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第1話:俺の話を聞いてくれ!

とりあえず、書き始めました。

1時間おきに更新します。

 ちょっと聞いてくれ! 嫁が絶対に浮気してる。


 スマホを常に手放さない。服もメイクも派手になった気がする。帰ってこない日もある。しかも、もう半年もレスだ。これはもう絶対浮気だろ!


 ***


 居酒屋のテーブルに突っ伏してグダグダと話している俺の話を聞いてくれるのは、もう15年来の親友だ。


 俺は重黒木哲也じゅうくろぎてつや、28歳。珍しい名前だし、呼びにくいから相棒は俺のことを「ジュウ」って呼ぶ。高卒だけど、今は不動産会社で立派に働いてる俺。嫁一人、子なし。親父が早くに死んだから、俺は早くに働きに出た。だから、一生懸命働いた。年収は300万くらい。高卒にしては頑張ってる方だと思う。2年前にマンションも買った。3630万円。子どもが生まれることも考えて3LDK。35年ローンだけど。35年後って俺いくつだ!?


「早弥香さん美人だからなぁ……」

「それは否定せん。ビッキビキにかわいい」


 俺の発言に少し呆れ気味にマコトが訊いた。


「でも、まだ結婚して3年だろ?」


 目の前の相棒は菅谷内誠すがやちまこと、同じく28歳。俺が「ジュウ」なら、こいつは「マコト」。こいつは大卒。頭がいい。要領もいい。高校の時は俺も成績勝負をしてたけど、全然勝てなかった。しかも、その勝負は俺が途中で抜けたし。とにかく、すげえやつ。なんか、大企業のコンサルとかって難しい仕事をしてる。かなり金持ち。レクサスに乗ってるし。レクサスのクーペ。270キロ出るヤツ。うちの軽なんて最高時速でも130キロだし、100キロも出したらエンジンうるさいよ。


 そんなマコトは本当に良いやつだ。「誠」って字は「誠実」の「誠」だろ。中学で同じクラスになって、ずっと一緒だった。俺が高校辞めて働きに出てもずっと友達だった。「定時制高校に行けば?」って提案してくれたのもこいつ。高卒の資格がなかったら、俺はもっとどん底だっただろう。


「なんか思い当たる節はあるのか? 問い詰めて勘違いだった……とかなったら、目も当てられんぞ?」

「ある! 兆候はある!」


 問題は、嫁。俺の嫁だ。重黒木早弥香さやか同じ年だけどまだ27歳。結婚3年目で看護師をしてる。こいつが美人。すごく美人。顔は、紅白でも司会をしたナントカ美波って女優に似てる。妹も若い時の広瀬すずみたいな顔だし、お義母さんも石田ゆり子みたいな美人だし、美人の家系なんだろうな。嫁はスタイルもいい。モデルみたいなスタイルなんだ。だから、街を歩いてても振り返るヤツがいるほど。現実にそんなヤツがいるなんて俺は思いもしなかったほどだ。


 どこに行ってもちやほやされている嫁がすごいと思ってた。美人だし、献身的だし、料理も上手で結婚前はデートのときも弁当を作って来てくれていた。こんな女と結婚できたら幸せだろうと思ったんだ。


 でも、そんなのは幻想だった。いざ結婚したら、料理は作らない。掃除はしない。金遣いは荒い。マンションに住みたいって言うから俺のナケナシの貯金をはたいてマンションの頭金にしたっていうのに! 俺のお気に入りのソファでごろごろしてテレビを観てる。看護師は忙しいとか、大変だとか、なんとか……。それは否定しないけど、俺も働いているんだから、家事は分担してもいいんじゃないだろうか。


 ちなみに、家の返済……家賃みたいな扱いのお金と食費、光熱費なんかは俺の通帳から引き落とされる。固定資産税も俺の口座から。そして、嫁の給料は貯蓄にまわして繰り上げ返済するってのが当初話し合って決めたこと。


 嫁の収入の方が多いんだ。詳しく聞いたことはないけど、多分年収が450万とか500万くらい。俺の給料でやりくりできたら、収入の多い嫁の方で早くカネが貯まるだろうって考えだ。


 この嫁が半年以上レスだ。スマホを1秒も手放さなくて、ソファで横になってるときは胸の上、ベッドでは枕の下に置いている。風呂やトイレにも持って行っている徹底ぶり。全く確認することができん。どこかからちょくちょくメッセージが来ているみたいでそれに返信してる。


 俺はそのことをマコトに真剣に伝えてみた。


「一般的には、浮気のサインとして、スマホを手放さない。ダイエットを始めた、メイクが変わった。レスになった。そのくせ下着は派手になった……なんてのがあるな」


 マコトが生ビールを煽った後に言った。

 こいつは何でも知っている。やっぱりすごい。


「全部当てはまるわ! お前は優秀だな」

「まあまあ。普通だよ」


 いつものマコトの謙遜はスルーして俺は詳しく説明した。


「この前タンスから嫁の派手な下着見つけた。ワインレッドのスケスケのヤツ。あんなの見たことない」

「その他に、新しい飲食店に詳しくなったり、普段車で通らない道を通ってみたり、食べ物の好みが変わって来るってのもありえるな」


 すげえ。これも当たってると思う。嫁は最近有機栽培の野菜とかってのを通販で買ってた。ああいう野菜はスーパーの野菜より高いのではないだろうか。



 この話は、俺はマコトの知恵と知識を借りて、この嫁、早弥香の浮気を暴き、徹底的に追い詰めてざまぁしてやる話だ。ただ、「現実は小説よりも奇なり」とかって言うな。すげえ「現実」が待ち構えてやがった。

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