秘密
「ブランシェ!!」
撃たれたのはブランシェだった。
「大丈夫だ」
撃たれた箇所は右腕だった、俺はネクタイをブランシェの腕に締め付けて止血をした。
「これで河上がけりを付けないといけなくなったぞ」
「分かってる」
「仁!!」
俺は振り返って拳銃を構えた。
「やっと構える気になったか」
「こんなことするやつじゃなかっただろ!!」
「人は変わるものだよ、ましてや日々犯罪と対面する僕らみたいな仕事をしている者としては」
「だからって殺すことはないだろ、相川さんだって」
「あいつは更生施設で働いていた、その事実は変わらない」
「分かんないよ、お前は今何を考えている」
「相川だけ特別と言うわけにはいかない、分かるだろこの世に悪はいらないんだ」
「いつからそんなことを考えるようになった」
「分からない、ただ俺は犯罪が憎い。さあお喋りは終わりだお前の信念が強いか俺の信念が強いかどうする?」
俺は拳銃を仁に向けた。
「そうか、お前はそれを選んだか、でもそれでいい」
仁は愛を投げ飛ばして俺に向かって発砲した。その瞬間に俺も発砲した。
その瞬間は今でも忘れない、血を出して倒れる愛の姿を。
「愛…?」
愛は倒れ込み胸から血が流れだす。
直ぐに駆け寄った。
「愛、なんで?」
「二人が殺し合うなんて見たくなかった、だって仁さんは心太を信じてやっていきたいって言ってた」
愛の声が段々かすれて行く。
「私一つ黙ってたことがあったの」
「もう喋るな!!」
「私もお父さんと一緒にあそこの更生施設で働いてた」
「え?」
「ある時偶然お父さんの部屋から若い人が沢山写ってる写真を見つけてね、それで気になって話を聞いたら段々私もそう言う施設で働きたいって思って」
「分かった、分かったからもう」
「ごめん、もう意識が…」
「愛!!」
「これが最後かもしれないから謝っておくね、私は心太と出会えて幸せだったよ」
「愛!!」
それ以降愛は話さなくなった、体は段々冷たくなっていく。
「頼むもう俺から何も奪わないでくれ」
自然と涙ががこぼれる。
そうして復讐に駆られた俺が見つめるのは一つ。
「仁!!」
「心太…俺は」
仁は倒れていて胸から地面に血が溢れていた。
俺は直ぐに駆け寄った。
そうして俺は仁の頭に拳銃を当てる。
「お前に殺されるならそれはそれで良いかもな」
「お前は許されないことをした、最低だ」
「そうだな、もう終わらせてくれ」
俺は拳銃の引き金に指をかけた。
「心太、やめて!!」
声がする方を見るとパトカーが沢山止まっていて、その最前線で沙雪さんがこちらに走って来てた。
「心太、これで終わりだ」
仁は俺の服を握りしめた。
「俺はもう引き返せない所まで来てしまった、もう終わらせてくれ」
「俺は…」
そうして拳銃を投げ飛ばして、仁を体を抱き寄せた。
「死ぬな仁、お前の異変に気づけなかった俺の責任でもある。だから生きて罪を償うんだ」
「は、苦しい選択をさせるね」
「お前までいなくなったら俺は…」
「大丈夫、お前はちゃんとできるよ、やっぱり心太は人を殺すんじゃなくて捕まえる日本流が似合うな」
「馬鹿言うな、俺はただ償ってちゃんと生きてほしいだけだ」
「そうか、それならちゃんと相川さんの意志も繋いで行けるな」
そう言って仁は煙草を一本取り出して火をつけて吸いだした。
「これで最後だ、心太俺を殺せ」
「馬鹿言うな、さっきも言っただろ」
「分かった、けじめはつけるさ」
そう言って仁は自分の拳銃を持ち一瞬で自殺した。




