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新たな決意

愛は助からなかった、直ぐに救急車で病院に運ばれて処置を受けたが駄目だった。

仁も即死だった。

ただ仁の拳銃には二発しか入っていなかった、一つは威嚇用でもう一発は自分用だったのかもしれない。

今日は愛と仁の葬式で墓には色んな人が集まっていた。

「心太、大丈夫?」

そう声をかけてくれたのは、沙雪さんだった。

「はい、まあ」

俺は今更何を言えば良いのかそして一番近くにいたバディの異変に気づけなかったその事実に押しつぶされそうだった。

「ほら、傘」

「ありがとうございます」

「しっかりしてね」

「はい」

そうして二人の墓の前には段々一人また一人と姿を消していった。

最後に残ったのは俺だけ、こんな時相川さんや仁ならいつまでも付き合ってくらただろうに俺は惜しい人を亡くしてしまった、それも三人も同時に。

そんなことなど関係ないと言わんばかりに、雨は激しく降り注いでいた。


それから俺はSOの部屋に向かうと仁のデスクには何もなかった。ブランシェなど他の捜査官が全て持ち帰ったのだろう。

そして相川さんのデスクには物が散乱していた。

「あ、心太」

「沙雪さん、何してるんですか?」

「相川さんの荷物整理」

「そうですか」

「うん、暇なら手伝って」

「はい」

それから二人で物が多いデスクを片付けた。


「二人になっちゃったね」

「そうですね」

「荷物日本に送らないと」

「日本に?」

「うん、奥さんがいるんだって」

「どこに?」

「青森だったと思う」

「そうですか」

「うん、それから愛ちゃんの荷物と相川さんの荷物家にあると思うから段ボールに詰めて同じように日本に送ってくれない?」

「良いですけど」

「多分SO事態も存続が危ぶまれるし、私はそれの対処に追われると思うから」

「お願いします」

「うん、じゃあ家はよろしく」

「はい」


そうして俺は相川さんの家に向かった。

俺の家にある物もあるが俺は事前に段ボールに詰めてたので、後は相川さんの物だけだった。

相川さんの家はマンションの一室だった。

中を開けると物は殆どなかった。

俺は持って来た段ボールに物を詰めて行った。

そして一つだけ気になったものがあった。

それはアルバムだった。

中を見ると、愛の小さい頃の写真から奥さんとの家族写真や、こっちに来た時は施設の写真などがあった、そして最後には俺を含めたSOの写真だった。

それを見て涙が止まらなくなった。

俺は一体こっちに来て何をしていたのだろうか?

誰を助けれたのか、それに意味があったのか、そんなことを考える。


そんなことを考えている内に俺は段ボールを日本に送り、アルバムを持ち俺は青森に立っていた。

住所を調べてそこに向かった。

タクシーで人里離れた場所にポツンと平屋の一軒家があり、表札には「相川」と書かれていた。

俺はインターホンを押した。

「今行きまーす」

そうして玄関が空き出てきたのは四十代くらいの女性で、麦わら帽子をかぶっていた。

「どなた?」

「あの、インターポールで相川さんにお世話になった者です」

「もしかして、河上心太君?」

「え?」

「旦那と愛から話は良く聞いてたから、それに近いうちに来るだろうからって」

「そうですか」

「うん、暑いし中入って」

正直、俺は怒られると思っていたので戸惑った。


中にお邪魔してリビングに座ったらお茶を出してくれた。

「ごめんね、ジュースとかなくてこんなもので」

「いえ」

「それで何をしに此処に?」

「これを直接渡したくて」

そう言ってアルバムを渡した。

「あら、懐かしいわね。中見た?」

「少しだけ、すいません」

「良いのよ、で愛の小さい頃可愛いでしょ」

「はい、それはずっと変わらなかったです」

「そう?」

「はい」

「愛ったら亡くなる少し前に電話で彼氏連れて帰るって言っててどんな人かなって思ってたの」

「すいません、守れなくて」

「良いの、正直旦那はいつ死んでも驚かなかったし後から愛が施設で働いているって聞いてから、愛もそう言う目に遭ってしまう可能性はあるって割り切っていたから」

なんか仕事に理解があると言うかそれ以外は気にしてない感じがしたけど、そこに愛を感じた。

それからアルバムを二人で見てそれぞれどんな時期に撮った写真なのかを、聞いた。

「愛がフランスに行くって聞いた時はびっくりしたわね」

「止めなかったんですか?」

「うん、最初はびっくりしたけど小さい頃から旦那を知らないで育ってそれでも知りたいって言ったから」

「寂しいとかは?」

「そりゃ凄く寂しかったよ、でも毎月旦那と愛から手紙をくれてね」

「そうだったんですか」

「うん、それが毎月の楽しみになっていってたまに写真を送ってくれたしそれを見て満足だったわ」

「そうですか」

俺は涙をこらえるので精一杯だった。

そんなに大事な娘を守れなかった、そして愛する人一人守れないで何をしているのだろうか俺は。

「心太君はこれからどうするの?」

「どうしましょう」

「インターポールやめるの?」

「そうですね、正直このまま日本に帰ろうと」

「ご家族は?」

「亡くなりました」

「そう、それで良いの?」

「え?」

「私は旦那と愛を殺した人も死んだからもうどこにも怒りの矛先がないけど、貴方は違うのよね?」

「知ってるんですか?」

「旦那から経緯は少し」

「サマエルの幹部が関わっているのは分かってるんですけど」

「それなら敵討ちしないとね、法律でちゃんと罪を償ってもらわないと」

「そうですね、法律で」

「そう、殺したら犯人と同じになっちゃうから、だからどんなに罪が軽かろうか反省してんかろうかかそれでも心太君の仕事は捕まえることでしょ?」

「そう、ですね」

「だったらやることは一つじゃない」

「はい」

もうやめようとしていた自分が恥ずかしくなった。

「今日は泊まっていく?」

「じゃあお言葉に甘えて」

「分かった」

そう言って奥さんがキッチンに向かった時だった。

俺の電話に着信があった。

相手は京野さんだった。

「もしもし?」

「おお、久しぶりだな」

「なんですか?」

「今会えないか?」

「どうかしました?」

「それがな正直困っててな」

俺は話を聞いて東京に向かうことにした。

「奥さんすいません、俺東京に行きます」

「そう、なら気を付けてね」

「はい」


そうして新幹線で東京に向かった。

東京に着く時には既に空は暗くなっていた。

警視庁に入った時に肩を叩かれた。

「久ぶだな河上」

「京野さんは元気そうで」

「まあな、じゃあ行くか」

「はい」

俺は京野さんの後ろをついて行った。

「どうだ、久しぶりの日本は?」

「懐かしいです」

「そうか、そう言えば朝倉覚えてるか?」

「はい」

「あいつお前がいなくなってから気合いれてどんどん成長してるよ」

「そうですか」

「ああ、今や捜査一課の若手のエースって感じだ」

「前の蒼真君がバリバリ捜査やってるの想像つかないですけど」

「まあな、でも実際はあんまり変わらないよ人当たりも良くて誰からも好かれるのは変わんない」

「そうですか」

そう言ってエレベーターに乗り、三階に着いてとある部屋に通された。

入る前に京野さんに聞いた。

「それでその少年は何で俺を?」

「さあな、警視庁にハッキングしたがどうやら足がつくようにしてたらしくてなそれも良く分からんが、電話で話した通りにお前名前を出した時は驚いたがお前が来ないと何も話す気はないらしい」

「そうですか、それでその少年のことは何もわからないんですか?」

「少しだけ、名前は天城蓮年齢は十歳、高校生の姉が一人、そして過去に両親をサマエルによって殺されている、それ以外は分からん」

「分かりました」

そうして俺はドアを開けた。


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