娘
「父さんに着替えを持って来たの」
「お父さん?」
「うん、相川進は私の父です」
「え?」
あの能天気でへらへらしている相川さんの娘がこんなにしっかりした娘だとは。
「こんな偶然あるとは」
「それはこっちが言いたいよ、まさかクラスメイトにインターポールの人がいるんなんて」
「まあ色々あって」
「その歳でこんな仕事してるって色々で済ませるつもり?」
「いや、まあ俺は恵まれてるだけだよ」
「恵まれてるね、私は仕事のことは殆ど知らないけどお父さんがどのくらい大変な仕事してるかは分かる」
「理解があるんだね」
「そうね、まあ大変なことは分かった上でこっち来たからね」
「そうなの?」
「うん、前からお父さんは単身赴任でこっちに来て殆ど会ってなかったの。それで家族より仕事を優先する父親だって分かってた、だから電話とかも私からはしなかったでもある日これが送られてきたの」
愛さんに渡されたのは写真だった。
その写真には色々な人種の子供たちが映っていた。
「これは?」
「さあ?私は良く知らないけど手紙も入っていてその中には父に助けられた人が沢山いたって、詳しいことは分からないけどなんだかあの人に着いて行けば、家族を捨ててでも優先したいことが分かるかもって思ってね」
「そっか、で分かった?」
「うん、まあ全部とは言わないけどね。でも家族より仕事を優先するのはどうかと思うけどね」
「まあそれは何とも言えないけど」
「そうね」
愛さんと笑って話すのは初めてだった。
それがどう言うわけではないけし此処に来て笑顔が減ったのも事実、インターポールの人は冷ややかな目で見てくるし学校にも馴染めているとは言えない、それでも少しこの人を信じてみるのも良いかなと思った。
「河上君の家族は?」
「家族は亡くなった」
「そうなんだ」
「うん、でも養子にしてもらって十分過ぎるくらい支援してもらってる」
「そっか、今度家来てよ」
「え?」
「なんか作るよ」
「料理できるの?」
「毎日してる、まあお父さんは料理がさっぱりだから」
「そうなんだ」
「うん、私が来るまでちゃんとしたご飯食べてなかったみたいだし」
「なんか相川さんらしいな」
「まあね、頼りない上司だけどよろしくね」
「それは僕もそうだから」
「そうだね、河上君頼りないから」
「ちゃんと仕事はするよ」
「そう、頑張ってね」
「うん」
それから家に帰って準備を始めた。
服をキャリーケースに入れてそれ以外の日用品などを持った。
今日はもうご飯も食べたしお風呂も入ったので後は寝るだけだが、今日は一本吸って寝ようと思い部屋と階段を繋ぐ廊下の屋根が開いてる場所に夜空を見ながら座った。
「心太様」
声のする方に視線をやるとベルモンさんが立っていた。
「ベルモンさんどうかしました?」
「明日イタリアに行くとお聞きしました」
「仕事なので」
「そうですか、帰ってきたら会ってもらいたい方がおりますのでどうかご無事で」
「誰ですか?」
「遥様です」
「遥さん?」
「はい、長女様です」
「分かりました」
「では、お早めにお休みください」
「うん、おやすみなさい」
ベルモンさんは階段を下りて行った。
煙草については何も言わなかったことが驚いた。




