未解決事件専門捜査室
それから、俺は学校に復帰した。
俺が誘拐された辺りが、丁度冬休みだったこともありそれから学校には詳細は言えないが事件に巻き込まれたと言い諸々片付いた時には年も明け、冬休みも終わっていた。
「行ってきます」
そう言って家を出る。
もう返事はないがそれも慣れた。
前ならお母さんの「いってらっしゃい」と言う返事が返ってきたのにそれが今はない。
もう料理もあのレシピ本でマスターして母の味を再現できるまでは時間がかかるかもしれないし、いなくなってから母の偉大さを知る。
洗濯物、ご飯も家事全般を母はやっていた。それをいきなり全部やらなくてはいけなくなったのだ、でも家族はもういない。分かってるけどこの「行ってきます」と言う声掛けはやめる気にはなれなかった。
それからもう一つ変わったことがある。それは眼鏡をかけていると言うことだ。
これは自分を守る為のものでもあり、これから仕事で使うこともあり慣れる為にテレビを見ながら目を使って見るがテレビともなると、写ってる人が多いこともあり流石に長時間の使用はできないのが欠点ではあるがこればかりは慣れるしかない。
そうして学校に着いた。
まずは、職員室に行って事態の説明を担任の先生にしなくてはいけない。
京野さんがそれらしい理由をつけて、緘口令を強いたと言うことで詳しくは話せないと言うことにしているが、実際俺の家族を殺したのはマラクではなくサマエルと言う見立てでそれもかなりの組織の中でも上の人間が行ったらしいが今の俺にはそんな噂話程度の話ししか分からないのでなんとなく話しを流していばいいだろうと思い、職員室を訪れて担任の先生の名前を言うと担任の先生がすっ飛んで来た。
「河上君、大丈夫?」
「大丈夫ですけど」
「事件に巻き込まれたって聞いて直ぐに、親御さんに連絡したけど電話も繋がらないし警察には詳しいことは話せないって言われるしどうなったの?」
「簡単に言うと交通事故に巻き込まれまして」
「ご家族様態は?」
「亡くなりました」
「そうか」
これは素直に言った方がいい、そう京野さんにも言われた。
隠していた方が何かとまずいらしい。
「それでなんで、警察は事件の概要を話してくれないんだ?」
「まあ簡単に言うと、犯人がお偉いさんの息子らしくて」
「それで話せないと言うのか?」
「まあ、そんな所です」
これ以上はサマエルが絡んでいるので、正直に全て話してしまったら先生に危険が及ぶためこう言った言い訳をしたわけだが何も悪くない警察には少し悪者になってもらった。
「今から警察に行こう」
「はい?」
「そんな馬鹿げた理由で警察は隠しているなんてありえない」
そう言って準備をすると言って荷物を纏めて、学校を出ようとする先生を止めたがそれを聞く耳を持たずに正式な説明をしてもらわないと困る言っていて先生の頭が沸騰していたが、それを聞いていたほかの先生が止めてくれたが正直それがなかったら、警察まで付き合わされていたかもしれない。
朝からそんな騒動に巻き込まれて、大変だったが教室に行くと響が一番声をかけてきた。
「おはよう!!」
「おはよう、響は朝から元気だな」
「当り前よ、朝からランニングもやって体温まって最高だ」
「その元気を分けて欲しいくらいだ」
そう言って自分の席に座ると、いつもの景色が見えた。
今までの俺なら、窓を見て何も思わずに朝が来たくらいと思うくらいだったが今はとにかく目が暴走しないように注意を払わないといけないくらい繊細な作業をしている、正直それだけで疲れてしまう。
響が前の席に座って俺に話しかけにくる。
「それで、何かあった?」
「何が?」
「何がって冬休み中連絡つかなかったから」
「まあ色々とな」
「そっか」
そう言って響はまた違う友達の所へと行く。
こちらから話さないと深く聞かない所があいつの優しさだ。
それから授業を受けて、その中で目は暴走することはなく授業が終わり時間は十五時を過ぎた辺りで学校を出て、千代田区に向かう。
そして、警視庁に入ってパスを見せて以前の地下の部屋に向かうと、扉の前には「未解決専門捜査室」と書かれていた。
これを見る人は殆どいないだろうから、正直に書いてあった方が人が訪問してきた時に迷わず此処に来れると思い看板を立てた。
中には書類で埋まっていて、薄暗い場所で正直空気は悪い。
俺の仕事はこの膨大な未解決事件専門の資料に目を通して解決できるかもしれない事件に印をつけて捜査をすることなのだが、正直地味ではある。
因みに書類になって埋め尽くしているのは過去にデータになってない事件で時効ぎりぎりの事件なのでデータになっているものは、パソコンで見る必要がある。
「失礼します!!」
そんなことを思いながらパソコンを見ていると、でかい声で挨拶された。
声の方を見ると、若い男の人がスーツ姿で段ボールを持っていた。
身なりはきちっとしていて、爽やかな成人男性だった。
「なんでしょう?」
「河上さんでよろしかったでしょうか?」
「そうですけど」
「今日から未解決事件専門捜査室に配属された朝倉 蒼真です。よろしくお願いします!!」
「どうも。適当に座って、荷物片付けて」
「はい!!」
「君のことはなんて呼べばいい?」
「なんでも大丈夫です」
「じゃあ蒼真君で」
「じゃあ僕は河上さんのことは班長でいいですか?」
班長と言われるとは思わなかったので、なだこの場所に慣れてないこともあったのでどうするか迷った。
「普通に河上でいいよ」
「いえ、階級はないとはいえ、この場所では上司になるので」
「じゃあまあ好きに呼んで」
「はい」
「所で蒼真君は免許を持ってる?」
「持ってますけど」
「来てもらって早々で悪いけど車出して」
「何処に行くんですか?」
「未解決事件の捜査」




