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アルバイト

「天城蓮です、よろしくお願いします」

「うん、よろしく。私は沢渡 沙雪、沙雪って呼んでね」

「俺はイーサン・グレイ、イーサンでいいぞ」

「俺は挨拶はいらないよな」

「そんなこと言わない、今日は再始動の日なんだからさ。ほら」

「河上心太だ」

そして…

「俺は京野一だ、よろしく」

「はい、よろしく~。これでやっと正規メンバーになったね」

「そうですね」

「それで京野さんはどうしてSOに?」

ごもっともな意見だった。

「俺も詳しくは知らん」

「なんで日本の警察がこんなところに班長は知ってるのか?」

「俺も知らない、でも多分此処にいる人間は一番神鹿狼奈を躍起になって追ってる、モーガンはサマエルだけじゃなくてもっと色んな事件を抱えている人に加わってほしいと思っているんじゃない?」

「なるほど」

「でみも俺じゃなくてもいいだろ」

「此処はイーサンさん以外日本人だから気を使ったとか?」

「なるほどな」

実際蓮君の件もあって京野さんが来てくれるのはありがたかった。

まあモーガンがそんな気を使うとは思えないが。

「それじゃあ今日はこの辺で」

「うん」

「え?何もしないんですか?」

蓮君は疑問そうで困惑していた。

「俺だけね」

「どう言うことですか?」

「俺は先に片付けといたい予定があるから、皆は通常業務」

「うん、じゃあ蓮君には私が色々教えとくから班長は行って来な」

「はい、では」

そうして俺はインターポール本部を出た。

今日は隼人さんから仕事を手伝ってくれと言われてた日だった。

会社は電車で十五分くらいの場所だった。

ビル街に立派に立っているビルが隼人さん達の会社だった。

まあ世界中のイベントを担ってる会社なので、当然と言えば当然なのだがそれでも綺麗で立派だった建物にあっけにとられながらビルの中に入った。

受付に向かって、俺の名前を伝えると社長直々に出向いてくれると言うことになった。


「お待たせ、心太」

「隼人さん直々に来なくても良かったのに」

「そんなわけにはいかないよ、それじゃあ今日はよろしく」

「はい、で僕は何をすれば?」

隼人さんは一呼吸おいて話し始めた。

「うーん、実を言うと今日の仕事場は此処じゃないんだ」

「え?」

「此処から近くの国際ホールで展示会をするから、心太にはそこに行ってほしい」

「えー、なんかお茶くみとかコピー取りとか考えてたから、そんな感じで大丈夫なんですか?」

「うん、まあアルバイト感覚でやってくれればいいし」

「分かりました」


それから詳しく聞くと各国の要人やアジアからのVIPとヨーロッパの大使級ゲストなどが来るらしく、隼人さんはそう言った人の対処で大変らしく俺は現場で働いてくれと言うことらしい。

何をしたらいいのかさっぱりだが、なんとかやってみることにした。

それから隼人さんと一緒に車に乗って国際ホールに向かった。

そこで渡されたのは無線でスーツに着替えされて、ホールに立った。


国際ホールで起きたことは色々あって大変だった。

最初に起きたハプニングは即座のトラブル対応だった。

午前、国際展示会の来賓対応で混乱が起きる。アジアからのVIPとヨーロッパの大使級ゲストが、同じ時間に会場入りすることが判明したのだ。担当スタッフは真っ青になり、英語で早口に言い訳を繰り返す。

早速起きたハプニングなのでスタッフも慌てていて、上手く言葉も伝わってなくて、ゲスト同士はどう言うことだと言ってるのが聞こえてくる。

そんなことをほっとけるわけもなく、俺はそそくさと移動して仲介した。

双方の意向を丁寧に確認し、即座に調整案を提示することにした。

「お互いに敬意を持ちたいはずです。先に入場するのではなく、並んで一緒に歩いていただけませんか? 二つの文化が並び立つ姿は、むしろこのイベントの象徴になるはずです」

英語で言うとゲストたちは顔を見合わせてうなずいた。混乱は収まり、スタッフたちは安堵の息を漏らす。

全く立場が上になるとこう言ういざこざが発生するのかと、面倒くさいことを押し付けてきたなと思いながらその場を後にしようとしたら、一人の女性に呼び止められた。

「あの?」

「はい?」

「さっきはありがとうございました」

深々と礼をされた。

「いえ」


夕方、準備が追い込みを迎える頃、若いアルバイトの女性が手を滑らせて展示用の装飾品を割ってしまった。上司に怒鳴られ、涙を浮かべる先ほどの女性だった。

「お前はどれだけ俺達を困らせば気が済むんだ?これがどれほど大事な物か分かってるのか!!」

男のスタッフが怒鳴りつけていたが、この人は本心だと思うがそれほどこのイベントが大切だと言うのが伝わってきた、ただ本気で怒っているので女性は涙を浮かべていたのでここは一芝居打つことにした。

「壊れたのは仕方ない。大事なのは次にどう動くかだろ? 代わりの装飾を工夫すれば、むしろ印象に残る展示になる」

俺は周囲の備品を組み合わせ、即席で美しいディスプレイを作り上げた。

「おお、これは良い」

先ほど怒号を上げていた男のスタッフも笑顔になりその他のスタッフもグッとと親指を立てて、褒めてくれた。

即興ながら良い出来だと自負できた。


そうしてイベントが終わった。

隼人さんもゲストとの話しも終わり一息ついた時だったらしく、これから帰る途中だった。

「俺はこのまま家に帰るけど、心太はどうする?」

「俺もそうします」

「そう、仕事の方は大丈夫なのか?」

「はい、何も報告は来てないのでこのまま帰ることにします」

「そうか、じゃあ車で帰るか」

「そうしましょ」


そうして車に戻ると運転手さんが珈琲を買ってくれたらしく、俺にもくれた。

社内では今日の出来事を振り返っていた。

「俺はずっとホールにいたから分からなかったけど、心太は今日どうだった?」

「まあ面白かったですよ、色々見れたし」

「そうか、実はなスタッフに心太の話を聞く前にいつから心太がうちで働くか聞かれたよ」

「え?」

「いや、仕事ぶりが凄くてスタッフだけじゃんなくてアルバイトまで気を使うことが出来てスタッフが風通しの良い仕事だって言ってたから」

「俺は何もしてないですよ」

「謙遜しなくていい、色んな人にインターン生にしては仕事慣れしてるから不思議だけどここまで現場慣れした従業員がいればもっと楽しく楽に働けるって絶賛だたんだから」

俺の知らない所で俺は凄く褒められていたらしい。

「心太が良ければ是非ともうちで働いてほしいな」

「俺は仕事してるし、まあそれで働けなくなったら、お世話になるよ」

「そうか、俺と会社の人間はいつでも歓迎してるからな」

「はい」


それから翌日、SOに行くと皆が一つの画面を見ながら電話をしていた。

「おはよう」

「あ、班長大変です」

「どうした?」

「事件です」

「内容は?」

「現場は東京郊外の旧図書館跡地で廃墟となった書庫で発見された遺体は、すべての紙媒体(本やメモ帳、新聞)を体内に詰め込まれ、臓器の代わりに「知識」が埋め込まれた異様な姿をしていた。らしい」

「それは凄惨な事件だな」

「それだけじゃないの」

沙雪さんが静かに続ける。

「遺体の口元には必ず「神を喰らえ」という文字が刻まれているらしいの」

「うーん、京野さんどう思う?」

「日本には数多くの伝説がある、その中でこんなに凄惨な事件で神を見立てた事件が起こるのは珍しい」

「それなら犯人は一つだな」

「そうですね、サマエルそれに…」

「それになに?」

「いや、今はまだ断定できないことが多いとりあえず日本に行こう」

「分かった」


それから俺達は日本に向かった。

俺は一つ確信していたことがあった。

この事件には一人の人物がいるだろうと、そいつは今まで自分の影を出さない卑怯で卑劣な世界で一番大きな影。

神鹿狼奈が大きく関わっていると。


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