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天使の裏切り

フランスからイタリアまで二時間ほど。

「やっと着いた」

「沙雪さんはずっと寝てたでしょ」

「まあ睡眠が一番暇を感じないからね」

飛行機では俺はそこまで寝てないのでこれから時差も不安だった。

「おーい、お前らがSOか?」

ふと声がする方を見ると、四十代くらいのおじさんが手をぶらぶらと回していた。

「何あれ?」

「地元警察の人でしょう」

沙雪さんと仁がこそこそ話していた。

「あの年であれは少年すぎない?」

「まあ、そう言う人なんでしょう」

そのおじさんに相川さんが話しかけに行った。

俺達も続いて行った。

「初めまして、私はマルコ・ベネデッティだ。マルコと呼んでくれ」

「初めまして…」

俺達は全員挨拶を交わして視線はもう一人の女性に向けられた。

「私はルチアです」

「貴方も地元警察の方ですか?」

「はい」

なんだかこの人は気難しいなと感じた。

「じゃあ現場に移動しながら詳細を話しますか」

「そうですね」

そうして空港からルチアさんの運転で車で移動した。

「現場はここから四十分くらいです」

それから事件の概要を聞き気が引き締まった。


現場に着くと、ブルーシートが張られていて中に入ると既に鑑識などの作業が終っていたので遺体はなかった。

「それで、心太どう?」

「見てみます」

現場を見るとそこにはミイラが置いてあっただろう場所に真っ白な模様が浮かんでいた。

そしてその場所にはどす黒い天使のマークが浮き上がっていた。

これは間違いなくサマエルの犯行だと分かった。

そしてどす黒い線が現場の奥に繋がっていた。


「見えました」

「何が見えたんですか?」

ルチアさんがぶすっとした表情でこちらを見ていたがそれは無視して、話しを続ける。

「どうだった?」

「あの色は間違いなくサマエルですね」

「根拠は?」

「それはまだ断定できません」

「一体貴方は何を見たんですか?」

「それは…」

「まあそれは良いでしょう。とりあえず彼はサマエルに関しては世界で一番理解してます」

「だからこんな子供に何が分かると言うのですか?」

どうやら最初に会った時から何やら、ルチアさんに見られるてるなと思ったら俺が子供だと言うことに関して疑問があったのだろう。

遺体にマークがあることは事前に聞いていたのでそれが根拠にはならないだろう。

「これは国家的な事件なんですよ、子供が口を出すものではないんです」

「まあまあルチア、この子もれっきとしたSOの一員だから此処にいるんだろう?」

「それはそうですけど」

「うちの者が混乱させることは謝りますが心太は必ず力になりますので」

「はー、まあいいです」

「それでもう一度資料と概要を話してもらえますか?」

資料をSOの面々に全員配りマルコが話し始めた。

「死亡推定時刻はミイラの為不明、遺体は世界各国の宗教研究者や高位聖職者たちで、数か月前に相次いで失踪していた人物たちだった。

全員の額には「天使の羽に貫かれてる剣」の焼き印が鮮明に刻まれており、異常な儀式的犯行と判断され、観光ツアーに参加していた外国人旅行者が偶然地下通路の崩落を目撃し、遺体を発見されたと言う流れですね」

「うーん、こんなマークは今まで見たことがない」

「何を意味してるのでしょうか?」

「まだ断言はできないんですけど何か意味はあるんでしょうね」

話しは続いていくが俺には一つ気になっていたことがあった。

「ねえ、仁」

「どうした?」

「なんか現場の奥にどす黒い線が繋がっていたんだけど」

「分かった」

これが何を意味しているのはは分からないがそれでも無視はできないと思った時、ふと視線を感じたと思ったらルチアさんがこちらを見ていたが俺が視線を向けるとすっと顔をそむけた。

「なんだろ?」

「心太」

「はい?」

相川さんがマルコさんとの話し合いが終わったらしく今は仁と沙雪さんと話していた。

「仁から聞いた、で何があるんだ?」

「分かりませんがこの事件にサマエルが絡んでいることに間違いはないのでその関連で意味はあると思います」

「そうか、だがあの奥は壁になっているからな」

「それならこちらでなんとか手配は出来ますよ」

「え?」

気づいたらマルコさんが近くにいた。

「手配と言うのは?」

「今回の事件は全て上から一任されてますし、此処の所有者は私の知り合いなので事件解決の為と言えば多少の無理はできます」

「そうですか、ありがたい」

「その前に一つ聞かせてください」

「なんでしょう?」

「相川さんではなくその子、確か心太君だったかな?」

「僕ですか?」

「ああ、君はSOの中では相当な信頼をされているみたいだし、SOと言う組織はインターポールの中でもサマエル、マラクの専門の組織だ。そのメンバーの代表としてこのマークの意見を聞きたい」

「子供の意見でも構わないと言うことですね?」

「ああ、俺もサマエルの事件を担当したことがあるが天使の羽に貫かれてる剣のマークは見たことがない、そしてその組織のリーダーが君が一番サマエルと近いと言うからな」

「分かりました」

色を見てもどす黒いものや改めて見ると三つ分かれていた。

一つは群青色、これは使命感などを表す、そして金色、これは高揚感や誇りを意味する。最後は琥珀色、これは迷いや葛藤を意味する。

「断定はできませんし僕の憶測の域を出ないですが、犯人はこのミイラで何か普通はではない実験を行っていたのではないのでしょうか?」

「実験?」

「はい、それとこのマークを結び合わせると不死や不老の実験ではないのかと」

「またそれは何故?」

「このマークはサマエルが残して行くには少しおかしいです」

「と言うと?」

「サマエルが行ってきたのは単なる殺人だけではなく、虐待やネグレクト、いじめなど殺害をする前に被害者がいることもあります、なので死の天使と言われています」

「ちょっと、君流石にそれは」

「ルチア少し聞いてみよう」

「ですが、これだから子供が捜査に参加すべきではないと私はあれだけ」

「でも彼が言うことも決して間違いではない」

「マルコさんまで何を」

「死の天使と言う話しもなくはない」

「分かりました」

ルチアさんは黙った。

「それで?」

「はい、そのサマエルが一番大事にしている天使の羽に剣が刺してあると言うことは死んだ後に人間を連れて行く天使に対して反抗している。つまり死に対しての反抗だと」

「なるほど」

「それともう一つ」

「なんだ?」

「今回の事件を起こした犯人はサマエルにたしての反抗とも捉えられると」

「なるほど、そこまで言われればこちらも動かざるをえないか」

「マルコさん、それは憶測の域をでないじゃなですか」

「ルチア、俺はそれでも構わないから彼の意見を聞いたんだ」

「ですが」

「まあいいじゃないか、俺はここの所有者に話を付けてくる」

そうしてマルコさんの信頼はえていなくなったが、ルチアさんの疑念は晴れてなかった。


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