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第16話:嫁に連絡させる方法

 嫁の浮気の証拠は押さえた。嫁にも浮気男にもその証拠を突きつける準備もできた。浮気男が警察に逮捕されヤツがうちに来ていたことも第三者による証明までできた。


 俺の希望はこうだ。まずは嫁との離婚。嫁には慰謝料を300万円を請求する。財産分与は嫁の使い込んだ分の半分が俺のもの。嫁分は全部貯金に回っていたら1000万円くらいあるはずなのだ。ところが、通帳を見ると残金はほぼゼロ。つまり、財産分与で500万円程度もらう。子供はいないので養育費の支払いはなし。差し引き、800万円もらう計算。


 浮気男にも慰謝料を500万円請求する。俺のマンションに勝手に入り込んで好き勝手やってくれて、俺はもうあそこには住めないのでマンションの買取りを要求する。その額3850万円。今の査定でもっと上がってるかもな。どちらにしても額が高い方。当然、そのマンションは渡す。嫁と一緒に住むなら住めばいい。勝手にしろ。あとは知らん。


 この要求が飲めないなら、ヤツの奥さんにも浮気の事実を伝えるし、仕事先にも伝える。なんなら近所にもふれ回る。引っ越しても、転職しても、その先で同じことをしてやる。社会的に抹殺してやるのだ。


 義実家には仕送り停止。今まで払ったもんはもういらん。嫁は製造者に返品。決別こそが最大の復讐となるだろう。


 ○●○


 浮気男はかなり簡単だった。弁護士事務所に呼ばれて不貞腐れて登場した浮気男だったが、嫁の勤める病院の医療機器の技師だった。


 日勤のみで、土日休み。恵まれた環境のくせに余裕を浮気に向けていたらしい。


 うちへの不法侵入は俺が改めて民事で訴訟する可能性を知らせるといきなりトーンダウン。浮気のことを奥さんや会社に伝えることを言うと全面降伏だった。


 マンションを買取れと言う件だけ言うと逆上したが、弁護士がその理由を述べると黙った。そりゃあ、俺のマンションでうちの嫁を縛ってSMプレイしてたんだ。


 うちの嫁に精液なら尿やら飲ませていたんだ。まぐわったり、叩いたり、吊るしたり……。そんなとこで俺が住めるわけないというのも理解できたのだろう。


 画像や動画はふんだんに証拠として残っていたし、あんなものが世の中に出てしまえば普通に人生終わる。


 マンション買取りの件も条件を飲ませた。


 請求額の総額が4000万円を超えることから即金一括は無理とのことで、1週間以内に500万円、住宅ローン申請の後、残りの3500万円ほどを支払う話で落ち着いた。


 まあ、全部支払ってもらった後で近所で変な噂がたったとしても、それは俺の責任じゃない。勤務先の病院内で変な噂が広まっても、そんなのは俺は知らない。そんなこんなで、こいつにはもう用はない。さっさと帰した。


 義両親は呼んでない。先日の話し合いと現場確認で十分な罰を受けたと思う。


 問題は嫁だった。来ない! 弁護士が電話をしても出ない!


 あんなに復縁を迫るメールを送っていていたし、観念したように思えたのに完全に予想外だった。


「義理のご両親に電話をかけたら、ご自宅にいるか分かるのでは?」

「なるほど、たしかに!」


 弁護士さんの提案で義実家に電話をかけた。


『あ、哲也さん? どうしたんですか?』


 電話に出たのは咲季ちゃんだった。嫌な予感がプンプンする。


「早弥香は何時ごろそっちを出たかな?」

『お姉ちゃんですか? 午前中……10時には出たはずですよ? たしか午後からでしたよね? もしかして、まだ来てないんですか?』

「そのまさかなんだ……」


 咲季ちゃんは思い当たるところを探してくれるとのこと。


 俺が一番に思いついたのは自宅だった。カギは替えているけど、ベランダによじ登るなどして、ガラスを割って入るかもしれない。


 念のため、通帳などは別の場所に移してはいるがガラスの修理代だけで既に払いたくない。


「30分待って、それでも着かない場合は日を改めますか……」


 弁護士さんを待たせると費用も高くなる。それが妥当だろう。


 離婚届の俺の欄には記入済み。後は、嫁の欄を書かせたら役所に出して離婚成立って段階だ。そんな中、本人がいないのではハンコがない!


 結果、今日の離婚は成立しなかった。弁護士さんからは嫁の所在を確認するように言われた。


 家に帰ったが、家は無事でガラスも割れてないし、玄関もピッキングとかで開けられてはいないと思う。こんなことまで気にしないといけないとか、心が病みそうだ。


「お姉ちゃんが疾走したって本当ですか!?」


 昼間の電話を聞きつけてか、咲季ちゃんがマンションまで駆けつけてくれた。


「知ってる友達とか連絡してみたんですけど、ダメでした」

「そっか、ありがと」


 一足遅れてマコトも来てくれた。


「あいついなくなったのか。発信機でも付けとけばよかったな」


 冗談じゃなくて、本気みたいだ。


「そもそもあいつは誰のスマホを持ってるんだ?」

「あれはお母さんのです」


 マコトが誰となく訊いた。まあ、俺が知るはずもないので、咲季ちゃんに訊いたんだろうけど。


 咲季ちゃんはなんの躊躇いもなく答えた。マコトなら情報さえ揃えば嫁を見つけ出してしまいそうだ。


「Googleとか、Appleのアカウント分かんないのか?」

「あ! 分かります! お母さんのスマホは私が設定しました!」


 マコトがうちのパソコンを立ち上げて、どこかのサイトにアクセスしている。嫁の居場所を教えてくれるサイトなんてないだろうに。嫁は有名人でもなんでもないのだから。


「見つけた!」

「マジか!?」 


 パソコンの画面には地図が表示されており、中心にマークがある。


「スマホの紛失したときのサーチ機能を使った。あいつが持ってるスマホは今ここにある。心当たりはないか?」


 浮気男の家の住所は調べがついていた。、ヤツは同じ町内。近場で浮気してたのが余計に頭にきていた。つまり、この地図の場所はあの浮気男の家ではない。


 じゃあ、どこなんだ!? 誰と一緒だっていうんだ。


 俺が立ち上がってその場所に行こうとしたら、マコトが止めた。


「止めるな! 今日、サインを取って、今日離婚するんだ!」

「いや、待て。次、逃したら探す宛がなくなる。それよりもヤツから連絡させよう」


 そんなことができるなら苦労はしない。嫁は逃げてるんだから。


「ジュウ、クレカ出せ」

「クレカ?」


 なにか新しいサービスに契約するのだろうか? どんなサービスなら逃げてる人間が自ら連絡してくるというのか。


 ○●○


「よし、これで向こうから連絡してくるぞ。俺は仕事があるから帰るな!」

「え? あ? ああ……。サンキュ」


 マコトがそそくさと帰っていった。


「本当でしょうか?」

「まあ、マコトが言うなら間違いない」


 パソコンの画面ではクレジットカードのユーザー画面が表示されている。


「じゃあ、それまで待ちますか。コーヒーでも淹れましょうか?」

「え? あ、はい。準備しようかな」

「あ、私やります。コーヒーの場所とか分かりやすかったので」


 俺がお茶を準備しようと思ったら、咲季ちゃんが動いてくれた。一応、病み上がりだから気を使ってくれているのだろうか。


 コーヒーメーカーがゴポゴポとコーヒー豆にお湯を注いているとき、咲季ちゃんはこっちを見てニコニコしていた。


「夜は病院に戻るんですか? それとももう退院しました?」

「明日退院なんだ。でも、今日は病院に戻らないと……」


 俺はリビングのテーブルの席についてる。とても変な感じだ。


「そうなんですね。おめでとうございます。お姉ちゃんがご迷惑おかけしてすいません」


 ペコリと彼女が頭を下げた。


「いやいや、咲季ちゃんが悪いわけじゃないし。頭を上げてよ」

「優しいんですね。そういうところかな? お姉ちゃんが執着してるところ……」

「ははは……」


 なんとも返しにくい質問。俺は愛想笑いで返した。


 その時だった。俺のスマホが鳴った。嫁からだ。


「もしもし」

「もう! クレジットカード止めたでしょ! なんでこんな子供みたいな嫌がらせをするの! サイテー!」


 これは会話などではない。一方的に罵倒されて電話が切れた。


「切れたんだけど……」

「あー、なるほど」


 咲季ちゃんは理解したみたいだった。


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