると、ウンディーネに微笑みかけた。
「なぁ・・・、もうちょっと質素なかんじにできなかったのか?」
「精霊の住処、精霊王様の城のようなこの場所が質素など・・・。」
うん、まぁそうなんだけどさ。
ここまで豪華な城にしなくてもよかったんじゃないか?
ダンジョンの階層をどこまでぶち抜けばこんなふうになるんだ・・・?
建っているのは城のみで、周りは森と草原などの自然が広がっている。
綺麗だなぁ・・・、うん。
ウンディーネも頑張ってくれたし、まぁ豪華なぶんには困らない。
「ウンディーネ、よくやったな。」
「はい、お褒めにあずかり光栄です。」
母さんも瞳を輝かせて城を見ている。
よし、これで・・・。
「お前ら、待たせたな。俺の精霊たち、ここに。」
精霊界への扉を開き、俺の配下たちを呼び寄せる。
「お呼びですか?精霊王。」
「わらわ、待ちくたびれたぞ。早く頭をなでるのじゃ!」
「よ、呼びましたか・・・?お久しぶりです。」
今俺に声をかけた3人は、ウンディーネ以外の四大精霊。
サラマンダー、シルフ、ノームでそれぞれ火、風、土を司ってる。
「あぁ、久しぶりだな。シルフは暴れていなかったか?」
十中八九、暴れていたとは思うけど。
こいつ、俺と離れるの嫌いだからな・・・。
見た目幼女で、子どもっぽいところがあるヤツだ。
サラマンダーは怒るとひどいことになるが、普段は気のいいヤツ。
ノームは普段自信なさげな話しかたをしているが、キレるとにこにこしながら相手を削るタイプだ。
まぁ、四大精霊は全員怒るとひどいことになるが。
「ご、ご想像されている通りです・・・。」
うん、わかった。
やっぱりシルフは暴れてたことが。
「サラマンダーとノームは苦労をかけたな。」
いつも、こいつのお守りを押し付けてしまっている気がする。
今度、サラマンダーとノームを労うことにしよう。
「い、いえ。お気になさらず・・・。」
「大丈夫ですよ。精霊王・・・、ではなく透真様。」
そう言ってはいるが、苦労をかけたのは変わりない。
少し申し訳ないな・・・。
「それで、シルフ?」
「な、なんじゃ?透真様がわらわのことを構わないのが悪いんじゃぞ!」
こいつ、反省してないな。
何度言ったら、シルフは俺から離れても暴れなくなるのか・・・?
常に傍にいられるのも、気が散りそうなんだよな。
大人しくしろと言って大人しくなるようなヤツじゃない。
「シルフ、暴れるなと言っただろ?」
「だって、透真様が・・・。」
「だってじゃない。サラマンダーとシルフに謝るんだ。」
「わ、わかったのじゃ。」
「俺らは別に良かったんですよ?」
「いや、こうでもしないとこいつは反省しないだろ。」
事実、こいつはいつも俺から離れると暴れる。
せめてきちんと謝らせないと、永遠に繰り返しそうだ。
「サラマンダー、シルフ!」
「なんだ?」
「わ、わらわが悪かったのじゃ!」
「シルフ、ごめんなさいは?」
大事なところ、忘れてるぞ。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「ん、がんばったな。」
ご褒美にシルフの頭をなでてやった。
「えへへ・・・。」
これでシルフはいいとして・・・。
「ウンディーネ、どうした?」
「透真様はわかっていると思いますが・・・。S級ダンジョン、英知の遺跡の崩壊が近づいております。」
うん、知ってた。
でも、なんで引っ越しした直後に面倒事があるんだよ!