飲み会
「さあ、自己紹介も終わったところだし飲みに行こ~」
相川さんが開口一番に声を出した瞬間に沢渡さんも賛同し、真神さんは咎める様子もなく「飲み過ぎなでくれ」と言っただけだった。
時間は夕方過ぎだった。
それに着いていくことになり、ベルモンさんに連絡を入れて捜査室を出た。
いくら新人が入ったとは言え最初の出来事に飲み会とはいかがなものかと思ったし、過ぎ去っていく他の捜査官らしき人達には白い目で見られて「お気楽なものだ」そう言ったのが分かった。
インターポールの本部から数分あるいて居酒屋に着いた。
名前は「ノブ」日本語を響があって気に入った。
中に入ると日本人の男性と若い女性がいた。
「大将、ビール」
「いらっしゃい、了解。相川さん飲み過ぎないようにな」
「はいはい、ほら座った座った」
座敷に四人で座って早くも日本の懐かしさにふけっていた。
「おいおい、心太。もうホームシックか?」
相川さんの小言が聞こえて来た。
「悪いですか?」
「いや、故郷を想うのは良いことだ」
「ごめんね心太君、相川さんはこういう人だから慣れて」
真神さんが気を遣ってくれた。
「あの?」
「ん?」
「君いらないです」
「え?」
「真神さんとはこれから長い気がするので」
「そう?」
「はい」
「なら俺のことも仁って呼んでくれ」
「分かりました」
「その敬語もいらないよ」
「でも、年上ですから」
「心太とはそう変わらないよ」
「そうなんですか?」
「仁は二十四だよ」
沢渡さんが教えてくれた。
「そうなんですか?」
「うん、因みに私のことは沙雪でいいよ」
「じゃあ沙雪さん?」
「私も呼び捨てでいいのに」
「いえ、そういうわけには」
「じゃあさ、私はいくつに見える?」
「沙雪さん、それはセクハラです」
「え~、いいじゃん」
「よくないです、貴方はそういうところきちんとしないとだめでしょ」
「ん~、もういいや」
拗ねた、この人の年齢は分からないがそれでも助けてくれた仁に感謝だと思った。
程なくしてビールが運ばれてきた。
「はい、ビール四っつって君まだ未成年だよね!!」
女性店員が俺に気づいてビールを危うくこぼすところだった。
「いいんだよ、細かいことはな。雪ちゃん」
「よくないですよ、ばれたら捕まっちゃうって警察の相川さんが何言ってんのもう」
女性店員が相川さんの肩をばしばし叩いた。
「じゃあ俺が飲むよ」
「あ、相川さんずるい。これは私の」
沙雪さんが奪い取った。
「雪さん、心太にはジュースを」
仁がまた助けてくれた。
ジュースも直ぐに来た。
「それじゃあ、仲間が一人のお祝いでかんぱ~い」
「乾杯!!」
「乾杯!!」
「乾杯」
乾杯はしたとはいえ、この人達とちゃんと仕事できるか不安だった。
それは異国の地でただでさえ不安なのに、何も知らない人達と仕事ができるか。それにこの仕事は普通ではないのでそれで頭がいっぱいだったがその不安は意外な形で的中した。
一時間後。
俺は相川さんが完全に出来上がってビールは凄いペースで飲みお替りするし、沙雪さんもべろべろで酔っ払い同士でダルがらみをしていた。
「ごめんねこんな人達で」
「いえ」
唯一普通なのは仁だけだった。
「どう?」
「何がですか?」
「敬語」
「ああ、何が?」
「初めてSOの皆に会って」
「まあ賑やかな人だなと」
「そうか、まあ気楽にやってよ。これからは」
「分かった」
「相川さんも沙雪さんも心太とコミュニケーションをとるためにって言ってたけどこんなんになっちゃったから今日はお開きにしようか」
「えー、まだ飲む」
「はいはい、今日は僕が付き合いますから」
「やった~」
沙雪さんは酔うとめんどくさいタイプだと思った。
「ほら、心太は帰って」
「じゃあ、お疲れ様です」
そうして俺は家に帰った。




