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「この世界も戦争ばっかりで精霊の森も迷惑かかってるし、この世界には見切りをつけようか。」
突然だけど、前から考えてはいたんだよな。
もっと平和な世界がいいよね。
これを思いついてからの行動は早かった。
配下の精霊たちを全員精霊界に返して、また呼ぶからと伝えてから俺は異世界・・・地球に転生した。
それで、今に至るというわけだ。
今俺は生後半年といったところか。
俺は、この世界で夜桜透真として生まれた。
生後半年だが、もうしゃべることもできる。
というか、成長を速めて見た目5歳くらいになってるが・・・。
普通の両親だったら気味悪がられそうだが、この両親は超がつくほどの親バカだった。
この異常さをうちの子天才という言葉だけで解決してしまうのだから・・・。
さすが俺の両親といったところか。
なんにせよ、俺のことを受け入れてくれるような両親で良かった。
そういえば、精霊たち解放するの忘れてたなぁ。
でも、さすがに家に開放するのもどうなんだろう。
精霊が多すぎて入りきらないんだよな。
だからといっていつまでも解放しないっていうのも・・・。
ダメだ、あいつらにグチグチ言われる未来しか見えない。
だからといって、遠くだと俺が見守ることができないし。
こんなんでも一応精霊王だからな。
精霊の住処をつくりたいけど、人間も入れないようにしないといけないし・・・。
いっそのこと、ダンジョンでも創造しようかな。
そしたら精霊以外入れないように設定できるし。
それで俺も引っ越すと完璧なんだが、問題は両親だな。
あの心配症の両親、俺が生後半年で一人暮らしなんて止めるに決まってる。
とりあえず、母さんたちに聞いてみるかな。
「母さん。提案なんだけど、引っ越してもいい?」
「あら、どこに引っ越したいの?」
「ダンジョン創造するから、そこに引っ越したい。」
「いいわよ!」
そ、そんなあっさり?
もっとこう、悩むとかあると思うんだけど。
「ただし、母さんたちも一緒に引っ越すわ。父さんは私がなんとかするからね。」
「わかった。ありがとう、母さん。」
父さんを説得してくれるのはありがたい。
両親も一緒に引っ越してくれるのは、案外うれしいものなんだな。
前世、俺には親なんていなかったから新鮮な気持ちだ。
それで、引っ越すダンジョンはどこにつくろうか。
もういっそのこと、今の家を壊してここに建てちゃおうか。
「母さん、どこにダンジョン建てたらいいと思う?」
「広い場所がほしいの?」
「いや、広いと目立ちそうだか場所は狭くてもいいよ。」
空間魔法でなんとかなるし。
精霊の住処だし、あんまり目立つのはよくないだろうから。
前世でも精霊を捕まえようとするようなヤツがいたから、警戒しておくのに越したことはない。
この世界の人間と契約するのは止めるつもりはないけど、どこにでも悪いヤツはいるからな。
なにかあったら俺が動かないといけないから、精霊たちには頑張って問題事が起きないようにしてもらわないと。
「今の家はそのままにしておいて、どこかのドアをダンジョンに繋げるとか、どうかしら?」
その考えはなかったな。
それなら、一見ただの家に見えるしいいかもしれない。
とりあえず、《《あいつ》》を呼ぼうかな。
「ウンディーネ、来い。」
こいつは、最上位の水の精霊。
俺の秘書みたいなかんじのやつだ。
こいつは有能で、俺のことを一番よく理解している。
「お呼びですか?精霊王。」
「ダンジョンを亜空間に創造して、俺の部屋に繋げてほしい。」
「承りました。」
「それと、俺は精霊王のままだが名前がある。これからは透真でいい。」
「はい、透真様。」
あとは、ウンディーネがダンジョン創造が終わるのを待つだけだな。
あいつらは、元気だろうか?
といっても、まだ半年しかたっていないが。
一人大暴れしてそうなヤツを頭に思い浮かべて、俺はウンディーネを見送った。