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洗礼

それから授業を受けたが、俺のフランス語は日常会話レベルなので着いていくので精一杯だった。

何個かの授業を終えて、昼休みになった。

日本の高校と違って食堂があるらしく、皆食堂に向かっていった。

俺は金は持っていたが、やり方がよく分からないので並んだ前の人と同じやり方でビュッフェを周り隅の席で食事をとり始めた。

ふと視線を感じると思い周りを見ると多くの生徒が俺を見ていた。

なんだろうと思いながら食事をとると何やらニヤニヤとしてフランス語で小声で話す生徒がいた。

手で隠しているので何を話しているのか分からないが、馬鹿にされてるのは分かった。

話したいことがあるなら直接言えよと思った。

「あんなの無視してれば良いの」

「え?」

唐突な日本語でびっくりしてたら、相川さんが俺の前の席に座った。

「あいつは陰湿な嫌がらせをして楽しんでるやつだから」

「そうなんだ」

「うん、それよりはいノート」

「え?」

「さっきの授業で殆どノートとってなかったでしょ?」

「あ、うん」

「フランス語はどのくらい?」

「日常会話くらいだから、授業にはついていけてないね」

「そっか、まあ私も最初はそんな感じだったから慣れれば大丈夫だよ」

「ありがとう」


「おいお前ら」

先ほどの陰湿な嫌がらせと相川さんに言われていた奴が声をかけて来た」

「なに?」

「日本語で喋れば分からないと思ってるだろ?」

「だから?」

「俺らのこと馬鹿にしてたろ?」

「さあ?どうかな」

「愛さ~そんな態度とるなよ」

他のリーダーっぽいが体の良い奴が相川さんの首に腕を巻いた

「やめて、気持ち悪い」

「そんな態度とってこの学校で生きていけると思ってるのか?」

「さあ?これまで生きてこれたから大丈夫よ」

相川さんは男子生徒の腕を強引にほどいた。

「おいおい、酷いね~」

「おい」

「ん?なに?日本人君?」

相川さんは優しい、会って数時間の俺にノートを見せてくれるただけだが、日常会話しかできない俺を心配してくれるのは伝わった。

なめられた時に困らないように覚えたフランス語で答える。

「相川さんが困ってるだろ?」

「それが?」

「お前がどんな人間かは知らないが相川さんは優しいからこう言ってるが本気なら相手もされないだろ?」

「俺が相手にされない?」

俺の胸ぐらを掴んで強い力で離さない。

「強気に出れば何もできないと思ってるか?」

少し煽ってみる。

「日本人は大人しいと思っていたが」

「俺には河上心太って名前があるんだ、日本人だからってなめるなよ」

「ふ…」

何か馬鹿にしたような笑いだと思った瞬間に拍手が起こった。

「ん?」

リーダーは俺の胸ぐらから手を引いてぱっぱと服をはらった。

「悪い悪い、俺らは差別しないよ」

「ん?」

「愛を見れば日本人は良い奴だって分かってるからさ、まあ日本人のボーイはシャイだって思ってただけだ。マティアス・ルフェーヴルだマティーって呼んでくれ」

「ああ、」

「マティー、ネタバラシしないと」

「ああそうだな」

「ごめんね心太君、私はクロエ・マルタン。クロエって呼んで」

「よろしく」

「私達は何も差別しようとしてたわけじゃないの、なんなら友達になりたいからサプライズとして驚かせようとしたんだけど貴方意外と度胸あるのね」

「仲良くなりたいってわりには酷いドッキリだね」

「ごめんな、気を悪くしたなら謝るよ。でも俺を見て臆せずに話してきたのは俺が驚いたけどな」

「そう」

「まあ愛を見てればさ日本人は礼儀正しくて優しいって分かってたけどさ本当に愛と同じかって気になってさドッキリで試させてもらったんだけど言い返してきた心太には正直驚いたよ。ごめんな」

「私からもごめんなさい」

マティーとクロエが深々と頭を下げた。

「いや、良いって少し頭にはきたけど悪気はないって伝わったから」

「良い奴だな、体は細いけど度胸はある。良かったらラグビー部に顔出してくれよ」

「え?」

「マティーはラグビー部のエースなの」

クロエが教えてくれた。

「そうなんだ」

「ああ、来てくれたら歓迎するぞ」

「いや、遠慮しとくよ」

「そうか?残念だ。それじゃあ」

マティーは去って行った。

「じゃあ私も行くね、愛も放課後買い物行こ」

「うん」


二人とその取り巻きはいなくなった。

「ごめんねマティーは言い出したら止まらないの。全く血の気が多いのはラグビー部のせいかしら」

俺は相川さんと食事を続けていた。

「まあ、正直いじめられると思ったから、はっきり仲良くなりたいって言っもらったほうで良かったよ」

「そうなんだ、日本ではどうだったの?」

「正直馴染めてなかったよ、サッカー部に入って仲良くしてくれた子はいるけど色々あって何も言えずにこっち来たから、怒ってると思うんだ」

「そうなんだ、まあいつかきちんと話せば理解してくれるよ」

「そうだといいんだけど」


それから、また授業してその合間の休み時間に前の席の子から話しかけられた。

「初めまして、サビーヌ・ド・ラ・ローシュ。ローシュって呼んで」

「河上心太ですよろしく」

「うん、さっきはかっこよかったよ。まるで坂本龍馬みたいだった。

「え?」

「僕、日本の歴史が好きなんだ。体は細くてマティーにあんな言い方されて心配してたけどはっきりものを言うからかっこよかった」

「そっか」

それから日本の現状を話した。

坂本龍馬とは大きく出たなと思ったが未解決専門捜査室に入ってから武術は心得ているので、手を出されても大丈夫だと思っていたので少しは勇敢になれたのかもしれない。


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