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終わらない悲劇

私達は満足してライブ会場を出るために、準備待ちをしていた。

「楽しかったね」

「ね、演出も良かったし皆可愛かったし、もう満足だ」

「そう言えば今年は降らなかったね、雨」

「確かに恒例だったのに」

神宮で行われる乃木坂のライブは毎年雨が降るのが恒例だった、でも今年は降らなかった。

でも、初めてだったし濡れるのはいやだったのでまあ良かった。

「やっぱり、雨降らないと夜でも暑いや」

「そうだね、念のために持ってきたレインコートも要らなかったね」

「そうだね、それにしても列混んでいるね」

「いつまで並ぶんだろう?」

「もうすぐ出られますよ」

小声で霞ちゃんが言ってきたので小声でお礼を言う

「ありがとう」

霞ちゃんはライブ中は楽しそうに、ステージに夢中だった。後で感想を聞いてみよう、そう思った。霞ちゃんも楽しかったらいいな。

「そう言えばさ、河上君は来てないの?」

舞の予想外質問にびっくりしてしまった。

「え?なんで?」

「この前、偶然乃木坂のライブ映像を休み時間に見ていたし大神彩ちゃんと親戚なんでしょ?」

「えっと見に来るとは言っていたけど」

流石に仕事とは言えないよな。

「どこで?」

「さあ?それは知らないけど」

「親戚だから、関係者席でも見ているのかな?」

「さあ、そんな感じじゃない?」

「いいなー、関係者席って特別な感じしない?」

「そうだね」

流石に護衛って言っていたしもっと近くにいる事はもっと話せないだろう。

「そう言えばさ、河上君の事ちょっと分かったよ」

「何が分かったの?」

「それが海外に行く前の河上君と颯太が仲が良かったらいしんだよ」

「颯太君と?」

「うん、同じサッカー部だったらしくてさ」

「そうなの?」

「うん、いつも一緒に帰ったり、よく話したりご飯行ったりする仲だったらしくてさ、実際、颯太も一年生の半年間は仲が良かったらしいんだよね」

「半年間だけ?」

「うん、その後何も言わずに河上君が海外に行っちゃったらしくて、それなりに仲が良かったのに、自分には何も言ってくれなかったのが原因でそれっきり、話してないみたいだったんだけどまた話してみたいとはこの前言ってたけどね」

「何も言わなかったのは河上君が悪いね、でもまた仲良くしたいってこと?」

「そうみたい」

「じゃあ今度の文化祭で一緒に回ったりする?」

「ちょっと先だけどいいアイデアかも」

「じゃあ、そうしようか」


一方、河上は。

「なあ、後どれくらいで帰れるんだ?」

「帰ろうとすればいつもで帰れますよ」

「そうじゃなくて、藤沢さくらはいつ帰るんだ?」

「さあ?それは知りませんけど」

「スタッフに聞いてきてくれ」

「まさかストーカーですか?」

「違うわぼけ、重要なことなんだよ」

分かりましたと言いスタッフの方に駆け寄って言った。

まだ事件は終わってない、いつ誰が狙われるかは分かっているだからそれを阻止しなくてはいけない、今日はまだ長い。


「本当に此処に来るんですか?」

「来る」

此処は地下駐車場、その柱の陰に隠れている。

「そろそろ来るぞ」

乃木坂のメンバーが何人か来た。

「おい、全員じゃないのか?」

「住んでいる家の場所によって、揃って帰るメンバーが違うんですよ」

「じゃああの後、急いで此処に来た意味ないじゃん」

「藤沢さくらちゃんはいますよ」

「いるならそう言えよ」

「だから急いだんだじゃないですか」

此処まできて言い合いが止まらない、まあいるならそれでいいのだが。

藤沢さくらが車を待っていた瞬間、一台の黒い車が止まった。


「おい!!」

「なんだお前ら」

どうやら一人ではなく複数の仮面を被った人間が五人出てきた。

「ちょい待ち」

俺と高坂は丁度、それぞれの中間の立ち位置に立った。

「高坂は対象に付いて」

「分かりました」

後ろで高坂が藤沢さくらと同じ車にのる、メンバーを守りながら車に乗るように指示した。

「誰だお前は」

「お前らの天敵だよ」

「なんなんだ」

そう言い警棒を出して五人が一斉に動き出した。


「あの?」

高坂は今野さんに話しかけられていた。

「なんですか?」

「助けに行かなくていいんですか?」

「大丈夫ですよ、私がいるより一人で戦った方がいいんです。逆に人がいるほうが彼にとっては邪魔になるんですよ。それにほら、もう終わりますよ」

「え?」

河上は四人をもう制圧していた。

「おい、お前何者だ?」

「インターポールだ」

「だからか、他の連中では相手にならんな」

「その言い方だと他の四人はマラクか」

「そうだ」

「お前はサマエルって訳か」

「どうだろうな」

恐らくサマエルだろう一人は仮面を付けたまま、警棒を投げ捨てて走ってきた。

殴る手を避けながら、殴り合うが相手も強くこっちの攻撃も避けられる。

「流石に強いな、だが」

段々と仮面を付けた男の拳が河上の頬に当たった。

河上は一歩後ろに下がる。

「これは少し本気出さないとな」

「それは今までは手を抜いていたと言う認識でいいかな?」

「そうだな、一日の稼働時間は過ぎているし疲れているから、あんまり使いたくなかったんだけどな」

河上の目が蒼く輝く。

「それが蒼眼か!!」

「知っているのか?」

「当然、現在のボスに話は聞いている」

今のサマエルのボス?それは誰なのか、予想はしていたが神鹿狼並がいない今、サマエルが纏まって動けていると言う事はそれなりの人物なのだろう。だがそれはこいつを捕まえれば分かることだ。

「決着をつけるには早いほうがいいからな」

「そうだな」

二人は一斉に動き出した。

先ほどのように押される河上はもういない、蒼眼を使い何処に力が入っていて次にどこが動こうのかは分かっているので、それを避けて力が入ってない部分を殴れば済む話だ。

そうして二人の攻防は直ぐに終わった。

勝ったのは河上だった。

攻防は殴り合いになったが、段々と仮面を付けた男の拳は河上には当たらなく河上の独壇場になった、そして倒れた所で京野さん達、警察が到着した。

「おい!!河上!!どういう事だ?」

「どうもこうもないですよ、こいつらが主犯格です」

「いつも報告しろって言っているだろ!!」

「僕はいつも事後報告だって言っていますよね」

「またそれか」

京野さんは呆れた様子で部下に倒れているマラク達をパトカーに乗らせる。

サマエルの男も意識を戻し手錠をかけられて、パトカーに乗せられる所で声をかけた。

「おい」

「なんだ?」

「お前達サマエルを率いているボスとは誰だ?」

「その前に一つ質問させろ」

「なんだ?」

「何故、俺達が此処で襲撃する事が分かった」

「簡単だ、ライブ前に緊張感を持たせて、ライブ中に狙撃をし、そしてそれが終われば集中が切れライブが終われば全て終わったと思わせて最後に襲う。それがお前らのやり口だろう」

「流石、神鹿狼奈様に選ばれ、お気に入りの人間だな。こちらの手口まで分かっているとは」

「お前らとは期間は短えど随分長く戦った仲だかならな」

「そうか、じゃあ約束通りこちらも情報を提供しよう。今のボスはお前の顔見知りだ」

「顔見知り?」

「もういいだろう、後は俺達の仕事だ」

京野さんがパトカーに乗り出て行った。

「高坂!!」

「はい?」

「藤沢さくらはどうした?」

「先ほど安全に他のメンバーとスタッフと共に車で、行きました」

「そうか」

「あの?」

話しかけてきたのは、今野さんだった。

「なんですか?」

「この度はありがとうございました」

「まあ、仕事だからなんてことないですよ」

「そうですね、こちらも何事もなくライブを終えられて安心しました」

「では、もう何も起きないんですね?」

「ああ、だから報酬の方もよろしく頼みますよ」

俺は指を金のポーズにして、要求した。

「心太様!!良くないですよ」

「いえいえ、今回のこちらの無茶な要求を出しながらも、怪我人も出さずに終わらせてもらったのできちんと報酬はお支払いします」

「じゃあ帰るか」

「はい」


京野さん達はパトカーに乗って警視庁まで、道路を進んでいた。

「お前らには聞きたいことが沢山あるんだ、夜寝られると思うなよ」

「眠るか、俺には必要ないな」

「何を言っている?」

事態が最悪に傾いたにはその一瞬だった。


「高坂、今日の夜ご飯何?」

「そうですね、何にしましょうか?」

「今日は初めて、彩のライブ見られたし。仕事も怪我人も出なかったし良いことばかりだったからな。ステーキとかどうだ?」

「そうですね、この先電車も混みますし安藤様もお疲れになられるでしょうからステーキでお腹一杯になってもらいましょうか」

「やった!!」

いつもステーキというと肉は勿論、良いのもだが高坂は焼き加減も最高だから店で食べているのと変わらず美味しいのだ。

「もう直ぐ家ですけどいつもの、お店で買い物をするので寄って帰りましょうか」

「おう!!」

「ご機嫌ですね」

「それはそうだろう、今日は仕事………」

「どうかされました?」

「俺、休暇中だよな?」

「そうですね」

「なんで仕事してんだー!!」

そう言った瞬間高坂の携帯が鳴った。車と接続しているので車に着信音が響いていた。

「佐々木さんですね」

「出ていいぞ」

「失礼します」

電話に出る、佐々木さんの鳴き声が車に響いていた。

「どうしました?」

「先ほどサマエルの犯人を護送中にパトカーが爆発しました」

「え?」


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