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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

人生の半分

作者: 阿須斗路

某ショートショート作家に多大な影響を受けています。

「えっ、あの店の牛すじ、食べたことないんですか」

「うん、ないな」

「あの味を知らないのは、人生の半分を損していますよ」

「人生の半分、ねえ…」

私は不満気につぶやいた。


私は、人生経験が少ないのを自覚している。

ふつう、人間というのは、若い頃には色々な事柄に挑戦するが、老いとともにその気概を失っていく。ただ私は、若い頃に、すでにその気概がなかった。ゆえに、経験値が少ない。それを自覚しているのだ。

だが、それが原因で困ったこともない。現に、大学を出て、就職し、ある程度の地位につけている。給料も多い。いや、多くはないのかもしれないが、贅沢というのをしてみようと思わないため、必然的に余るのだ。そういう意味で、人生経験が少ないのも、悪くはないと思ってすらいる。

「じゃあ今度、牛すじを食べに行きましょう」

「ああ、そうしよう」

口ではそう言うものの、私はあまり乗り気ではなかった。冒険する必要はない。現状にじゅうぶん満足していると思った。


宴もたけなわとなり、帰路についた。

会社から近い行きつけの飲み屋から帰るのも、もう何度目かわからない。

少し食べ過ぎてしまい、お腹のあたりがきつい。腹ごなしに散歩でもしようかと、最寄駅からは、少し遠回りして帰ることにした。

その時、ある店が目に止まった。

日付が変わろうかと言う頃なのに、まだ明かりがついていて、間口も空いている。ただ、看板がなく、外見も周りの民家と同じようなので、何を売っているかはわからない。

なぜ店だと思ったのかは、私自身もよくわからなかった。

私は、何かに惹かれるように、その店に入った。

「すみません」

「はい」

「ここは、何を売っている店なのでしょうか」

店主と思しき人物は、少し間を置いて口を開く。

「ここでは、人生を売っています」

「人生?」

「はい」

早速だが、胡散臭い店だと思った。おおかた、あれやこれやと宗教に勧誘したり、もっともらしいことを言って信じさせる占いであったり、そういう類の店だろう。実際、内装も長机と椅子が2つあるだけで、話し合うことしかできなさそうなものだった。

どちらであっても、理由をつけ、断って帰ってしまおう。そう考え、私はこう言った。

「では、人生を注文すると、何が出てくるんですか」

「今は、牛すじです」

「おひとついかがでしょうか」

牛すじ…もしかして、飲み屋で後輩の言っていた店はここなのだろうか。

「お値段は?」

「いりません」

「それはなぜです」

「失くしたものを届けてくれた人に、お金を払う義務はないからです」

私はよく理解できなかったが、無料であればと一つ頼むことにした。いっぱいのはずのお腹が、なぜか空いているように感じたからだ。

「では一つお願いします」

「かしこまりました」

店主と思しき男は、長机の下に手をやった。すると、どこからともなく牛すじが現れ、それを丁寧に机の上に置いた。

「牛すじでございます」

「いただきます」

そこで、私ははたと気がつき、こう言った。

「うん、とてもおいしい。確かにおいしいが、これが、私の人生の半分というわけですか」

「いえ、正確には、貴方様の人生の半分の、また半分の、そのまた半分の、さらにその半分の、またさらにその半分、つまり、三十二分の一でございます」

「つまり、あと四回、人生を売ってくださるんですか」

「左様です」

「なるほど」

「では、あと四回分の注文をさせてください」

「かしこまりました」

二回目の注文では、ジンギスカン。三回目は、ファアグラ。四回目は、高級そうなステーキがでてきた。

お腹がいっぱいどころか、今まで飢えていたような感覚に陥り、いくらでも食べられそうだった。

そこまで食べ終えたところで、店主が口を開いた。

「お客様、申し訳ありません。五回目の注文ですが、今はお出しできないのです。一日ほど置いてからまたお越しいただけないでしょうか」

「はあ、わかりました」

今まで料理をぽんぽんと出してきたくせに注文に答えられないというのは違和感があったが、○○は了承せざるを得なかった。

「ありがとうございました」

店のドアを閉め、男は再び帰路に着いた。

その帰路で男は、車に撥ねられた。


一時は命が危険な状態だったものの、医師たちの救護により一命を取り留めた。だが傷は深く、社会復帰には時間がかかりそうだった。

しかし男は、損したなどとは思っていなかった。死を実感したことで、こう考えるようになったのだ。

生きているだけで、人生丸儲けだ、と。

衝動に突き動かされて書いたので後半がクソ雑です。

お目汚し失礼いたしました。

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