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母の偉大さ

「いきなり来て失礼な人ですね」

俺もリビングでお茶を二人に出して椅子に座った。

「それで、何しに来たんですか?」

「君をスカウトに来た」

「それならお断りします」

俺は直ぐに断った、これには理由があった。

「警察からも連絡があった、君が断るのは何かしらの意志があると見られる、はたしてそれは何なんだ?」

相川さんと言う方が俺の対応をし始める。

「俺は家族を殺されました、それにこの国にはまだ僕のことを必要としている人がいるんです」

「その家族の仇をとれるとしてもか?」

リシャールさんが話した。先ほどの名乗りで日本語が話せることは分かったがこんなに流暢に話せるとは思わなかった。

「それはどう言う?」

「言った通りだ、サマエルやマラクのトップ神鹿狼奈が動きを活発行動している。君のその目で神鹿狼奈を捕まえてほしい」

正直、俺の家族を殺した集団が憎い。

そいつらを殺したいくらいに。

でもそれに近づけることが出来るのなら俺はどこでも行く。ただ今の日本で俺の助けが必要な人がいるのも事実。

「僕は…」

「君はもう少し今の日本の警察を信じて見てほしい」

「え?」

「この国は犯罪率は極めて低い、そしてその勢力は警察だけではないことも知っているのではないのか?」

それは八咫烏のことかもしれない、でもそれを言うわけにはいかなかった。

「それは」

「君を必要としているのはもはや日本だけではない、世界にもいるんだ」

何も言えなかった、俺の目があれば神鹿狼奈を捕まえることができるのかもしれない。

「この決断をしてくれれば、直ぐにフランスに行けるように手配しる」

「フランス?」

「ええ、本拠地がフランスだからな」

「分かりました、少し時間をください」

「分かった、私と相川はこの数日日本にいる決心がついたら連絡してくれ」

「はい」

名刺を渡されてインターポールの人達は帰っていった。


そうして時間は経って、風呂に入り夕食の準備を始めた。

準備と言ってもカップラーメンを作る為にお湯を作るだけなのだが。

その際インターホンが鳴った。

「なんだ、今日は客が多いな」

ドアを開けると見たこともない男の人と女の人が立っていた。

「えっと、どちら様でしょうか?」

「初めましてではないがこうして話すのは初めてだね」

「はい」

「俺は河上 宗一郎だ」

「私は河上 理沙」

「河上心太です、ここではなんですから中へ」

「ありがとう」

そうして、この二人をリビングへと通してお茶を出した。

「ところで、どうしてここに?」

「覚えてないか?」

「え?」

「俺は君の親戚だよ、小さい頃は何度も千葉の本家で会っているんだよ」

「そうなんですか?」

「うん、まあ俺達は日本にいないから会えたのは小さい頃ばかりで顔を出せなかったから無理はないわよ」

「そうだね、これを見てくれないか?」

渡されたのは写真だった。

大勢の人間の中で一人子供がいた、それは幼少期の自分だった。

「これは」

「もう、ずいぶん前になるが親戚が揃った時の写真だよ」

そこには俺の家族も写っていた。それを見るだけでも涙が出そうになる。

「君のお父さんとお母さんとは仲良くさせてもらったよ」

「そうですか」

「それでね、君を引き取りたいんだ」

「え?」

「あいつには何度も助けられた、その恩を少しでも返したい」

引き取る、そう簡単に言うがそれは簡単ではないだろう。

それでも一度失った家族をもう一度…。

「分かりました」

「今俺達はフランスに住んでるんだ、着いて来てくれるか?」

フランス、それなら都合がいいそう思った。

「さっき見てしまったんだが、心太君はよくカップラーメンを食べているの?」

理沙さんに見られていたようだった。

「いえ、ちゃんと作ることもありますが今日はたまたま」

「そうですか、それはお母さんのレシピ本などを見て作っているの?」

「よく分かりましたね、多分俺がもっと大人になった時に渡してくれるはずだったんですけど」

「そう、心太君のお母さんが生前言っていたの」

「何をですか?」

「独り立ちした時に安心できるようにって自分のレシピ本を渡したいって」

「そうですか」

居なくなって気づいた、母の偉大さを。


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