姉
イタリアから戻る前に飛行機では隣が仁だったのだが、俺は色々考えて整理しようとしていたが時差ボケの眠さで音楽を聴きながら寝ようと思い隣を見ると、仁ははっきりとした意識でなにかを考えていた。
何を考えているのか聞こうと思ったがそんな雰囲気ではなかったので、俺は眠った。
二時間ほどが経ち俺は仁に起こされた。
「心太、着いたよ」
「おはよう」
「おはよう」
それから少し時間をかけて飛行機から出て空港から帰ろうと思って空港を出たら一台の車が止まっていて、俺にスーツの男が立っていた。
「お帰りなさいませ、心太様」
「心太誰この人?」
「多分家の人ですね」
「はー、金持ちだね」
「俺が金持ってるわけではないんですけどね」
「そっか、じゃあ俺達は電車で帰るわ」
「お疲れさまです」
それから俺は車に乗った。
「お疲れ様です、心太様」
「えっと貴方は?」
「私はマクロンと言います、使用人です」
「そうなんだ」
「イタリアではどうでしたか?」
「まあ色々あったしなんか疲れたよ」
「そうですか、ですがもう少し頑張ってください」
「何かあるの?」
「今日は久しぶりにご家族で集まると聞いています」
それを聞いてベルモンさんが姉が帰ってくると聞いたことを思い出した。
そうしてスマホなどで家まで時間を潰した。
サマエルについて検索してもサマエルに関して賛否両論が巻き起こっていた。
世の末だなと思いながら家に着いた。
「ただいま戻りました」
「おお、心太お帰り」
家の中で真っ先にリビングに戻ると宗一郎さんと理沙さん、隼人さんがいた。
「遥も早く帰ってこいって言ったんだけど。もう少し待ってね」
「分かりました」
それから俺は自分の部屋に行き、荷物をまとめて元の場所に戻した。
一時間程かかってやっと終わったと思ったら次は、風呂に行き自分の目が家族を引き換えに得たとしたらこんなものはいらなかったとすら思えた。
このままずっと考えているとネガティブになってしまうと思い早々に風呂を出た。
そして夕食を食べる為にリビングに向かうといつも空いてる席に一人知らない女性が座っていた。
「あ、君が心太君だね~」
「えっと」
「遥、まずは自己紹介」
「そうだね、私は河上遥。長女だよ」
「貴方が遥さんですか」
「うんうん、そう、今日は色々聞きたいことあるからね」
「はい」
それから、口に合う料理が出てきて俺は安心してご飯を食べた。
その際色々な話しをした、俺はイタリアの話しをしたり隼人さんは会社のこと、遥さんは仕事のことを話していた。遥さんは女優をしているらしく色々な国を飛び回っているらしい。
隼人さんからは一度会社に顔を見せてほしいと言われたが俺はSOの仕事で忙しいと思い断った。
それからご飯も食べ終わって自分の部屋に戻り、煙草を吸いながら家族写真に向かって色々話しかけていると電話がかかって来た。
相手は仁だった。
『もしもし』
『今いいか?』
『うん、何?』
『イタリアでの仕事で色々考えたんだ』
『うん』
『俺は今まで色んな凶悪犯罪者と対面で話してきた、勿論サマエルやマラクとも。でもあいつは神鹿狼奈とは何も知らないのにあんな事件を起こした』
『それで?』
『俺達の仕事はいつまでやるのかなって』
『それは…』
『まあこんなこと言っても仕方ないのになそれでも考えてしまう神鹿狼奈を捕まえるためにはお前が必要だ』
『それは違うよSO皆でやるんだよ』
『皆でか…』
『うん』
『分かったそれじゃあ、お休み』
『うん、お休み』
結局仁は何を言いたいのか分からなかったけど、すべては神鹿狼奈を捕まえないと終わらない。
そうして俺はベットに横たわり、寝る前にスマホを見るとメッセージが届いていた。
相川さんからだった。
内容は明日朝一番にモーガンの所に行くようにとだけだった。
それに返信しながら俺は何か悪いことでもしたかなと、思いながら眠った。
翌日。
俺は朝早くインターポールの最上階でモーガンさんの部屋の前にいた。
「失礼します」
「どうぞ」
モーガンは忙しそうに書類に目を通していた。
「心太君」
「はい?」
「君に辞令だ」
「え?」
「そのままの意味だよ」
「ちょっと待ってください、俺はSOで頑張りたいんです」
「そう焦るな」
「では何でしょう?」
「君にはとある組織に入ってほしい」
「組織?」
「ああ、インターポールでは密かに世間で逮捕できない人間を暗殺する組織がある。そこに入ってほしい」
「それは、認可されている殺しですか?」
「ああ、君はインターポールに入る時の試験で全ての試験を最高点をたたき出した。その能力を発揮してほしい」
こんな組織があるなんて知らなかった、でも答えは出ていた。
「断ります」
「なぜ?」
「俺がここに来たのは人を殺すために来たのではなく、捕まえる為に来たんです」
それを聞くとモーガンは無言で何枚かの資料を渡した。
「これは君の家族を拉致に関わったサマエルの幹部とそれに手伝ったマラクの資料だ、その中では各国のお偉いさんの息子などもいる、逮捕はできても直ぐに莫大な保釈金で外に出れる」
「そいつらを殺してほしいと?」
「ああ、ライフルや近距離での射撃、刺し殺しても構わない。君の要望によって現場を用意しよう」
俺はどうすればいいのか、分からなかった。家族の敵をとれるならそれでもいいと思ってしまった。でもこれをSOの皆がしれば即刻断るべきだと言うだろう。
「少し時間をください」
「分かった、決まったらまた此処に来なさい」




