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家族

フランスへと渡り最初に行った場所は宗一郎さんと理沙さんの家だった。

家に着くととんでなく豪邸だった。

家に庭があって、それを清掃する執事やメイドさんがいて、会う人会う人に挨拶をしているだけで疲れてしまう。

これから家に何人もいる状態で生活しないといけないのかと思うと少し気が滅入る。

「お邪魔します」

「そんな仰々しくしなくていいよ。これからはただいまって言ってほしいな」

「分かりました」

そうして来たばかりと言うことで、部屋に案内された。

「初めまして、私はジャン、クロードと申します」

「どうも」

「お部屋に案内いたします、荷物をお預かりします」

「荷物は大丈夫ですよ」

「いえ、お持ちします」

なんだかこれは預けないと終われない気がしてきたので根負けしてしまった。

それから二階に行き途中で屋根がない廊下があった。

「あの?」

「はい?」

「ここは?」

「こちらは前当主様が特に上機嫌な時に此処に椅子を持ってきて、夜空を見ながらお酒を嗜まれておられた特別な場所なんですよ」

確かにここは夜になると夜空を見るにはぴったりだった。

「なるほど」

「心太様も良ければ夜に訪れて見てください」

「はい」

それから、俺は部屋に荷物を置いた。

家が家なので今までの日本の部屋の倍は広さがあった。

執事さんもいなくなったので一人で荷物を整理して服などをクローゼットにしまい、それ以外は殆ど荷物はなかったので直ぐに整理はついた。

そして机の上には家族写真を置いた。

「父さん母さん覚えてる?俺宗一郎さんと理沙さんに世話になることになったよ」

そんなことを言いながら思い出にふけった。

一年に一度必ず千葉に墓参りで千葉に行くのが恒例だった、それ以外にも沢山連れて行ってくれた。これからもっと沢山の場所に姉小や弟も含めて色んな場所に行って、連れて行ってやりたかった。

涙を一粒流したところでノック音がした。

「心太様、今よろしいでしょうか?」

「はい?」

執事は部屋に入ってきた。

「ご夕食が用意できましたので、リビングにお越しください」

「はい」

此処にきて数回、様って言われたが慣れない。


リビングに向かうと宗一郎さんと理沙さんともう一人スーツ姿のすらっとした男の人がいた。

「初めまして、河上心太です」

「初めまして、河上隼人です」

隼人さんは席から立って挨拶されて本当に育ちが良いのが伝わった。

「心太君のことは父上から聞いているので、なにかあれば頼ってくれ」

「はい」


食事は喉を通らなかったが無理してでも食べないと失礼だし、それに引っ越してきて一日で印象が悪くなることは避けたかった。

「本当は遥かも来いと言ったんだけどね、あいつは今何をやってるのか」

「遥?」

「ああ、私の妹だよ、心太君からしたら姉になるね」

隼人さんが説明してくれた。

「遥さんは何処にいるんですか?」

「分からん」

「え?」

「ごめんね遥は俳優をしているんだけど、撮影で世界を飛び回っていて何処にいるのか家族の誰も知らないんだよ」

「なるほど」

俳優とはまた凄い家族構成だなと素直に思った。

「皆さんはご職業は?」

「私はKawakami Global Stageと言う会社のの代表取締役CEOで理沙は共同創業者でありCOO。隼人はそこで働いていて社長だ」

Kawakami Global Stageと言えば世界中で有名で、音楽フェスやライブを中心に、多国籍の文化イベントなども手がけていて、グローバル展開している大規模なエンタメ系企業だ。

俺は場違いな家に来てしまったのかもしれない。


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