ライブ後
俺は暫く気絶していたようだ。目が覚めたら簡易的なベットで寝ていた。
「俺は、あのまま寝ていたのか?」
「あ、起きました?」
高坂がカーテンを開けて覗いてきた。
「で、あの後どうなった?」
「はい、ライフルを持った犯人はそのまま逮捕されました。それからサマエルだと判明しました」
「やっぱりか」
「それも幹部でした」
やはり睨んだ通りだった。
「ライブはどうなった?」
「今、アンコールも始まり、もうそろそろ終わると思います」
「折角ライブに来たのに見に行かないでいいのか?」
「心太様が倒れたのでほっとけません」
「そうか」
「はい」
「それから、最初に目を付けた犯人はどうなった?」
「それがマラクでもなければサマエルでもありませんでした」
「じゃあ、逆恨みとかそんなのか?」
「そうですね、自分が藤沢さくらと同じオーデションを受けていてそのオーデションに落ちた腹いせで、今回の犯行に至ったのが経緯です」
オーデションに落ちただけでなんで、藤沢さくらを狙うのか理解に苦しむ。
「それでなんで、藤沢さくらを狙ったんだ?」
「それがオーデションの時、隣にいておどおどしていて自分の方がはきはき話せて、アピール出来ていたのに選ばれなかったのが原因らしいです」
本当に理解に苦しむな、それで人一人殺そうと思うなんてどうかしている。
でも、過去にもっと下らない理由で人を殺した奴らも見てきたので呆れるのも疲れる。
「そう言う人間もいるって割り切っていたつもりなんだけどな、なんか嫉妬もタガが外れたらそこまでいくんだな」
「そうですね」
少し寝たし、体も目も休んだし高坂の為にもライブが見られるモニターがある控室まで移動した。
高坂は目が輝いていて子供に見えた。
暫くして、ライブも終わり。メンバーが帰ってきた。
適当に挨拶をしてそれぞれが散って行く。
暫くして遠くで騒いでいると思ったら、カメラにメンバーを撮っていて中には男の人二人が映っていた。
「あれ、有名な人?」
「乃木坂の冠番組のMCをやっている、有名な芸人さんです」
「そうなのか」
暫く芸人さんが話して撮影も終わりメンバーは控室に戻って行った。
「河上さん」
そう声をかけてきたのは今野さんだった。
「大神に挨拶しますか?」
「そうですね、彩が元気なら」
なんとも気が利く人だと思って関心していたら、控室から彩が出てきた。
「心兄!!来てくれたんだ」
「おう、ライブ全部は見られなかったが輝いていたぞ」
「えへへ」
「そうだ、これ」
手渡したのは高級なお菓子だった。
「皆で食べてくれ」
「ありがとう」
「それで次はいつやるんだ?」
「心太様、意外と楽しみになっています?」
高坂はにやにやしながら話しかけてきた。
「まあ、意外と楽しい所だったな」
「そうですか」
「次はもっと楽しんでもらえるように頑張る」
「うん」
そう言って、彩は他のアイドルに呼ばれてそちらに行こうとした時に振り返って一言言った。
「今度は仕事じゃなくて遊びに来てね」
「おう」
今度こそ行ってしまった。最後に気遣いで笑顔で言葉を追加した所はまさにアイドルだと思った。




