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犠牲を経てのご褒美

フランスに戻ってデータを解析すると、サマエルの今までの悪行が連なっていた。

「これは…」

蓮君には刺激が強いものだったかもしれない。

「蓮、大丈夫か?」

イーサンが気を使ってそっと肩に手を当てる。

「大丈夫です」

「そうか」

「はい」

「蓮君、このデータでなにか違和感があるデータとかないか?」

「違和感ですか?」

「うん、確かに自爆した犯人の裏に神鹿狼奈がいるのはずなんだ。だから何か仕掛けてると思うんだけど」

「そうですね、ちょっと待ってください」

それから蓮君はパソコンをカタカタして、俺には分からない数字や英語の羅列が表示されていた。

「あ」

「どうした?」

「この写真だけ何も関係ないんと思うんですけど」

「どれ?」

パソコンには一枚の画像が映し出しているのは、フランスの都市部の交差点の画像だった。

「これって此処からそう遠くないね」

「そうですね、でもなんでこの写真を?」

何も意味がないことをするわけがない、そんな人間だと言うことをサマエル関連の事件を追っていると分かる。

そんなことを考えてると俺の携帯に電話がかかって来た。

でも、非通知なので誰かは分からないが誰かは直ぐに分かった。

「電話?」

「はい」

俺は電話を出た。

『もしもし?』

『誰か分かるかしら?』

『神鹿狼奈だろ?』

そう言うとSOの皆は顔面蒼白になっていた。

『それで、何の用だ?』

『そっちでは丁度交差点の画像があると思うんだけどどう?』

『見たぞ、此処に何があるんだ?』

『さあ?』

『馬鹿にしてるのか?』

『いえ、でも此処に爆弾を仕掛けたわ』

『は?』

『これが爆発したらどうなるかね?』

『ふざけんな!!』

『良いでしょ、これは命を懸けたゲームよ。勿論ゲームだから止められたらご褒美があるわよ』

そうして電話が切れた。

「なんだって?」

「交差点に爆弾を仕掛けたって」

「え?」

「直ぐに行こう」

「了解」


それから俺達は交差点まで行き、直ぐにインターポールと地元警察が連携して場所を封じた。

夜の街にサイレンが響いていた。

通りの向こう、ガラス張りの高層ビル群が橙色の警告灯に照らされている。

河上は耳元のイヤホンを軽く押さえた。

「……聞こえるか。沙雪さん、蓮、イーサン、配置についた」

『了解。蓮君は交通カメラにアクセス完了。交差点付近の信号系統を掌握した』

『こっちも爆弾反応なし。京野が現地警察を足止めしてる』

河上の視線がビルの隙間を走る。

――この辺りだ。狼奈が言っていた「交差点」はここだ。

その瞬間、ポケットのスマホが震えた。

液晶には“非通知”。

通話ボタンを押すと、あの柔らかく歪んだ声が響いた。

『こんにちは、河上。もう始まってるよ。ねぇ、ゲームは好き?』

『……お前の遊びに付き合うつもりはない』

『でも付き合わないと、誰かが死ぬよ。

 この街に“六つ”の爆弾を仕掛けた。

 すべて止められたらご褒美をあげる。ヒントは――“光”。』

通話が切れた瞬間、蓮の声が入る。

『河上さん! 赤外線反応がいくつかある! 爆弾の信号だ!』

俺は深呼吸し、瞳を閉じる。

次の瞬間、世界が変わる。

暗闇の中に浮かぶ“色”。

空気の流れ、電磁波、そして生命の残滓までもが、視覚化されていく。

「……見える。光の反射に、違和感がある……屋上、ビルの陰、二階の看板裏……六つだ。」

彼の声に即座に沙雪が動く。

『了解! イーサン、北側の屋上行って! 蓮、制御信号の追跡お願い!』

チームが散開する。

河上は息を荒げながら、残りの二つの爆弾を解除していった。

配線の順序を読み取り、汗を拭う暇もなく次の現場へと駆ける。

三つ目、四つ目……

五つ目の信管を切ったとき、視界が一瞬ぐらついた。

脳の奥が焼けつくように痛む。

――“目”の使いすぎだ。

だが止まるわけにはいかない。

最後の爆弾を見つけたのは交差点中央の地下、下水管の中だった。

河上は泥に膝をつき、配線に触れる。

「……あと、三十秒か」

手が震える。

だがその震えよりも、心の奥の“静けさ”の方が強かった。

「止まれ……止まれ……」

最後のコードを抜いた瞬間、タイマーが止まった。

同時に、河上のスマホが震え、ディスプレイに見慣れないデータコードが浮かび上がる。

「データ……?」

『河上さん! それ、すぐに送って! 解析してみる!』

俺はふらつく手で転送ボタンを押した。

次の瞬間、蓮の驚愕した声がイヤホンから響いた。

『……これ、サマエルの幹部たちの集会データだ! 場所は……旧地下鉄線の跡地!』

沙雪さんが叫ぶ。

『全員、そこに集合! 今夜で終わらせる!』

――そして数時間後。

廃線になった地下鉄構内。

黒いコートの集団が集まっていた。サマエルの幹部たち。

そこへSOが突入する。

閃光弾が炸裂し、銃声が反響する。

イーサンが先陣を切り、沙雪さんが援護。

蓮君は後方で通信を解析しながら、幹部たちの逃走経路を封じていく。

俺は倒れかけながらも、最後のひとりに銃を向けた。

「……これで、終わりだ」

幹部の胸に銃弾が突き刺さると同時に、

奥の壁の巨大なスクリーンがノイズを走らせ、狼奈の影が映し出された。

「おめでとう、河上。

 ご褒美は……“真実”の始まりだよ。」

その瞬間、背後で爆発音が響く。

河上が振り返るより早く、白い閃光が視界を奪った。

――そして、世界が途切れた。


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