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第18話:みんな不安定

『浮気じゃないの、遊びだったの!』

『もう許して! ちゃんと謝りたいの!』

『会って謝りたいの!』

『ごめんなさい!』

『好きなのはあなただけ! 心はずっとあなただけだったの!』


 嫁のメールが再び謝罪になっている。そう、先日マコトは嫁のクレジットカードを停止させたのだ。正確に言うと、俺のクレカの家族カード。


 家族カードなので、俺もその利用履歴がリアルタイムで見られる。マコトに言われて明細を見たら、隣町のスーパーで使ってた。まだ、カードを止める前の最後の履歴な。


 スマホの現在位置の情報とも合致している。


「こりゃ、またやってんなぁ」


 また俺のマンションにマコトが来ていた。俺と一緒にパソコンの画面を見ている。自分の会社はどうした!? いいのか!? こんなとこで油売ってて。


「こんな短期間に次を見つけるとかあります!? 元々2本立てだったのでは!?」


 なぜか、咲季ちゃんも俺のマンションに入り浸っている。彼女にとっては実姉なのに容赦ないな。やっぱり、昔彼氏というか、家のレストランに来た男子をかっさらわれて面白くなかったのかもしれない。


「うーん、そこに内容証明を送っても……。そこにいるのが浮気相手とは限らないし……」


 そもそも浮気男からは慰謝料を一括で既にいただいた。後はあちらの家庭が壊れようが、会社(病院)をクビになろうが俺はしったこっちゃない。


 それよりも、このアホ嫁を徹底的に潰す必要がある。弱気発言のメールが来てたから、もう観念したのだと思っていた。


 ところが、俺の召喚で弁護士事務所に呼ばれたのをこれ幸いと軟禁状態だった実家を飛び出し、浮気男2号(?)の家に身を隠しているようなのだ。


「俺、行って写真撮ってくるわ」

「あ、じゃあ、私も!」


 マコトは頼まなくてもまた調査に行こうとしてくれていた。なぜか、咲季ちゃんも同行しようとしてた。


「なんだよ、お前は関係ないだろ!」

「私はまだ、哲也さんの義理の妹ですーーー。あなたこそ、赤の他人じゃないですか」


 なんだ、こいつら仲がいいのか、悪いのか……。


 俺も行きたい気持ちはあるけれど、とにかく体が重い。心も重い。ソファから起き上がる気がまるてしない。


「じゃあ、私が哲也さんのお世話をしてるので、奴隷は調査とやらに行って来てください」

「誰が奴隷だ!」

「じゃあ、ホモ? ゲイ? うちの義兄を変な方向に導かないですがさーい!」

「なんだとこら!」


 もうね、あれ。トムとジェリー。仲良くケンカしな。


 正直、俺は動けない。多分、身体は動かせば動くんだろう。でも、めんどい。身体が重たい。近所のスーパーに行くのも面倒だった。缶ビールがなくなっているけど、買いに行くことはない。


 そういった意味では、このところマコトと咲季ちゃんが買い物をしてきてくれるからすごく助かっている。「ビール」って言ったらその日のうちに冷蔵庫の中にビールが入っている。ネットスーパーより迅速だ。


「ふん、素人は待ってろ」


 そう言うと、マコトは1人俺の嫁の調査に出てくれた。俺はというと、ソファでダラダラ。咲季ちゃんが持ってきてくれた缶ビールを飲んで、prime動画を見てた。どうでも良いけど、見始めたら見ちゃう程度のやつ。いつ見るのを止めてもあんまり困らない動画。例えば、「バックトゥザフューチャー2」くらいの温度のもの。


「哲也さん、お姉ちゃんとはどうするんですか?」


 咲季ちゃんもリビングに寝転んで一緒にprime動画を見てるときにふいに訊かれた。


「もちろん、別れるよ」


 そこまでは迷いなく答えた。


「……気になる? 実の姉だし」

「いーえ、あの姉は一回死ぬ思いした方がいいと思ってます。親に迷惑かけて、私にも迷惑かけて、周囲に迷惑かけて、哲也さんにまで……。ホントに……」


 語りつくせないなにかがあったんだろう。


「お姉ちゃんと別れたら……私とは『他人』になってしまうんですね」


 一度は親戚になったんだ。無理に「他人」にまでなる必要はないかもしれないが、関係を訊かれると「他人」しかないだろう。いいとこ「元親戚」くらいだ。


 この咲季ちゃんは本当になにをしたいのか……。目的が分からない。少し前は冗談だとは思うけれど、プロポーズされてしまったし……。


 最近は俺がへたばってるところを病院に連れて行ってくれたり、甲斐甲斐しく身の回りのことをしてくれたり……。既婚者の俺の家に入り浸って俺を陥れようとしているなら、なにかしら仕掛けてくるはず。


 彼女は毎日夕方になったら帰っていく。俺の夕飯を作った後に。


 もう訳が分からない。もう、なんでもいい。陥れるなら陥れろってんだ。もう、俺には何もないんだから、怖いものなんてない。


 もうぐったりして、全てに無気力、全てがどうでもいい俺にカツを入れるような報告が届いたのは1週間後だった。


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