本意
「仁…」
俺は拳銃を構えるのを自然とやめていた。
「心太お前は優しいな」
「お前がやったのことは聞いた映像も見た」
「そうか、ならやるべきことは決まっているんじゃないか?」
「でも…」
「河上、銃を構えろ!!」
「俺は…」
「お前はそれでも捜査官か!!」
「仲間は撃てない」
「それが相川が残したものなのか?」
「え?」
そう言ったブランシェは語り出した。
「相川はいつも悩んでいた、このままではサマエルの思いのままになると。でもたった一つだけ悩まずに答えを出した、それがなんだか分かるか?」
俺は分からないかった、あの人が常に悩んで苦しんでいたなんて。
「お前をこの仕事に誘ったことだ」
「え?」
「お前は必ずサマエルを終わらせることが出来ると、お前がこの先インターポールに入ってなにかあれば自分が全ての責任をとる、そう言ってお前を誘ったんだ」
「だとしても、俺は…」
「相談は終わった?」
仁がブランシェとの会話を遮って話し始める。
「なんでこんなことしたんだよ」
「簡単だよ、犯罪者はこの世からいなくなるべきだ」
「どう言うことだよ」
「俺らが捕まえても捕まえても何度もサマエルやマラクは出てくる、永遠と周るこのループに耐えられない」
「だからってこれから更生して社会で頑張って行こうとしてる奴らまで殺さなくても」
「甘いな、あいつらは出たらまた同じことをやる。俺は何度もそれを見て来た」
それほど神鹿狼奈の影響が強いことを示していた。
「でも、それでも信じられないのか?」
「ああ、今の世間の人間は神鹿狼奈と言う存在を信じて疑わず信仰し崇拝する、ただの犯罪者を神と崇めるこの世界は終わってる」
「待て、お前は神鹿狼奈とは関係ないのか?」
「ああ、俺はただ世界から犯罪者を消したいだけなんだ」
「そんなこと出来るわけないだろ」
「心太がそれを言うか?出来るさ、心太なら」
「どう言うことだ?」
「君の目があれば犯罪者かそうでないかは直ぐに分かるだろ?どうだ俺と共に新時代を作ろう」
正直俺は頭が怒りで顔が沸騰しそうだった。
「いい加減にしろよ、犯罪者をなくすなんてそんなの無理に決まってるだろ!!」
「いつかは出来る」
「いつかの話をしてるんじゃない俺は今の話をしてるんだ」
「君はどっちの味方なんだ?」
「え?」
「犯罪者を消すのが我々の仕事じゃないのか?」
「お前はもう犯罪者だ!!そうだろ河上」
「人間は誰しも必ず悪意を持ってる、それを消すことはできない。それは数々の犯罪者と対面してきた仁なら分かるはずだろ」
「河上、銃を構えろ」
俺はまだ構えられなかった。
「河上!!」
「君は俺を殺せないのか?」
「どんな状況になっても仁、お前は俺の仲間だ」
「君は甘いな、どんな状況でもか?」
「ああ」
「待って」
そこに現れたのは愛だった。
「愛なんで」
「仁さんに場所を送られてきたの、そこの建物に隠れて見てたの」
愛は俺と仁の間に立っていたが仁が愛に拳銃を向けた。
「仁!!」
「愛さん、こちらに」
愛は仁に従って仁の前に立って人質になってしまった。
「そこまでだ真神仁」
「仁、そこまでだ」
「やっと銃を構えてくれたね」
「愛を人質にとるなんて話が変わってくる」
「そうだな、最愛の人なら話は変わってくるだろう」
「真神仁、投降しろ」
「なあ、心太。お前はこうなったらどうなるかな?」
「は?」
バン!!
その時拳銃の音が鳴り響いた。




